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8章 性欲ジャーナリスト
8-10 性欲ジャーナリスト5・「性欲って、一体何なのだろうね」
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ナンパ師だろ。即が目標だろ。彼氏がいたって関係ないだろ。一体何をやっているんだ俺は……。でも、これだけ彼のことを思っているし、ギラついたってどうせダメだろ。っていうか、場が凍りつきそうだ。今日はやめとくか……。
「エッチしようよ」
ん。
「もう、聞いてるの? エッチしようって言ったの」
今度はちゃんと脳で理解した。しかし、理解しても口から言葉が出てこない。
「だって、それが目的で声をかけてきたんでしょ」
「まぁ、確かにその気持ちは否定できなくなくなくなくなくなくなくないが……」
「どっちなのよ!」
肯定してるのか否定してるのか自分でもわからなくなってしまった。
「ぇ、いゃ、すぃません……」
しどろもどろになってしまった。
「違うの?」
「いや、違うわけじゃないけど」
「ハッキリしてよ」
おっしゃる通りでございます……。
「あわわわわ……」
「そんなにわかりやすく、『あわあわ』しないでよ!」
「でも、彼氏いるじゃん」
「関係ないよ、あんな奴」
「でも……」
「もういいの、あんな奴。別れてやるんだから。ねぇ、行こう」
と言うと、強引に腕を引っ張られてしまった。
会計が終わり階段を降りようとすると、女はうまく降りられず危なっかしい。外に出ると千鳥足で真っすぐ進めず支えていないと歩けない状態だった。
「大丈夫よ。全然酔ってないから」
酔っぱらいはたいてい自分は酔ってないと言うからな。
「でもさぁ」
「ん」
「性欲って、一体何なのだろうね」
質問の趣旨を感覚的に理解することはできたが、適切な返答が思い浮かばなかった。
その瞬間、心の中には、性交欲、排泄欲、達成欲、承認欲、生殖欲、支配欲、権力欲、侮辱と尊厳、暴力や攻撃性、戦争や民族浄化、ミソジニーやミサンドリー、恋愛感情、差別感情、無意識や無自覚、愛と憎しみ、浮気や不倫、仕返しや復讐、恥、セックス、セックスレス、性愛、快楽、刺激、マスターベーション、スキンシップ、人肌の温もり、コミュニケーション、性的同意や不同意性交等罪、宗教における戒律、サキュバス、過去とのリンク、挫折や失敗等の感情、劣等感、全能感、面倒、ストレス、性的虐待、性犯罪、性病、セックス依存症、インターネットポルノ中毒、ジェンダー、アセクシャル、性的指向、性的嗜好、特殊性癖、多様性、リビドー、ホルモン、テストステロン、クーリッジ効果、魔物、理性、出会い……という言葉が次々と浮かび、それらに振り回されている人間の姿がぼんやりと映し出されてきた。それはまるで、手足の自由がきかず誰かの感情の下に振り回されるマリオネットのように見えた。
「性欲を何もかも自由自在にコントロールできれば、誰も傷つかないのにね……」
「うん」
「性欲なんて、この世からなくなっちゃえばいいのに……」
俺は返す言葉が見つからなかった。
「エッチしようよ」
ん。
「もう、聞いてるの? エッチしようって言ったの」
今度はちゃんと脳で理解した。しかし、理解しても口から言葉が出てこない。
「だって、それが目的で声をかけてきたんでしょ」
「まぁ、確かにその気持ちは否定できなくなくなくなくなくなくなくないが……」
「どっちなのよ!」
肯定してるのか否定してるのか自分でもわからなくなってしまった。
「ぇ、いゃ、すぃません……」
しどろもどろになってしまった。
「違うの?」
「いや、違うわけじゃないけど」
「ハッキリしてよ」
おっしゃる通りでございます……。
「あわわわわ……」
「そんなにわかりやすく、『あわあわ』しないでよ!」
「でも、彼氏いるじゃん」
「関係ないよ、あんな奴」
「でも……」
「もういいの、あんな奴。別れてやるんだから。ねぇ、行こう」
と言うと、強引に腕を引っ張られてしまった。
会計が終わり階段を降りようとすると、女はうまく降りられず危なっかしい。外に出ると千鳥足で真っすぐ進めず支えていないと歩けない状態だった。
「大丈夫よ。全然酔ってないから」
酔っぱらいはたいてい自分は酔ってないと言うからな。
「でもさぁ」
「ん」
「性欲って、一体何なのだろうね」
質問の趣旨を感覚的に理解することはできたが、適切な返答が思い浮かばなかった。
その瞬間、心の中には、性交欲、排泄欲、達成欲、承認欲、生殖欲、支配欲、権力欲、侮辱と尊厳、暴力や攻撃性、戦争や民族浄化、ミソジニーやミサンドリー、恋愛感情、差別感情、無意識や無自覚、愛と憎しみ、浮気や不倫、仕返しや復讐、恥、セックス、セックスレス、性愛、快楽、刺激、マスターベーション、スキンシップ、人肌の温もり、コミュニケーション、性的同意や不同意性交等罪、宗教における戒律、サキュバス、過去とのリンク、挫折や失敗等の感情、劣等感、全能感、面倒、ストレス、性的虐待、性犯罪、性病、セックス依存症、インターネットポルノ中毒、ジェンダー、アセクシャル、性的指向、性的嗜好、特殊性癖、多様性、リビドー、ホルモン、テストステロン、クーリッジ効果、魔物、理性、出会い……という言葉が次々と浮かび、それらに振り回されている人間の姿がぼんやりと映し出されてきた。それはまるで、手足の自由がきかず誰かの感情の下に振り回されるマリオネットのように見えた。
「性欲を何もかも自由自在にコントロールできれば、誰も傷つかないのにね……」
「うん」
「性欲なんて、この世からなくなっちゃえばいいのに……」
俺は返す言葉が見つからなかった。
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