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カミングアウトしてみた。されてみた。
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「で、話って何ですか? 幸さん」
6人の中で最初に口を開いたのは、久美だった。告白されるだろうと思っていた久美は、少し幸隆に警戒しつつ幸隆が口を開くのを待つ。
「ん~、話なんて特にないんだけどね。とりあえず、ヨッシーと千絵ちゃんを2人きりに出来れば良かったから」
「えっ、そうなんですか? てっきり告白されるんだと思っていました」
「告白しても付き合ってくれないでしょ。なんとなく駄目な雰囲気が分かるからしない」
この幸隆の台詞に驚く久美。久美から見ても幸隆はイケメンの部類に入る。身長もそこそこ高いし、会話のキャッチボールも上手い方だと思っていた。残念な下ネタは置いておいても、幸隆から告白すればOKする女性は多いと久美は思っていた。
ポジティブ思考な事も会話の節々から見て取れる。だからこそこの日に告白され、そしてその告白を久美は断るつもりでいた。
「そういう雰囲気って分かるものなんですね」
「ん~、そういう空気を感じ取るのは、結構得意なんだよね。で、俺が告白してフラれて、このキャンプの空気を壊すのも嫌だしね」
「真面目な話をする時には下ネタを入れないんですね」
「ツッコミの相方がいないからね」
俺だっていつもいつも下ネタばかり言ってるわけじゃないよ。まあ、そういうキャラで通っている事は間違いないけど。まあ、本当の俺の姿を知っているのは鳳斗とヨッシーだけだしね。だからこそ、あいつらは俺のボケにツッコミを入れ、自分でもウザいと思うこの性格でも受け入れてくれる。これからも奴らとはいい仲間でいたいって心から思ってるよ。本人たちの前じゃ、絶対言わないけどな。
「そういう感じの幸さんなら彼女と長く付き合っていけると思いますよ」
「無茶を言う。こういう面もあるよってだけで、ボケて鳳斗達に言ってツッコんでもらうのも俺」
「さっきそれはギャップにならないって言っていた鳳斗さんの言葉の本当の意味が分かりました」
「じゃあ、本当の俺をちょっと知ったって事で付き合ってくれるの?」
「ごめんんさい。生理的にないです」
「謝りながら傷つけてるよ~」
「幸さんってツッコミもするんですね」
いや、そんな事で感心されてもね。ヨッシーはたまにボケるから、鳳斗がいない時には俺がツッコまないとヨッシーが可哀想でしょ。で、本当の理由が知りたかったかな。本当に生理的に無理ならキャンプにも来ないし、長電話ししてくれたりしないでしょ。
まだ信用されてないのか。まあ仕方ないかな。
「私が幸さんと付き合えない理由は、私が同性愛者ですので。私には彼女がいるんです」
「へ?」
「古い言い方だとレズ、今の言い方だと百合ですかね」
「いやいや、言い方に疑問点があった訳じゃないよ」
「じゃあ、どっちが受けか攻めかですか? それは状況とか雰囲気によってですかね」
「普段ツッコミポジションじゃない俺にはこのツッコミは無理ゲーです」
「そうですね。鳳斗さんほどのキレはないですね」
「俺が言う事じゃないけど、そこで親友を褒められても嬉しくないっす」
とんでもねぇカミングアウト。あんまり驚く事のない俺でも流石にこれは驚いたぞっと。でも、まあちょっと納得がいった気がする。千絵ちゃんはともかく、久美ちゃんの遥香ちゃんへのお節介、と言うより友情を超えた親愛はここから来るものだったんだ。
……よし、ここまで踏み込んだなら聞いてしまえ。カミングアウトしてくれるぐらいの信用はされてるって事だ。
「もしかして、久美ちゃんって遥香ちゃんの事が好きなの?」
「大好きですよ。もちろん性的な意味も含めて」
「おっと、分かっていてもパンチが重たい」
「私が同性愛者なのを遥香も千絵も知らないですし、これからも言うつもりはないです。だからここだけの秘密ですよ」
「50位以内に入る言ってみたいセリフ(墓場まで持っていくよ)がここで言えるとは思わなかった。もちろん誰にも言わない。鳳斗にもヨッシーにもね」
安心させるような幸隆の笑顔に久美がホッと撫で下ろす。同性愛者を嫌がる傾向にあるこの世の中。久美は自分の嗜好がおかしいとは思ってもいない。だが、受け入れられないのが現実であり実体だった。
しかし少数派とはいえ、久美と同じような人間がいる。社会に向かって訴える人もいる。昔に比べて過ごしやすい世の中に間違いなかった。
だからこそ久美は幸隆にカミングアウトし、その上で協力体制を作りたいと思っていた。
「でも、それでなんで遥香ちゃんに彼氏を作ろうとするの? 自分が付き合いたいとかないの?」
「もちろん遥香が彼女になってくれるなら、嬉しいですよ。でも、付き合ってくれる以上に遥香には映画監督っていう夢を叶えて欲しいんです」
「別に久美ちゃんと付き合っても監督は目指せると思うんだけど」
「私は高校生の時には自分が同性愛者って分かっていました。で、自分は異端だって思っていたんですよね」
「まあ、確かに社会人でもカミングアウトする人は少ないのに、高校生では無理だよね」
「でも、そんな時に遥香と出会って、人とは違う映画監督って言う特殊な職業を目指して、同級生からヲタクって後ろ指を差されても自分の進みたい道を自信を持って歩く姿を見ちゃったら、惚れるしかないでしょ!」
「ま、まあそうかもね。とりあえず落ち着こうか」
少しずつ興奮する久美に対して若干引き気味になる幸隆。類は友を呼ぶと昔の人は上手い事を言ったもんだと幸隆は思った。好きな物に対しての情熱が止まらないのは遥香も久美も同じだった。
「でも、付き合えなくても良いんです。遥香が鳳斗さんを好きになるならそれで良いです。あの子がすることは全て正しいんです」
「もう、親愛を通り越して信者レベル、遥香ちゃんが神じゃん」
「ごめんなさい。興奮してしまいました」
「うん、久美ちゃんの違った一面が見えてとても有意義だったよ」
「では、千絵とヨッシーさんがどうなったかを覗きに行きましょうか」
「なんかギャップって言う範囲に収まらないぐらい性格が変わってない? 野次馬根性まる出し」
「そこはチラ見せ程度で止めますよ。チラ見せの方がポイントが高いんですよね? 色んな意味で」
「確かにそれは否定が出来ない。でも久美ちゃん、性格が変わりすぎじゃない?」
「もうそろそろ隠す必要はないかなって思いまして。千絵がヨッシーさんと上手くいけば、これから長い付き合いになると思いますしね」
「お、おう。まあ、これからもよろしく」
「はい。では野次馬根性チラ見せで覗きに行きましょうか」
久美に促され、幸隆は良樹と千絵の声のする方に歩き出した。
6人の中で最初に口を開いたのは、久美だった。告白されるだろうと思っていた久美は、少し幸隆に警戒しつつ幸隆が口を開くのを待つ。
「ん~、話なんて特にないんだけどね。とりあえず、ヨッシーと千絵ちゃんを2人きりに出来れば良かったから」
「えっ、そうなんですか? てっきり告白されるんだと思っていました」
「告白しても付き合ってくれないでしょ。なんとなく駄目な雰囲気が分かるからしない」
この幸隆の台詞に驚く久美。久美から見ても幸隆はイケメンの部類に入る。身長もそこそこ高いし、会話のキャッチボールも上手い方だと思っていた。残念な下ネタは置いておいても、幸隆から告白すればOKする女性は多いと久美は思っていた。
ポジティブ思考な事も会話の節々から見て取れる。だからこそこの日に告白され、そしてその告白を久美は断るつもりでいた。
「そういう雰囲気って分かるものなんですね」
「ん~、そういう空気を感じ取るのは、結構得意なんだよね。で、俺が告白してフラれて、このキャンプの空気を壊すのも嫌だしね」
「真面目な話をする時には下ネタを入れないんですね」
「ツッコミの相方がいないからね」
俺だっていつもいつも下ネタばかり言ってるわけじゃないよ。まあ、そういうキャラで通っている事は間違いないけど。まあ、本当の俺の姿を知っているのは鳳斗とヨッシーだけだしね。だからこそ、あいつらは俺のボケにツッコミを入れ、自分でもウザいと思うこの性格でも受け入れてくれる。これからも奴らとはいい仲間でいたいって心から思ってるよ。本人たちの前じゃ、絶対言わないけどな。
「そういう感じの幸さんなら彼女と長く付き合っていけると思いますよ」
「無茶を言う。こういう面もあるよってだけで、ボケて鳳斗達に言ってツッコんでもらうのも俺」
「さっきそれはギャップにならないって言っていた鳳斗さんの言葉の本当の意味が分かりました」
「じゃあ、本当の俺をちょっと知ったって事で付き合ってくれるの?」
「ごめんんさい。生理的にないです」
「謝りながら傷つけてるよ~」
「幸さんってツッコミもするんですね」
いや、そんな事で感心されてもね。ヨッシーはたまにボケるから、鳳斗がいない時には俺がツッコまないとヨッシーが可哀想でしょ。で、本当の理由が知りたかったかな。本当に生理的に無理ならキャンプにも来ないし、長電話ししてくれたりしないでしょ。
まだ信用されてないのか。まあ仕方ないかな。
「私が幸さんと付き合えない理由は、私が同性愛者ですので。私には彼女がいるんです」
「へ?」
「古い言い方だとレズ、今の言い方だと百合ですかね」
「いやいや、言い方に疑問点があった訳じゃないよ」
「じゃあ、どっちが受けか攻めかですか? それは状況とか雰囲気によってですかね」
「普段ツッコミポジションじゃない俺にはこのツッコミは無理ゲーです」
「そうですね。鳳斗さんほどのキレはないですね」
「俺が言う事じゃないけど、そこで親友を褒められても嬉しくないっす」
とんでもねぇカミングアウト。あんまり驚く事のない俺でも流石にこれは驚いたぞっと。でも、まあちょっと納得がいった気がする。千絵ちゃんはともかく、久美ちゃんの遥香ちゃんへのお節介、と言うより友情を超えた親愛はここから来るものだったんだ。
……よし、ここまで踏み込んだなら聞いてしまえ。カミングアウトしてくれるぐらいの信用はされてるって事だ。
「もしかして、久美ちゃんって遥香ちゃんの事が好きなの?」
「大好きですよ。もちろん性的な意味も含めて」
「おっと、分かっていてもパンチが重たい」
「私が同性愛者なのを遥香も千絵も知らないですし、これからも言うつもりはないです。だからここだけの秘密ですよ」
「50位以内に入る言ってみたいセリフ(墓場まで持っていくよ)がここで言えるとは思わなかった。もちろん誰にも言わない。鳳斗にもヨッシーにもね」
安心させるような幸隆の笑顔に久美がホッと撫で下ろす。同性愛者を嫌がる傾向にあるこの世の中。久美は自分の嗜好がおかしいとは思ってもいない。だが、受け入れられないのが現実であり実体だった。
しかし少数派とはいえ、久美と同じような人間がいる。社会に向かって訴える人もいる。昔に比べて過ごしやすい世の中に間違いなかった。
だからこそ久美は幸隆にカミングアウトし、その上で協力体制を作りたいと思っていた。
「でも、それでなんで遥香ちゃんに彼氏を作ろうとするの? 自分が付き合いたいとかないの?」
「もちろん遥香が彼女になってくれるなら、嬉しいですよ。でも、付き合ってくれる以上に遥香には映画監督っていう夢を叶えて欲しいんです」
「別に久美ちゃんと付き合っても監督は目指せると思うんだけど」
「私は高校生の時には自分が同性愛者って分かっていました。で、自分は異端だって思っていたんですよね」
「まあ、確かに社会人でもカミングアウトする人は少ないのに、高校生では無理だよね」
「でも、そんな時に遥香と出会って、人とは違う映画監督って言う特殊な職業を目指して、同級生からヲタクって後ろ指を差されても自分の進みたい道を自信を持って歩く姿を見ちゃったら、惚れるしかないでしょ!」
「ま、まあそうかもね。とりあえず落ち着こうか」
少しずつ興奮する久美に対して若干引き気味になる幸隆。類は友を呼ぶと昔の人は上手い事を言ったもんだと幸隆は思った。好きな物に対しての情熱が止まらないのは遥香も久美も同じだった。
「でも、付き合えなくても良いんです。遥香が鳳斗さんを好きになるならそれで良いです。あの子がすることは全て正しいんです」
「もう、親愛を通り越して信者レベル、遥香ちゃんが神じゃん」
「ごめんなさい。興奮してしまいました」
「うん、久美ちゃんの違った一面が見えてとても有意義だったよ」
「では、千絵とヨッシーさんがどうなったかを覗きに行きましょうか」
「なんかギャップって言う範囲に収まらないぐらい性格が変わってない? 野次馬根性まる出し」
「そこはチラ見せ程度で止めますよ。チラ見せの方がポイントが高いんですよね? 色んな意味で」
「確かにそれは否定が出来ない。でも久美ちゃん、性格が変わりすぎじゃない?」
「もうそろそろ隠す必要はないかなって思いまして。千絵がヨッシーさんと上手くいけば、これから長い付き合いになると思いますしね」
「お、おう。まあ、これからもよろしく」
「はい。では野次馬根性チラ見せで覗きに行きましょうか」
久美に促され、幸隆は良樹と千絵の声のする方に歩き出した。
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