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初めてボールを蹴ります♪
しおりを挟む次の日、授業が終わり、フットサル部の初めての活動日。
「理沙、亜紀ちゃん、先に行くよ」
そう言って志保はダッシュで廊下を駆けて行った。そんな志保を亜紀は
「どうやったらあんなロケットみたいな人間に育ちますの?」
と呆れながら独り言を呟いた。
(今日からフットサル部始動。楽しくやれるといいな)
そんな事を考えて志保が1番乗りで部室に到着して着替え始めた。続々と集まってくるメンバー達。
「さて、準備はオッケーだよな。じゃあ、準備運動から始めようか。5人ぴったりしかいないんだから怪我だけはしないように。とりあえずウォーミングアップは……舞さん仕切ってくださいね」
理沙がキャプテンらしく仕切り始めた。ウォーミングアップを任された舞が声を出す。
「了解です。んじゃ、円になって~」
「声出して元気良くいこう~」
志保が声を出しながら音頭を取る。自分と舞は元々運動部だったので動きがキビキビしている。
しかし、ほとんど運動をしてこなかった理沙、亜紀、柚季は動きがどことなくぎこちない。3人とも運動神経は良いのにそれを生かそうとする生活してこなかったのだ。
「ほら、今日は初日だから楽しく元気よくやろう」
そう言って舞がみんなの気合を入れなおす。準備運動が終わった志保はボールを持ち
「じゃあ、パスとトラップの練習からやろうか」
と言ってサッカー経験者らしく舞に変わって練習を仕切り始めた。
ボールの蹴り方や足の裏でのボールの止め方。一連の流れを細かく説明すると、みんなが自分をお手本にしながらボールを蹴り始めた。
だが、はやり運動神経の良い4人でもなかなかボールを上手く止めきれず、しかもまっすぐ蹴れない。
(まあ、これは仕方がないよね。でもすぐ慣れると思うし)
今日は丁寧にゆっくりでいいからボールに慣れてもらう事。少しでもボールを蹴ることに対して楽しんでもらう事。
自分がサッカーを好きになったように、みんながフットサルを好きになってくれるように丁寧に教えていく。
基本練習だけで時間はあっという間に過ぎて行った。
「今日は初日だから軽めにしといたから。明日は土曜日だから半日、みっちりやるからね。ね、舞さん」
「そうね。今日はこれぐらいにしておきましょうか」
志保と舞が平気な顔して会話をする。その横で理沙、亜紀、柚季の3人は息を切らし倒れこんでいた。
3人の胸が上下に揺れ、起き上がる気配は全くなかった。
「こ、これで軽めですって? あ、あなた達は今までどんな生活を送ってきたのですか?」
「し、志保は分かっていたが、舞さんまでこれほど鬼になるなんて」
「舞さんは絶対にS……データを更新しておかないとなの」
「本当に軽めだよ。5人しかいないんだからスタミナ絶対必要!」
そんな3人を見た志保が呆れながらリフティングをし始めた。
器用にボールを蹴り続ける志保。時折、肩や頭を使いながらもボールを地面に着かないように続ける。
その技術を横で見ていた舞が
「やっぱり志保ちゃん凄いね。私も練習したら出来るようになるかな?」
と志保に問いかけた。志保はリフティングを続けながらも
「舞さんなら1週間、ボール蹴り続ければ出来るようになるよ」
と自信満々の声で舞に返した。志保に言われた舞は嬉しそうに転がっているボールの元に駆け寄り、ボールを拾う。
そして志保の隣に戻ると志保のように見よう見真似でリフティングをし始めた。蹴っていたボールを足の裏で止めた志保は、舞のリフティングを見守る。理沙も亜紀も柚季も舞の一挙一蹴を見つめる。
しかし、やはり上手く行く筈もなく、3回ぐらいで舞のリフティングは終わってしまう。だが舞は諦めずに何回も挑戦し続けた。
(さすが特待生。あの姿勢が県選抜とかの結果に結びついたんだろうな)
志保が失敗しても続けようとする姿勢に感心する。
「しかし、本当によく動けますわね。私の細い足なんて悲鳴を上げ、もう限界ですわ」
「僕も足が攣りそうなの」
脚をさすりながら柚季が亜紀の意見に同調する。
「よし、いつまでも休憩していたら身体が冷える。着替えて部室でミーティングにしよう」
立ち上がりながら、理沙がみんなにそう伝える。
「うん、じゃあ舞さん、着替えよ」
「了解」
そう言いながら志保と舞は走って部室に戻っていく。
「私たち、あのレベルになれるのでしょうか?」
震える足で身体を支える亜紀が不安を口に出すと、柚季も脚を引きずるように歩き出し
「ならなきゃいけないの。ご主人様の脚を引っ張るわけにはいかないの」
と小さな声で呟いた。
「そうだな。みんなで頑張ろう」
そう言いながら、理沙がおばあちゃんのように腰を曲げ歩き出す。その姿を見た柚季が携帯で動画を撮り出した。
「柚季ちゃん。こんな姿を撮るのは止めて~」
そう言って柚季から携帯を取り上げようと追いかけ始めた。逃げる柚季を追いかける理沙。
「何ですか? まだ2人とも走れるじゃないですか」
呆れたように亜紀が鬼ごっこを見続けた。
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