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宣言してみた

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 あれ? この子って確かお酒は飲んでいないよね? ソフトドリンクなのに、なんで俺、絡まれているの? 俺に興味があるの? って自意識過剰だな。

「でも、どうせ誰も期待してないし、誰も読んでくれないって」

 遥香にここまで言われても鳳斗は書く気持ちを出さなかった。そんな2人の会話を眺めていた幸隆が茶々を入れ始める。

「駄目だって。こいつにやる気を出させるのは無理だって」
「だよな。鳳斗にやる気を出させるなんて無謀に近い。出すのは白いせ……」
「おっと、それ以上言うんじゃねぇ。誰もがお前の下ネタに免疫があると思うなよ」

 笑いながら良樹が遥香に伝えると、幸隆まで鳳斗と遥香の会話に横槍を入れてきた。

「じゃあ、どうやったら鳳斗さんはやる気を出すんですか?」
「無理だって。俺とこいつは中学からの付き合いだけど、自分の興味がある事以外にはやる気は出さない。興味があってもやる気はちょっとしか出さないし。ましてや小説なんて飽き性のこいつには絶対無理」

 遥香の質問に鳳斗ではなく幸隆が答える。

「そうやって言われると鳳斗が何かにハマるって俺も見たことないな。ハマりかけて飽きるパターンだよな」
「さすがに俺の事をよく分かっていると言いたいが、さりげなくディスるんじゃねぇ」

 鳳斗が幸隆と良樹の言葉に笑いながら答えると、男性陣3人が一斉に笑い出す。

「笑い事じゃないですよ」

 遥香が大声を出してその場の空気を緊張させた。

「もしかしたら……大げさかも知れないですけど、鳳斗さんの人生を変えるかもしれないんですよ。せっかく才能があるのに生かさないなんてありえないし。その才能が欲しくても手に入れられない人もいるんですよ」

 あまりの遥香の興奮ぶりに男性陣が萎縮する。そんな様子を見て久美が遥香を窘めた。

「ちょっと遥香。言いすぎだよ」
「でも、遥香が言っていることも正論だと思うよ。遥香は自分で映画を作りたい、撮りたいって思って毎日必死で勉強している。そんな遥香でも脚本って言うの? シナリオって言うのかわかんないけど、物語を作ることは出来ないし、書けない。私も鳳斗さんのSNSは面白いって思ったし、才能があると思う。やる気を出せとは言わないけど、少しぐらい興味を持ってもいいと思う」

 遥香を見ていた久美が鳳斗に目を移してそう言った。さらに

「私もそう思う。私たちが見る限り、遥香は最大限の努力をしてきたし、今もしてる。高校時代、一杯シナリオを作って私たちに見せてくれた。面白くはなかったけどね。でも、まだ映画監督になる夢はあきらめてない」

と千絵も便乗した。

「おいおい、女の子たちにここまで言われたんだぞ。書いてみれば?」
「無理だろ。こいつ、チキンだし、非難されたら心臓が止まるぞ」
「俺はどれだけの蚤の心臓なんだよ、小説ね……う~ん」

 空気を読んだ良樹が鳳斗に諭し、幸隆が、ボケる。それに対してツッコミを入れつつも、まだ重たい腰を上げようとしない鳳斗。張り詰めた空気が少しだけ和らぐ。

「努力をした事が必ず報われるとは限らない。でも、成功した人はみんな努力している。って、何かの漫画に描いてあったぞ」
「最後の台詞がなければものすごく良い事を言っているのに」

 ドヤ顔で良樹がそう言うと千絵が良樹にツッコミを入れる。と同時に部屋に笑いが起こる。そして少し間が空いてから遥香が部屋に起こった笑いを制す。

「でも、その通りだと思う。どんな事でも可能性は0じゃない。でも、やってみなければ、行動しなければ可能性は0のまま。私を含め、みんな面白いって、才能あるって言ってくれる。何も今の生活を壊してまで書いてって言っているわけじゃない。時間があるときに少しずつ書いてみたらいい。それでも嫌なんですか?」

 一度緩んだ空気がまた、緊張してきた。

「お~し、わかった。書くわ、すげ~の書いてやる。その代わり、書いたらお前ら絶対読めよ」
「大丈夫ですよ。私、必ず読みますから。書けたら連絡ください」

 鳳斗が立ち上がって高らかに宣言し、ここにいる全員に指を差す。
 そんな宣言を聞いた遥香は自分の携帯をバッグから取り出し、連絡先交換の仕草を鳳斗に見せた。慌てて鳳斗もポケットから携帯を取り出し、遥香と連絡先の交換をし始めた。
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