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8章 性欲ジャーナリスト

8-4 「調子に乗ってると鉄パイプで肛門を三つに切り裂いた後、東京湾に沈めっぞ!」

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「もう、やめましょう。飲み過ぎですよ、乳ローさん」
「あれ?」と十太が言葉を発したので、その視線の先を見ると乳ローと子凛が肩を組んで歩いていた。しかし、乳ローは確実に子凛に支えられている。
「お前とのコンビは散々だったよ」
 乳ローはこちらではなく地面に向けて言葉を発している。かなり泥酔しているようだ。子凛も少し頬を赤らめているがほろ酔い程度に見える。やはり妖精も頬をほんのり赤らめていた。
「すいません。コンビは初めてだったもので」
「どうしたんですか」
「グリーンさん、お疲れ様です。乳ローさんとコンビで声をかけたんですよ。僕がうまく立ち回ることができなくて連れ出しを失敗しちゃったんです。それで、反省会と称して居酒屋に行ったのですが、乳ローさんは飲み過ぎてしまって絡み始めてきたってわけなんです」
 子凛がコンビなんて珍しいな。
「お前が足を引っ張らなきゃコンビで連れ出せたものをよぉ。俺の辞書に失敗という二文字は存在しねぇんだよ。恥をかかせるんじゃねぇよ」
「迷惑かけてすいません」
 たんぽぽの輪っかをのせた妖精は、腕を組み鼻息を荒くして不満そうに乳ローを睨んでいる。
「最後まで子凛はナンパがヘタだったよなぁ」
 最後ってどういうことだろ。
「未熟者でほんとすいません」
 と言いながらも子凛は穏やかな笑顔を絶やさない。
「おい、十太。俺のビールはねぇの?」
「ねぇよ。自分で買ってこいよ。すぐ近くにコンビニがあるだろ」
「子凛がミスったんだから、お前が買ってこい」
 と言うと乳ローは子凛の頭を軽くはたいた。
「これ以上飲むと身体に毒ですよ。もう飲むのはやめましょう」
 子凛は優しく見守りながら諭すように言った。
「うるせぇよ、この誠実バカが。もうあっちに行けよ」
 今度は拳を丸めて子凛の頭を小突いた。
 それを見ていた妖精は目を剥き乳ローに飛びかかっていった。
「痛ッ、誰か噛んだだろ」
「何、言ってんだよ。誰も噛んでねぇよ。飲み過ぎて幻覚が起きてんじゃねぇか」
 十太が馬鹿にするように言った。
 噛まれた右腕には人らしき人は存在しなかった。しかし、妖精はいたわけだが……。乳ローをはじめ、やはり皆には妖精の姿は見えないらしい。見えているのは俺だけのようだ。いい気味だったので黙って見ていた。
「痛ったぁ。幻覚じゃねぇよ、マジいてぇ……」
「子凛、てめぇだろ。こっちにいるのお前だけだもんな。ふざけんなよ」
 乳ローが子凛の頬を「ペシッ」と叩いた。すると、子凛は目の色が変わり空気を切り裂くように鋭く動くと乳ローの懐に素早く潜り込んで右ストレートパンチをみぞおち目がけて炸裂させていた。
「おい、乳ロー! いい加減うぜぇんだよ。調子に乗ってると鉄パイプで肛門を三つに切り裂いた後、東京湾に沈めっぞ!」 
 あの子凛がマジギレした。 
「サ、サーセン」
 お腹を押さえながら、目を白黒させて受け身を全く取れず汚い道路に倒れ込んだ。
「乳ロー、大丈夫か」
「大丈夫だと思いますよ。手加減したんですぐに起き上がりますよ」
 と言うと、子凛は俺に茶目っ気のある微笑みを投げかけ、すぐさま妖精を見てみるとこちらは腹を抱えて大笑いしていた。
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