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朱に交わった結果です♪
しおりを挟む6月初旬。あれから約4週間が過ぎた。
運動神経の良いメンバーが揃い、朝練や各自の自主練の成果が早くも出始めていた。パスもシュートも最初に比べれば思い通りに蹴れるようになっている。明らかに個人レベルが上がっていた。
「はぁ~、さすがに基礎練習ばっかりでは飽きますわ。試合がしたいですわね」
休憩中に亜紀がそう言い始めた。
「そうだな。そろそろ実践練習も交えないと。でも、相手がいないんだよな。どっかのフットサルの大会にでも出てみようか?」
「う~ん、確かに。このままじゃ夏高フットサル大会に間に合わないしね」
理沙の意見に志保が同調する。
(でも、その辺の大会に出て、ボロボロにされたら亜紀ちゃんとか柚季ちゃん、フットサルを嫌いにならないかな?)
志保に一抹の不安が走る。
「何を悩んでいるの? 志保ちゃん」
いきなり志保の背後からゆかりが現れ、志保の胸を両手で持ち上げながら声をかけた
「うひょ~。何、なに、ナニ? えっ、えっ? もまれた? 何を? 何で?」
胸にコンプレックスを持つ志保が人目を気にせず取り乱し、両手で胸を隠してゆかりからダッシュで離れる。
そんなため息を付きながら理沙がゆかりに注意をする。
「落ち着け、志保。ゆかり先生、冗談にも程度がありますよ」
そんなゆかりは悪びれも無く
「だって、志保ちゃん、ボーっとして隙だらけなんだもん。後ろからイタズラしたくなるのもしょうがないと思わない?」
と言って笑顔で理沙に返した。
「でも、そういう事をする前には事前に言ってほしいの。動画、撮り損ねたの」
「あなたの頭の中は一体どうなっていますの?」
柚季の願望に亜紀がツッコミを入れる。すると柚季がジト目で亜紀を睨みつけた。
そんな様子に見かねた舞が「まあまあ」と2人の間に割って入り、2人を落ち着かせる。
「で、ゆかり先生、何か用事ですか?」
3人を完全に無視して理沙が首をかしげながら質問すると、ゆかりは冷や汗を流しながら「え~とね、みんなに謝らないことがあるんだけど……」と声が小さくしながら、さらに身体も小さくなっていく。
「なんかやったの、ゆかり先生?」
志保が理沙の肩口に顎を乗せ、ゆかりに聞いた。そんな志保の顔を手でどかす理沙もゆかりの反応を待つ。
「それがね……明日、土曜日じゃない?」
「うん、そうだね。半日、みっちりと練習するつもりだよ」
ゆかりの言葉を聞いた志保がいきなり亜紀や柚季の方を振り向き、目を光らせながら怪しく微笑んだ。
「ひぃ!」
亜紀と柚季が冷や汗をかきながら怯え、後ろにかなり早く後ずさりした。しかし、志保はまるでゾンビのようにゆっくりと2人を追い、目を光らせながら壁際まで追い込んでいく。
「ふっふっふ。逃がさないよ~。特訓だよ~。血反吐を吐くまでフットサルするよ~」
フットサルをするようになって志保が隠れドSだと言う事を思い知った亜紀と柚季。顔面蒼白になりながら2人は抱き合って震える。そんな志保に理沙が後ろからドロップキックを食らわせた。
「とりゃぁ~!」
「ぐえ~」
「やめろ! 亜紀はどうでもいいが、柚季ちゃんを怖がらすな。大丈夫、柚季ちゃん?」
柚季の前で屍になっている志保を踏みつけ、理沙が柚季を助け起こす。
その横で両腕を組んで両頬を膨らませ拗ねる亜紀。
「私はどうでもいいんですわね。この相原財閥次期党首を無視するなんて……」
言い争いを始める理沙や亜紀を無視して、舞がゆかりに「明日、なにかあるんですか?」と笑顔で聞いた。
「舞ちゃん、フットサル部にだいぶ染まったみたいね。この状況を完全スルーできるようになるなんて」
呆れたようにゆかりが舞に言うが、舞は笑顔でこう答えた。
「朱に交わった結果です。これぐらいの事で場を収めていたら、この部は崩壊しますから」
「あっそう……これぐらい当たり前なんだ」
これが日常茶飯事と言わんばかりの舞の返事に、ゆかりがハンカチをポケットから取り出して冷や汗を拭きながらそう言った。
「で、本当にどうしたんですか、先生?」
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