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序章

0-1 〝ガリガリ君〟でもなければ、寿司に添える〝ガリ〟でもない。

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――女を千人抱くこと。それは、男の夢。
 その夢を叶えるためには、ガリさんを見つけ出さなければいけないんだ。
 
   暗がりの部屋の中で、目を刺すようなまぶしい灯りを放っているパソコンのモニターを見つめる。左手で軽くさえぎり目を細めながらその灯りをぼんやりと探ると、そこには二人の男女が映し出されていた。

 準備のためにティッシュを慌てて何枚か鷲掴わしづかみすると、手の平からこぼれ落ちた一枚のティッシュがふわりと浮かび、自分の視界を遮ぎると、人を小馬鹿にするようにヒラヒラと舞った。それを見つめると、女を争奪するための弱肉強食に太刀打ちできず、敗北を意味する白旗を掲げているような錯覚に陥り虚しい感情が襲ってきたので、断ち切るために左手で素早く掴み取る。

 マスターベーションを始める前に敷いた布団に倒れ込むと、欲望のしたたりを解放したおかげで息を引き取るように眠りの世界に誘われていった。

 あなたは、ガリさんを知っていますか。
 この世界では有名な、あのガリさんを知っていますか。
 もしかして、知らないのですか?
 では、知らないあなたのために、こっそり教えてあげましょう。
 一つ目。とにかく類を見ない、伝説のナンパ師なんだ。
 二つ目。渋谷のモヤイ像近くで、太陽が沈みかけるころに出没する。
 三つ目。ガリの名前の由来は、キングオブアイスである赤城乳業のでもなければ、寿司に添える甘酢生姜あまずしょうがでもない。

 あなたと出会って本当に間もないのだが、大風呂敷を広げてしまったことを心よりお詫び申し上げます。俺も知っているとはいえ、情けないことに以上のことしか知らない。しかも、ネットでの噂レベルに過ぎない。女を千人抱くためには、ナンパ師になることが近道。それならば、伝説のナンパ師に教えをうことが必要だ。
 俺はそう思った。
 だから、どうしてもガリさんを見つけ出さなければいけないんだ。
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