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理解させてみた。

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「遥香、あの受け答えはない」
「せっかく若木君が頑張ったのに」
「何のこと?」

 打ち上げが終わり、千絵が運転する車で遥香の家まで向かう3人。帰宅時間が遅くなるのが分かっていた為、遥香の家でパジャマパーティーを約束していた。車の中での会話は遥香の察しの悪さの説教から始まっていた。ここまで言われても気づかない遥香に対し、久美と千絵は大きなため息を付く事しか出来なかった。

「若木君は遥香に欲情があるから学園祭を一緒に回ろうって誘ったんだよ」
「久美、男心をストレートに表現するのはやめようよ。ある意味正解だとは思うけどさ」
「いやいやいや、まさかまさか。監督の立場だから、誘っただけでしょ。久美、深読みし過ぎだよ」
「じゃあ、遥香は若木君の事をどう思っているの?」
「同級生で今回の作品の監督」
「即答ですか、そうですか。ある意味、遥香らしい答えだね」

 若木君を今まで異性として意識はした事ないな。まあ、若木君だけじゃなく他の男の人もだけど。と言うか、異性か……。ん? なんでここで鳳斗さんの顔が浮かぶのだろう? ってそう言えば鳳斗さん、小説がもうすぐ完成するって言っていたな。

「あっ、鳳斗さんに連絡しないと」
「おっと、遥香。突然どうしたの? 鳳斗さんの事を意識でもしたの?」
「ううん、もうすぐ小説が完成するって言っていたから。気になっちゃって」
「先生~、ここに全く男心を理解しない人がいます~」

 遥香の住むアパートに到着し、交代でシャワーを浴びた遥香たちはパジャマに着替え、あとは寝るだけの体勢になる。しかし、部屋の電気は一向に消さず、おしゃべりに夢中になる遥香たち3人。そんな中、久美が思っていたことを口にした。

「ねえ、遥香。若木君と学園祭を見て回るんだよね」
「うん。まあ断る理由もないし、色んな他の人の作品を見て、すぐ意見交換を出来るのも良いと思うしね」
「じゃあさ、その学園祭に鳳斗さんと知らない女の人が一緒に来たら、遥香はどう思う?」
「どう思うって……別にどうも思わないし、気になら……」

 ん? あれ? なんか胸がモヤモヤするな。鳳斗さんは社会人でちゃんと会社で働いているんだから、その会社に女性がいてもおかしくない。と言うか、女性の先輩も同僚も後輩もいるって言っていたな。全然気にしていなかったのに、ちゃんと考えると胸の奥がモヤモヤする。
 鳳斗さんと私の知らない女性ひとが学校に来ていて、腕なんか組んだりして、そして笑顔で私に挨拶して来たら……

「少しは自分の気持ちに気が付いた?」
「やっぱり遥香は鳳斗さんの事を気になってはいるみたいだね」
「そんなんじゃないってば」
「じゃあ、どんなのよ?」
「そりゃあ……」

 遥香は2人にどう答えれば良いのか分からず、言葉が詰まる。

「もう1回聞くけど、若木君の事はどう思っているの?」
「若木君には申し訳ないけど、やっぱり恋愛感情はないかな。ただの同級生かな」
「じゃあ、絶対に曖昧な態度は取らない事。曖昧な態度はトラブルの元だからね」
「うん、そうする」
「で、鳳斗さんのことは?」
「……」

 確かに鳳斗さんとは会話していても緊張もしない。アニメやマンガが好きなおかげなのか、映像への造詣も普通の人より深い。絶対に小説家としての才能もあると断言できる。私の映画好きにも理解あるしね。幸さんやヨッシーさんに対して無骨にツッコんでいるように見えているが、実はめちゃめちゃ気を使って大切にしているのが分かるし。
 それに2人にだけではなく、エキストラで撮影に参加してもらった時の周囲への気配りが目に付いたんだよね。
 率先して声を出してくれたり、他のエキストラにお水を配ってくれたりしてるし。優しいってよりお人好しって感じなんだよね。
 確かに個人的にはポイント高い。……あれ? なんか顔が熱くなってきた。 
 
「おおっ! これは!」
「まさかのまさか!?」
「ち、違うからね!」

 2人は遥香の反応を見て、ニヤニヤしながら楽しそうにしている。

「ち、千絵は最近どうなの? って聞くまでもなくイチャイチャしてたね。久美は幸さんとどうなの?」
「そう、わたしと良樹さんも気になっていたの。どうなの、久美?」

 遥香が話題を久美に振ると千絵がそれに乗ってくる。3人の話は夜更けまで尽きなかった。


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