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メンバー2人目候補です♪
しおりを挟む校舎に入り、とりあえず教室に荷物を置いた二人は、入学式の為に体育館に向かう。
そこには自分たちと同じように新しい制服に身を包み、希望に満ちた同級生達が沢山並んでいた。そして、厳粛な雰囲気で入学式が始まった。
「これから君たちはこの岡家高校の生徒として勉学に……」
校長先生の話を聞きながら志保は段々と眠くなっていった。入学式前日、興奮してほとんど睡眠をとっていなかった志保。
(寝ちゃいけない。ここで寝たら入学早々居眠りした女って思われる)
首を振り、目をしっかりと開け直すが、自分の意思とは逆にまぶたは下がり、自然と頭が下がり始める。その瞬間(とき)だった。
志保の頭の中に、自分を含めた8人がお互いを抱き締め合い、喜んで泣いているビジョンが走馬灯のように浮かんだ。7人の中で唯一自分の知っている顔があった。それは無二の親友、理沙。
しかし、他の6人の顔に心当たりはまったく無い。
(なんだったんだろう、今の?)
そんな事を考えていると校長先生の話は終わっていて、PTA会長の話に変わっていた。
志保は春の日差しが入ってくる窓に目を向け、
(とりあえず、凄く楽しい事がありそうだな。沢山素敵な思い出が出来るといいな)
と心の中でつぶやき、眠気を吹き飛ばした。そんな時、親友である理沙の名前が大きく呼び上げられた。
「新入生代表、佐原理沙(さはら りさ)」
「はい」
理沙が大きな声で返事を返した時、志保は飛び上がりそうなほど驚いた。
(理沙が新入生代表? なんで?)
そんな志保の思いをよそに理沙が壇上へと上がっていく。志保の周りの生徒から小さなざわめきが起きた。
「おい、あの子、めちゃめちゃ可愛くねぇ?」
「って言うか、モデルみたいだな」
「新入生代表って事は入試トップって事だよね?」
「あの人って読モとかなのかな? スタイル良過ぎない?」
色んな理沙の評価が志保の耳に届いてくる。
理沙と幼馴染の志保にとって、理沙の高評価がくすぐったくもあり、嬉しく思った。
綺麗なストレートの髪を後ろで束ね、眼鏡をかけ、スタイルも抜群に良い。まさに知性的美少女という言葉がぴったりな理沙。
どんな時でも冷静で、周囲の事を考え、自らの行動で示してくれる。それでいて運動神経も良く、気遣いも出来て非の打ち所が無い。
理沙が親友である事を幸せに思うと同時に、新入生代表である事を志保は誇らしく思った。
体育館での入学式が終わり、2人は教室に向かって歩く。
「まさか、理沙が新入生代表だとは思ってもいなかったよ」
「志保に新入生代表になったって言ってもしょうがないだろ」
「でもさ、そうゆうのって『やったよ、志保。私、新入生代表になっちゃったよ』とか報告したくならない?」
「ならない。なったとしても志保には絶対に言わないから安心していい」
教室の扉を開けながら理沙が少し嫌味口調で志保にそう言った。理沙が教室に入ると途端に教室が騒がしくなった。明らかにクラスメイトからの視線が理沙に集中する。少しだけ志保は男子生徒と言葉に耳を傾けてみる。
「おい、あれ、さっきの代表だぜ、近くで見ても可愛いな」
「俺、このクラスで良かった」
クラスのほとんどの男子生徒が理沙に釘付けになっている。しかし、当の本人は何事も無かったかのように席に座った。
「ねえねえ、注目されているよ。理沙、どんな気分? 決勝ゴールを決めた感じ?」
「決勝ゴールを決めたことないし、その感じは絶対に違うと思う」
そう志保に返した理沙はいつもと同じ、冷静で表情1つ変えていない。これが理沙なのだが、冷静沈着すぎてヤキモキする志保。
「せっかく1番だったのに。1番だったから新入生代表だったんだよ。これはもうサングラスに白いスーツで決めるしかないね」
「なんでどっかのサッカー選手みたいな恰好なんだ。受かる事、入学する事が目的であって、1番はおまけ。どうでもいい副賞みたいなものだ」
理沙がそう言い終わると同時にチャイムがなり、新しいクラスメイト達が席に着き始めた。志保も理沙に
「また後でね」
と言い残し、自分の席に急いで戻った。席に着くと同時に教室の扉が開き、若い女性が入ってくる。
「皆さん、おはようございます。私がこの教室の担任となる篠原ゆかり(しのはら ゆかり)です。まだ担任を持つになって2年目の新米です。皆さんと一緒に成長していきたいと思っていますのでよろしくお願いしますね」
綺麗な声だが、少しおっとりした口調で担任のゆかりが自己紹介をする。そのままHR的な事に移行していく。
そして、生徒1人1人の簡単な自己紹介が始まった。担任になったゆかりを眺めながら、志保はこの高校生活が絶対に楽しくなる事を確信し始めた。
(本当に楽しくなるといいな)
そう思いながら志保はクラスメイトになる人達の自己紹介に耳を傾ける。入学式の時に一瞬だけ頭の中に出てきた7人の友達。はっきりとは思い出せないが、みんな笑顔だった事だけは思い出せる。
(出会えるよね、きっと。その日はいつかな)
志保は興奮を隠せずにいた。少しだけ周囲のクラスメイトに目を向けるが、ピンと来る人物は見当たらなかった。
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