フットサル、しよ♪

本郷むつみ

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色んな問題が多発です♪

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「で、練習法はどういたしますの?」

「そうだな。とりあえず……本で調べてみるしかないな」

「じゃーん、創部記念プレゼント第2弾、フットサル参考書」

 亜紀が理沙の方に顔を向け、質問するとゆかりが突然声を上げ、机の上に3冊のフットサルの資料本を置いた。

(フットサル練習法)(フットサルルールブック)(フットサル上達法)

 部室に驚き混じりの歓声が上がる。

「おぉ~~」

「先生、どうしたんですか、これ?」

「もちろん買ったのよ。フットサル部の顧問なのにフットサルの事を知らないんじゃ、どうにもならないでしょ?」

 舞がページをめくりながら質問すると、ゆかりからは当たり前の答えが返ってきた。
 そして今度は理沙がゆかりに質問する。

「えっ、今さっき買ってきたんですか?」

「ううん、志保ちゃんと理沙ちゃんが私に部活の作り方を聞きに来たその日に買ったのよ」

 あっけらかんと答えるゆかりに5人の生徒が驚く。

「だって、あの時はまだ私と理沙の2人だけで、本当に部活になるかも分からなかったんだよ」

「そうね。でも、私は志保ちゃんと理沙ちゃんを見た時に確信したもの。この2人ならフットサル部を作るだろうなって」

 照れながら答えるゆかりに対して生徒たちから歓声が上がった。その歓声を聞いて、さらに照れるゆかり。

「そんなに褒められると、照れるな。調子に乗ってもうひとつプレゼント出しちゃうわね」

 紙袋の中からフットサル用の新品のボールを2つ取り出した。両手にボールを持ち、自信満々で生徒に見せるゆかり。今度は生徒から歓声に加え、拍手も起こった。

「ゴールは組立式の軽いタイプをネットで注文しておいた物が届いているわ。そこにあるでしょ。さすがにこれはプレゼント出来ないから、部費が出たらお金を返してね。それまでは立て替えておくから」

 ゆかりのその言葉に生徒たちが思い思いにずっこける。

「なんだ。ここまでプレゼントかと思った」

「これはさすがにね。ごめんね」

 志保が転んだ体勢のままゆかりに文句を言うと、申し訳なさそうな顔をするゆかり。すると理沙が立ち上がりながら志保に注意した。

「ゆかり先生にあまり無茶を言うな。先生の給料でゴールまでは無理だろ。参考書とボールだけで十分だ」

「そうですわ。庶民の先生にそこまで期待するのはよろしくなくてよ」

「若干、引っかかる言葉があるのは気のせいかしら」

 こめかみに血管を浮かべつつ、ゆかりが仁王立ちで理沙と亜紀に質問する。理沙と亜紀は(しまった)という顔をお互い見せあった。
 そしてゆかりの方を向き、

「そんな事ないです。気のせいです」

「そうですわ。気のせいですわ」

 と、両手を振って否定した。

「まあ、いいわ。あと、部費はユニホームを買わないといけないから無駄遣いは駄目だからね」

 そう言ってゆかりはこの話題を締めると、会話を黙って聞いていた舞が

「ねえ、練習着はどうするの?」

(コクコク)

 と、志保、理沙、亜紀、そしてゆかりと順に見ながらそう言った。いつの間にか、舞の横に移動している柚季も無言で頷く。舞は自分のバックの中からハンド部で着ていたジャージを出した。

「とりあえず私はこれでいいけど、みんなはどうするの? まさか学校の体操着って訳にもいかないよね」
舞がジャージを見せながら他の4人に言った。ゆかりも舞に続き

「そうね。確かに、この学校は部活ごとにジャージとかユニホームを部費から出して作っているからね。ユニホームは部費でまかなえると思うけど、練習着まではさすがにね」

 顎に指を当てながら部員たちにそう伝える。

「えぇ~、私、この間、みんなに奢ったからお小遣いないよ」

 悲鳴を上げながら、志保が他の4人を恨めしそうにジト目で睨む。その視線を無視して話を進める4人。

「そうだな。練習着はやっぱり必要だよな。私は一着なら何とかなるけど」

 理沙はそう言って柚季に視線を向けた。視線を受けた柚季は左右に首を振り、

「僕は無理なの。2台目のタブレットとデジカメの望遠レンズを買ったからお金がないの」

 と無表情のまま、小さな声で呟いた。

「ま、まあ、この際、そのタブレットと望遠レンズを何に使うかは不問といたしますわ」

 柚季の言葉を聞いた亜紀は両腕を組み、声を震わせ、怒りを我慢しながら柚季に言った。
 そして気持ちを落ち着かせ、お小遣いを使い切って泣きそうな志保と無表情のまま何を考えているか分からない柚季を交互に見て、亜紀は大きくため息を一つ付いた。


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