フットサル、しよ♪

本郷むつみ

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個性的な5人です♪

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「そっか、5人揃ったのね。良かったわ」

 志保達の担任、篠原ゆかりが本当に嬉しそうな顔で志保たちを出迎えた。

「はい、5人揃いました。これで部活としてやれるんですよね?」

 志保が元気一杯に答える。その後に続き、他の4人が志保に同意して頷く。

「そうね、あとはこの書類に必要事項を記入して生徒会に提出するだけよ。書いていく?」

「はい、書いていきます。ついでに生徒会に持って行くのであります」

 志保は書類とペンを受け取るとゆかりの机を借りて書類に記入し始めた。その間にゆかりは他の4人の顔ぶれを見渡す。

「また個性的なメンバーが揃ったものね。しかし、舞ちゃんがフットサル部に入部するとはね」

「ええ、私も思ってもいませんでした」

 舞が少し照れながらゆかりに伝える。

「ゆかり先生、遠藤先輩を知っているんですか?」

「だって、去年、私が担任した生徒ですもの。よく知っているわ」

 理沙の問いにゆかりが笑顔で答えた。

「舞ちゃんがハンド部を辞めるって時には、職員室でも話題になったわ。特待生が部活を辞めるなんてかなりレアな事だもの」

「その節はご迷惑をお掛けしてすいません」

 舞が頭を掻きながら照れる。

「大丈夫よ。舞ちゃんは思った事を、自分の信じた事をすればいいのよ」

「何かあったのですか?」

 今度は亜紀がゆかりに質問する。

「まあ……ね。特待生で将来有望な選手が部活を辞めるとなると、色んな所からの風当たりがきつくてね」

 ゆかりが苦笑しながら亜紀に答える。舞も少し困ったような表情を出した。

「あの時、ゆかり先生が庇ってくれなかったら、学校を辞めていたかもしれません。本当にありがとうございます」

「気にしないで。それが先生の役目なんだから。あら、足立さんは何をしているの?」

 ゆかりの言葉で生徒達が横にいる柚季に視線を移す。すると柚季はタブレットを取り出していて、色々と打ち込んでいた。

「気にしないでほしいの」

 柚季は無表情のまま、そう言って作業を進める。亜紀がタブレットを覗き込むと、そこには今の会話が情報化され、綺麗にまとめ上げられていた。

「またあなたはプライバシーに踏み込むのですか? いい加減にした方がいいですわよ」

「最近、ガードが固くて協力的でない人は黙っていて欲しいの」

「ふん、私のプライバシーを知るなんて100万年早いですわ。コーヒーで顔を洗って出直してくださいな」

 そう言って亜紀が口に手を当てて高笑いをする。いつも無表情な柚季が両頬を膨らませ、ちょっとだけ拗ねた。

(い、癒される。こういう柚季ちゃんも可愛い~)

 この様子を見ていた理沙が顔を赤らめながら柚季の頭を撫でる。柚季は特に気にせずに、無表情のまま撫でられていた。

「あの~佐原さん。何をしているの? いきなり柚季ちゃんの頭を撫でたりして」

 舞が恐る恐る理沙に声をかける。我に返った理沙は顔を赤らめたまま、後ろに飛び退き、「柚季ちゃん、ごめん」と謝ると無表情のまま、柚季は「気にしないでいいの」と小さな声で呟いた。
 そんな事をお構いなしに志保が「出来た~」両手で書類を上げ、ドヤ顔でみんなの方に振り向いた。志保の声に驚く4人の生徒と担任。

「驚かすな! お騒がせしてすいません」

と、言って理沙は志保の頭を下げさせ、自分も頭を下げた。

「いいのよ、気にしないで。書けたのなら、生徒会に提出してきなさい。早いに越した事はないから」
 
 そう言ってゆかりは志保が書き上げた書類に目を通して判子を押した。そして再び志保に手渡す。

「さあ、行きなさい。渡したらもう1度、私の所に来てね」

 ゆかりがそう言って志保たちを送り出す。志保たち5人はゆかりに頭を下げ、職員室を後にし、生徒会室に向かった。それぞれが期待や希望で笑顔になっていた。
 そんな生徒達をゆかりは優しい目で見送った。


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