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4章 左目の下瞼のほくろ
4-6 女の奥には何があるのか
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瞼を開けると、目の前には武者小路ヘアーを手に入れた俺の姿が鏡に映し出されていた。
「どうですか。よくお似合いだと思いますよぉ」
モヒカン店員は自分の仕事に満足そうな笑みを浮かべている。
「いいですね」
「ありがとうございます」
髪型は気に入ったが、ひ弱に見える白い肌が気になった。
「どうなさいました」
「髪型はいいと思うのですが、自分って肌が白いじゃないですかぁ。そこが、ちょっと気になってしまって」
「それなら、ここから駅に向かう途中に日焼けサロンがあるので立ち寄ってみてはいかかですかぁ。クーポンあるので差し上げますよぉ」
「わかりました。行ってみますね」
美容院を出て駅に向かい、日焼けサロンの看板を見つけた。六階だったのでエレベーターに乗る。店に入ると、アロハを着た男性店員に迎えられた。
ホリデーという名の超旧型激安マシーンを選択する。ホリデーは、ベッド型に分類される。まず、機械の上で横になる。横になった後に、手で上部の機械を下ろす。ホットドッグのウィンナーのように挟まれるのだ。
「では、三十分頑張ってください」
ショートパンツを穿き太腿がいやらしい金髪の女性店員に「頑張ってください」と言われたが、その時はピンと来なかった。しかし、汗が全身から吹き出すように流れ、お尻の辺りにちょっとした水たまりができると、店員の言っている意味がわかった。頑張らなければ、この熱さに耐えられないからだ。
この瞬間、生まれて初めてオーブントースターでこんがりと焼かれる食パンの気持ちが身に染みてわかったような気がした。頭が朦朧としてきた俺は、全身にとろけるチーズを乗せたい衝動に駆られてきた。
耳の側のスピーカーから、女性の声が聞こえた。
「お疲れ様です。もう少しで終わりますので、電源が切れましたら更衣室にお戻りください」
「あと、もう少しかぁ。俺、頑張れぇ」
背中が熱すぎるので、炙られたスルメのようにしなりながら前後左右に揺れ動いた。
「もうちょっとだぁ……」
朦朧に身を任せていると、妄想の世界ではなぜだかケチャップを塗りたくられてしまい、上空を眺めるとピーマンやトマトやコーンやサラミやパイナップルが落ちてきた。逃げ惑っていると、今度はとろけるチーズとバジルが降ってきて段々と液体状になってきたなと思いきや、それがタバスコの雨だと判明して生命の危機を感じたので、すぐさま目の前に落ちていたマッシュルームの傘で難を逃れた。
電源が落ちると、身体を上げながら瞼をゆっくりと開けて全身を見回した。一瞬、俺の身体がぐちゃぐちゃなピザに見えたが、視界の汗をふくと汗だくの身体があるだけだったので大きく息を吐いてほっとした。
更衣室に戻り、鏡を眺める。眩しい光が存在し、その光を掻き分けるように見つめると、そこには少し小麦色の肌をした俺が映っていた。
家に帰ると、美少女ゲームのポスターが貼られた地獄の部屋が待ち構えていた。この部屋に戻ると、ゲームがしたくてしょうがない飢餓感に晒される。その感情を取り除くように、ポスターを一枚一枚剥がしていった。それだけじゃなく、ゲームと決別するために細かく破いていった。
インターネットゲーム障害になってしまったが、あの時の俺は何かに依存してなければ心の拠り所を失い、絶望して自殺していたような気がする。なので、ゲームにちょっと感謝した。
細かく破かれた紙屑をビニールに入れ、空き地に行くと焚火をした。
美少女の紙屑は星空に向けてよく燃えた。ビニールの中に手を入れ最後の一掴みをすると、それを炎に入れるのではなく、星空の彼方に向けて投げつけた。
「美少女の紙吹雪だぁ!」
バカみたいに大きく声を張り上げたので、その勢いに乗って紙吹雪は天高く空に舞っていった。
俺は心療内科には行かなかった。しかし、今の生活を根本的に変えなければいけないと思った。
自信をつけたい。
俺の自信のなさはどこにあるのか突き止めようと心の中を覗いてみたら、複合的な問題が複雑に絡み合い、難しい知恵の輪のように矜羯羅がっていた。
しかし、その中心に渦巻いているものが「女」だということは一目瞭然だった。
それにしても、女が怖い。
いや、「女の奥」にある何かが怖いのかもしれない。
「女の奥」に何があるのだろうか。
どちらにしても、鯔の詰まりは女に関わることだった。
だったら逃げるより、立ち向かい知ることが大切だと感じた。
女を知り尽くし、体感しなければ何もわからないではないか。
そう、思った。
だから俺は、伝説のナンパ師であるガリさんに会いに行ったんだ。
たとえ、社会から忌み嫌われるナンパだとしても。
心の底から女を知りたかったから。
☆4章の参考文献
・美人はこの一冊で始まる 基本のメイク 山本浩未 角川SSコミュニケーションズ
・ネトゲ廃人 芦﨑治 リーダーズノート
・DSM‐5精神疾患の診断・統計マニュアル 日本語版用語監修 日本精神神経学会 医学書院
・日本人はもうセックスしなくなるのかもしれない 湯山玲子 二村ヒトシ 幻冬舎
・どうすれば愛しあえるの 幸せな性愛のヒント 宮台真司 二村ヒトシ ベストセラーズ
「どうですか。よくお似合いだと思いますよぉ」
モヒカン店員は自分の仕事に満足そうな笑みを浮かべている。
「いいですね」
「ありがとうございます」
髪型は気に入ったが、ひ弱に見える白い肌が気になった。
「どうなさいました」
「髪型はいいと思うのですが、自分って肌が白いじゃないですかぁ。そこが、ちょっと気になってしまって」
「それなら、ここから駅に向かう途中に日焼けサロンがあるので立ち寄ってみてはいかかですかぁ。クーポンあるので差し上げますよぉ」
「わかりました。行ってみますね」
美容院を出て駅に向かい、日焼けサロンの看板を見つけた。六階だったのでエレベーターに乗る。店に入ると、アロハを着た男性店員に迎えられた。
ホリデーという名の超旧型激安マシーンを選択する。ホリデーは、ベッド型に分類される。まず、機械の上で横になる。横になった後に、手で上部の機械を下ろす。ホットドッグのウィンナーのように挟まれるのだ。
「では、三十分頑張ってください」
ショートパンツを穿き太腿がいやらしい金髪の女性店員に「頑張ってください」と言われたが、その時はピンと来なかった。しかし、汗が全身から吹き出すように流れ、お尻の辺りにちょっとした水たまりができると、店員の言っている意味がわかった。頑張らなければ、この熱さに耐えられないからだ。
この瞬間、生まれて初めてオーブントースターでこんがりと焼かれる食パンの気持ちが身に染みてわかったような気がした。頭が朦朧としてきた俺は、全身にとろけるチーズを乗せたい衝動に駆られてきた。
耳の側のスピーカーから、女性の声が聞こえた。
「お疲れ様です。もう少しで終わりますので、電源が切れましたら更衣室にお戻りください」
「あと、もう少しかぁ。俺、頑張れぇ」
背中が熱すぎるので、炙られたスルメのようにしなりながら前後左右に揺れ動いた。
「もうちょっとだぁ……」
朦朧に身を任せていると、妄想の世界ではなぜだかケチャップを塗りたくられてしまい、上空を眺めるとピーマンやトマトやコーンやサラミやパイナップルが落ちてきた。逃げ惑っていると、今度はとろけるチーズとバジルが降ってきて段々と液体状になってきたなと思いきや、それがタバスコの雨だと判明して生命の危機を感じたので、すぐさま目の前に落ちていたマッシュルームの傘で難を逃れた。
電源が落ちると、身体を上げながら瞼をゆっくりと開けて全身を見回した。一瞬、俺の身体がぐちゃぐちゃなピザに見えたが、視界の汗をふくと汗だくの身体があるだけだったので大きく息を吐いてほっとした。
更衣室に戻り、鏡を眺める。眩しい光が存在し、その光を掻き分けるように見つめると、そこには少し小麦色の肌をした俺が映っていた。
家に帰ると、美少女ゲームのポスターが貼られた地獄の部屋が待ち構えていた。この部屋に戻ると、ゲームがしたくてしょうがない飢餓感に晒される。その感情を取り除くように、ポスターを一枚一枚剥がしていった。それだけじゃなく、ゲームと決別するために細かく破いていった。
インターネットゲーム障害になってしまったが、あの時の俺は何かに依存してなければ心の拠り所を失い、絶望して自殺していたような気がする。なので、ゲームにちょっと感謝した。
細かく破かれた紙屑をビニールに入れ、空き地に行くと焚火をした。
美少女の紙屑は星空に向けてよく燃えた。ビニールの中に手を入れ最後の一掴みをすると、それを炎に入れるのではなく、星空の彼方に向けて投げつけた。
「美少女の紙吹雪だぁ!」
バカみたいに大きく声を張り上げたので、その勢いに乗って紙吹雪は天高く空に舞っていった。
俺は心療内科には行かなかった。しかし、今の生活を根本的に変えなければいけないと思った。
自信をつけたい。
俺の自信のなさはどこにあるのか突き止めようと心の中を覗いてみたら、複合的な問題が複雑に絡み合い、難しい知恵の輪のように矜羯羅がっていた。
しかし、その中心に渦巻いているものが「女」だということは一目瞭然だった。
それにしても、女が怖い。
いや、「女の奥」にある何かが怖いのかもしれない。
「女の奥」に何があるのだろうか。
どちらにしても、鯔の詰まりは女に関わることだった。
だったら逃げるより、立ち向かい知ることが大切だと感じた。
女を知り尽くし、体感しなければ何もわからないではないか。
そう、思った。
だから俺は、伝説のナンパ師であるガリさんに会いに行ったんだ。
たとえ、社会から忌み嫌われるナンパだとしても。
心の底から女を知りたかったから。
☆4章の参考文献
・美人はこの一冊で始まる 基本のメイク 山本浩未 角川SSコミュニケーションズ
・ネトゲ廃人 芦﨑治 リーダーズノート
・DSM‐5精神疾患の診断・統計マニュアル 日本語版用語監修 日本精神神経学会 医学書院
・日本人はもうセックスしなくなるのかもしれない 湯山玲子 二村ヒトシ 幻冬舎
・どうすれば愛しあえるの 幸せな性愛のヒント 宮台真司 二村ヒトシ ベストセラーズ
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