フットサル、しよ♪

本郷むつみ

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再びライバル登場? いや、4人目のメンバー候補です♪

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「あ~酷い目にあった」

 理沙にクラスまで引きずられて戻った志保がやっと意識を回復させた。

「だから、ちゃんと謝っただろう。んで、柚季ちゃんがフットサル部に入ってくれるって本当なのか?」

「うん、柚季ちゃん、フットサル部に入ってくれるって。条件付きだけどね」

「はあ? 条件付き?」

 顔に不安の表情を出す理沙。だが、志保はお構いなしに柚季に出された条件を理沙に説明をし始めた。

「まずね、フットサル部で新聞を作る事。だけど、新聞の記事とかは柚季ちゃんが自分で作るから部費を少しだけ回してくれるだけでいいって」

「まあ、それぐらいなら問題ない……のか?」

「あとね、定期的に理沙の写メを柚季ちゃんに送ること。もちろんポーズとか作っていない、普段の理沙。これは私がやるから理沙に迷惑かけない」

「ふ~ん、っておい!」

「なんかね、理沙、昨日の新入生代表で同級生だけじゃなく2年3年の男子生徒からも人気急上昇らしいよ。だから、ね」

「だから、ね。じゃないだろう。首を傾げて可愛く言っても駄目だ。私のプライバシーは?」

「いいじゃん、減るものじゃないし~、ね?」

「ほう、どうやらお前は命がいらないらしいな」

 ノンビリ口調の志保のセリフがさらに理沙を苛立たせる。目が据わり、不気味なオーラを漂わせながら指を鳴らす理沙。

「あわわ、待って。ちょっと待って。落ち着こう。ね、理沙」

 手で理沙を制しながら志保は逃げ場を探す。しかし、考えられる逃げ道は無く、目の前には鬼の形相をした理沙が近づいてくる。志保の顔が段々と恐怖によって引きつり始めた。そして両頬を理沙に引っ張られ、志保の顔が痛みで泣き顔になった。

「痛い、痛い、痛い。ごめんなさい~」

「今度はコントの練習ですか?」

 そう言って2人に近づいてきたのは相川亜紀であった。

「なにやら『フットサル部』なんて作って、この相原亜紀との差を広げようなんて思っているみたいですけど、所詮庶民の浅知恵ですわ」

「理沙はそんな事はしないよ」

 亜紀の言葉を否定したのは理沙ではなく自分の両頬をさする志保であった。

「ふん、分かりませんわ。フットサル部で目立って、男子生徒達の気を引こうなんて思っているんじゃありませんか?」

「理沙はそんな事をしなくても、めっちゃモテるんだから」

「いや、お前が言うなよ。って、私が言っても変だけど。で、何か用?」

 理沙は亜紀の目の前まで歩み寄り、仁王立ちで構えた。

「ふん、あなたは私がライバルと認めた人。下策なんか使わずに正々堂々と勝負しましょうと言っているのですわ」

「別にライバルって認めてくれなくていいけど」

 亜紀から視線を外して小さな声でポツリと理沙が呟く。
 2人に流れる空気の読んだ志保がある提案を亜紀に告げてみた。

「じゃあさ、相原さんも一緒にフットサルをしない? そうすれば、どっちが優れているかがはっきりするでしょ?」

「はあ? 何で一緒にフットサル?」

 志保の提案に対し、決してハモりそうもない言葉で理沙と亜紀が同時にする否定する。

「意味が分かりませんわ。ライバルなのに同じチームだなんて」

「ライバルじゃないし、絡んで欲しくないし」

「良いアイディアだと思ったんだけどな~」

 2人の言葉を聞いて志保が残念そうに悔しがる。

「まあ、私みたいに何をやらせても優秀な成績が取れる女性はなかなかいませんからね。スカウトしたくなる気持ちも分からなくもないですわ。でも私をスカウトしたいのなら、それなりの誠意を見せていただかないと。あるいはそれ相応の代価でも構いませんわ」

 少しパーマのかかった長い髪を手でなびかせながら自信満々の態度で亜紀がそう告げる。

「クラスメイトに誠意だの代価だのっておかしいだろ。それに別に入部して欲しいなんて思ってない」

 理沙が亜紀の言っている事を全否定する。
 だが志保はその横で、まるで彫刻の〔考える人〕のようなポーズをとった。

「おい、志保。お前、何を考えている?」

 恐る恐る、理沙が志保に聞いてみる。すると、志保は何か閃いたのか、またもやしまりのない悪巧みをするような笑顔となった。そして、まるで貴族が執事を呼ぶようなしぐさで志保は手を2回叩いた。
 理沙と亜紀が不思議そうに志保を見ていると

「お呼びかの?」
 
 と2人の背後で声がした。驚いた理沙と亜紀が後ろに飛び退く。

「し、しゃべった!」

「えっ? そっちにびっくりしていますの?」
 
 理沙の反応に亜紀がツッコミを入れる。

「……僕だって必要な時ぐらいは声を出すの」

 柚季が無表情のまま、2人の耳にやっと届くぐらいの声で会話を始めた。

「また、しゃべった。やっぱり可愛い。声も可愛い」

 背が小さく、どう見ても小学生にしか見えない柚季。顔を赤らめながら理沙がつぶやく。そんな理沙を横目に亜紀は

「ふん。で、何か用ですか? そこの小学生モドキ。いきなり私の後ろに立つなんて非常識かつ無粋。そんな無礼な庶民でも、この寛容な相川亜紀はあなたの発言を許可して差し上げますわ」

 そう言いながら、顔二つ分ぐらい小さな柚季を睨んだ。しかし柚季は亜紀と一瞬だけ目を合わした後、そのまま脇を通り抜けて志保の横へ歩み「ご主人様、何か御用ですかの?」と言って肩膝を着いた。

「はあぁぁ~? ご主人様? なんでそうなっているの? 志保、駄目よ。変な方向に向かって行っちゃ! 志保と柚季ちゃんは女性同士であって……その、あの、私、なんて言ったら分からないけど」

 顔を真っ赤にしながらジタバタする理沙。隣にいた亜紀まで顔を赤くする。

「ほえ? 何、意味のわからない事を言っているの、理沙」

 理沙の態度を見てから柚季と目を合わせる志保。
 柚季も首をかしげ、不思議そうに理沙を見た後に志保と目を合わせた。

「で、なんですかの? ご主人様」

 何事もなかったかのように柚季が志保に話しかける。柚季の言葉に思い出ししたかのように志保が「そうそう、柚季ちゃんにお願いなんだけど」と、そう言って耳打ちをし始めた。

(コクコク)

 志保の話を聞きながら柚季が頷く。亜紀は隣であたふたしている理沙を横目に、深いため息をつきながら耳打ちをしている2人に目を移した。

「なんなんですか? 私、あなた達のコントを見ているほど暇じゃないのですけど」
 
 優雅に腕を組み、立ち振る舞う亜紀が会話を続ける2人にそう言った。
 しかし、2人は無視して会話を続けている。

「わかったの。で、報酬はいかほどですかの?」

「2枚でどう?」

「了解ですの。じゃあ、契約通りに携帯に送っておいて欲しいの」

 そう言って柚季はポケットから携帯タブレットを取り出し、操作をし始めた。
 やっと自分の世界に戻ってきた理沙は「何をしているんだ?」と、隣にいた亜紀に質問をする。
 が、亜紀は肩をすくめ、アメリカンジェスチャーのように両手を軽く挙げて無言で理沙の問いに答えた。


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