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片鱗をみた
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そうこうしている間に料理が次々と出され、皆、思い思いに手を出し食べ始める。
個室の中は明るく楽しい空気が流れていた。会話が弾み、みんなの笑顔が絶えない。そんな中、鳳斗は表情も変えずにみんなの会話に相槌を打つだけでいた。
鳳斗の様子に気付いた遥香が鳳斗に声をかける。
「面白くないんですか?」
「いや、そんなことないよ。どうして?」
遥香の言葉に鳳斗は驚きを隠しつつも、当たり障りのない返事で答える。
おおぅ、なにこの子。上手く話題に相槌を入れて会話に参加している風にしていたのに。
俺の存在なんて気づかなくていいよ。逆側にヨッシーがいるから会話しなさい。俺に興味を持っても何も良い事ないよ。
遥香はぎこちなくも言葉を選びながらも、鳳斗に会話のキャッチボールを誘ってきた。
「だって、さっきから会話に参加してないじゃないですか。駅での漫才みたいな事、やってくださいよ。あれ、めっちゃ面白かったですよ」
「おっと、いきなり無茶振り」
「さっきの自己紹介のダダスベりを引き摺っているから無理だろう」
「黙れ、全ての元凶」
遥香と鳳斗の会話に幸隆が横やりを入れるとすぐさまツッコミを入れる鳳斗。
そして、困った顔をしながら鳳斗はやんわりと拒絶の意思を示す。
「ごめんね。俺、こういう雰囲気があんまり得意じゃないんだ」
「そうなんですか? 皆さんの雰囲気を見ているとてっきり場慣れしているものだと思っていました」
「場慣れしているのは明らかにチャラいあいつだけ」
鳳斗はそう言いながら幸隆に指を差す。
「俺の悪口言うな~」
指を指されたことに気付いた幸隆が鳳斗と遥香にそう言うと、遥香は慌てて否定をする。
「悪口なんて言ってないですよ」
「そうそう、悪口を言ったのは俺だけだ。あいつはイケメン&ポジティブでワガママ、下ネタ好きと言う、ろくでもないやつだって」
「褒めるのか貶すのか、どっちかにしてくれ」
「安心しろ、3割は冗談だ」
「半分以上本気じゃねぇか」
しかしアルコールが回っているのか、幸隆はそれ以上追及せずに隣にいた久美とまた話し始める。
おやおや、幸は久美ちゃんって女の子狙いか。まあ、確かに顔は幸が好きそうなタイプだ。
ヨッシーは宣言通り、千絵ちゃん狙いなのね。お前ら、どっちでもいいから、遥香ちゃんも会話に入れてやれよ。寂しそうだよ。
俺にこの子を楽しませるのは1人じゃ無理だよ。めっちゃ可愛いから何とかしたいけど、この子を攻略するのは無理ゲーを通り越して鬼畜ゲー。
「やっぱり面白いじゃないですか。さっき幸さんから鳳斗さんは基本ネガティブって聞いたんですけど、間違いですね」
「あ~。さすが親友。ネガティブは当たっていると思うよ。だから楽しく弾んだ会話とか無理だから。あっそうだ。遥香さんは凄いよね。映画監督が目標だなんてさ」
「自分が頭の中で想像している物って作ってみたくないですか? それが実現できた時って最高に嬉しいと思いませんか?」
おおう、めっちゃ目が輝いてるやん。俺には眩しすぎるよ。
遥香ちゃんは俺みたいな人間と話しちゃ駄目だと思うんだ。腐ったリンゴの近くに来ると、遥香ちゃんも腐っちゃうよ。朱に交われば何とやら。昔の人は上手い事を言うね。
「そうだね。そういう才能がある人はそう思うかも。でも、俺みたいに何の才能もない男にはちょっとね」
「映画監督なんて誰にだって目指せますよ。やる気だけですよ」
「そんなもんかな」
「簡単に言えば、頭の中で脚本や小説を映像化するだけですから」
楽しそうに夢を語る遥香が真っ直ぐな目で鳳斗を見つめる。遥香に見詰められた鳳斗は慌てて目をそらし、テーブルの上にある料理に手を伸ばす。そんな様子を見ていたのか、良樹が2人の会話に参加してきた。
「お前には文才があるじゃん。お前のSNS、みんな面白いって言ってくれてるじゃんよ」
「鳳斗さん、SNSやっているんですか?」
「えっ、私見たい」
「私も見たい」
良樹のセリフに遥香を含めた女性陣が食いついた。
「コイツのSNS、面白いよ。日常のたいした事ないことでも、ちょっと盛って面白く仕上げて。結構、人気あるんだ」
「なに~、お前、そんなことやってたの?」
「あんなのただの日記。誰でも書けるだろ」
ブログの件を知らなかった幸隆が鳳斗に詰め寄ると鳳斗は話題を変えようとした。が、良樹は追及をやめず、携帯を取り出し鳳斗のSNSのサイトを開き始めた。
「これこれ、読む?」
「おい、待てって」
そう言って良樹は隣にいた千絵にサイトを開いた携帯を渡す。鳳斗は止めようと良樹の携帯を奪い取ろうとするが、良樹と幸隆が鳳斗を羽交い絞めにして止める。
そうこうしているうちに
「あっ、私も読みたい」
「私も~」
と言って、千絵の周りに久美と遥香が寄ってく。幸隆に羽交い絞めにされた鳳斗は何も出来ず、ただ遥香たちの反応を見るだけ。
クスクスと笑い出す女性陣。鳳斗は自分を知っている人物にブログを読まれることがこんな恥ずかしい事だとは思っていなかった。
そして次々に読まれていく鳳斗のSNS。
「あっ、これが俺のイチオシ内容」
良樹が千絵を中心とした女性陣に勧めると、女性陣の顔が次第に口角が上がり、そして大爆笑へと変わるまでに時間は掛からなかった。
「これ、面白い」
「最高~」
「こんな文章を書く人に見えない」
笑いながら喋るために言葉が少ない女性達。久美が鳳斗に視線を送ると、それに続いて千絵も遥香も鳳斗に視線を送る。部屋中がまた、笑い声で充満した。
「もういいだろ。SNS消せよ」
「いいじゃん、ウケたんだし」
鳳斗が怒ったように良孝に促す。反省の色が見えない良孝に鳳斗が大きなため息をついた
個室の中は明るく楽しい空気が流れていた。会話が弾み、みんなの笑顔が絶えない。そんな中、鳳斗は表情も変えずにみんなの会話に相槌を打つだけでいた。
鳳斗の様子に気付いた遥香が鳳斗に声をかける。
「面白くないんですか?」
「いや、そんなことないよ。どうして?」
遥香の言葉に鳳斗は驚きを隠しつつも、当たり障りのない返事で答える。
おおぅ、なにこの子。上手く話題に相槌を入れて会話に参加している風にしていたのに。
俺の存在なんて気づかなくていいよ。逆側にヨッシーがいるから会話しなさい。俺に興味を持っても何も良い事ないよ。
遥香はぎこちなくも言葉を選びながらも、鳳斗に会話のキャッチボールを誘ってきた。
「だって、さっきから会話に参加してないじゃないですか。駅での漫才みたいな事、やってくださいよ。あれ、めっちゃ面白かったですよ」
「おっと、いきなり無茶振り」
「さっきの自己紹介のダダスベりを引き摺っているから無理だろう」
「黙れ、全ての元凶」
遥香と鳳斗の会話に幸隆が横やりを入れるとすぐさまツッコミを入れる鳳斗。
そして、困った顔をしながら鳳斗はやんわりと拒絶の意思を示す。
「ごめんね。俺、こういう雰囲気があんまり得意じゃないんだ」
「そうなんですか? 皆さんの雰囲気を見ているとてっきり場慣れしているものだと思っていました」
「場慣れしているのは明らかにチャラいあいつだけ」
鳳斗はそう言いながら幸隆に指を差す。
「俺の悪口言うな~」
指を指されたことに気付いた幸隆が鳳斗と遥香にそう言うと、遥香は慌てて否定をする。
「悪口なんて言ってないですよ」
「そうそう、悪口を言ったのは俺だけだ。あいつはイケメン&ポジティブでワガママ、下ネタ好きと言う、ろくでもないやつだって」
「褒めるのか貶すのか、どっちかにしてくれ」
「安心しろ、3割は冗談だ」
「半分以上本気じゃねぇか」
しかしアルコールが回っているのか、幸隆はそれ以上追及せずに隣にいた久美とまた話し始める。
おやおや、幸は久美ちゃんって女の子狙いか。まあ、確かに顔は幸が好きそうなタイプだ。
ヨッシーは宣言通り、千絵ちゃん狙いなのね。お前ら、どっちでもいいから、遥香ちゃんも会話に入れてやれよ。寂しそうだよ。
俺にこの子を楽しませるのは1人じゃ無理だよ。めっちゃ可愛いから何とかしたいけど、この子を攻略するのは無理ゲーを通り越して鬼畜ゲー。
「やっぱり面白いじゃないですか。さっき幸さんから鳳斗さんは基本ネガティブって聞いたんですけど、間違いですね」
「あ~。さすが親友。ネガティブは当たっていると思うよ。だから楽しく弾んだ会話とか無理だから。あっそうだ。遥香さんは凄いよね。映画監督が目標だなんてさ」
「自分が頭の中で想像している物って作ってみたくないですか? それが実現できた時って最高に嬉しいと思いませんか?」
おおう、めっちゃ目が輝いてるやん。俺には眩しすぎるよ。
遥香ちゃんは俺みたいな人間と話しちゃ駄目だと思うんだ。腐ったリンゴの近くに来ると、遥香ちゃんも腐っちゃうよ。朱に交われば何とやら。昔の人は上手い事を言うね。
「そうだね。そういう才能がある人はそう思うかも。でも、俺みたいに何の才能もない男にはちょっとね」
「映画監督なんて誰にだって目指せますよ。やる気だけですよ」
「そんなもんかな」
「簡単に言えば、頭の中で脚本や小説を映像化するだけですから」
楽しそうに夢を語る遥香が真っ直ぐな目で鳳斗を見つめる。遥香に見詰められた鳳斗は慌てて目をそらし、テーブルの上にある料理に手を伸ばす。そんな様子を見ていたのか、良樹が2人の会話に参加してきた。
「お前には文才があるじゃん。お前のSNS、みんな面白いって言ってくれてるじゃんよ」
「鳳斗さん、SNSやっているんですか?」
「えっ、私見たい」
「私も見たい」
良樹のセリフに遥香を含めた女性陣が食いついた。
「コイツのSNS、面白いよ。日常のたいした事ないことでも、ちょっと盛って面白く仕上げて。結構、人気あるんだ」
「なに~、お前、そんなことやってたの?」
「あんなのただの日記。誰でも書けるだろ」
ブログの件を知らなかった幸隆が鳳斗に詰め寄ると鳳斗は話題を変えようとした。が、良樹は追及をやめず、携帯を取り出し鳳斗のSNSのサイトを開き始めた。
「これこれ、読む?」
「おい、待てって」
そう言って良樹は隣にいた千絵にサイトを開いた携帯を渡す。鳳斗は止めようと良樹の携帯を奪い取ろうとするが、良樹と幸隆が鳳斗を羽交い絞めにして止める。
そうこうしているうちに
「あっ、私も読みたい」
「私も~」
と言って、千絵の周りに久美と遥香が寄ってく。幸隆に羽交い絞めにされた鳳斗は何も出来ず、ただ遥香たちの反応を見るだけ。
クスクスと笑い出す女性陣。鳳斗は自分を知っている人物にブログを読まれることがこんな恥ずかしい事だとは思っていなかった。
そして次々に読まれていく鳳斗のSNS。
「あっ、これが俺のイチオシ内容」
良樹が千絵を中心とした女性陣に勧めると、女性陣の顔が次第に口角が上がり、そして大爆笑へと変わるまでに時間は掛からなかった。
「これ、面白い」
「最高~」
「こんな文章を書く人に見えない」
笑いながら喋るために言葉が少ない女性達。久美が鳳斗に視線を送ると、それに続いて千絵も遥香も鳳斗に視線を送る。部屋中がまた、笑い声で充満した。
「もういいだろ。SNS消せよ」
「いいじゃん、ウケたんだし」
鳳斗が怒ったように良孝に促す。反省の色が見えない良孝に鳳斗が大きなため息をついた
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