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とある生徒の、普通とは少し違った日常。 1-7

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「…………え?」
「ですから、貴方はEクラス認定されたので、二度と別のクラスに移動することは出来ないのです」

 教室に入ろうとして担任に止められ、そう言われた。
 私の混乱も抗議も全く響いていない。
 由緒正しき青き血を持つこの私が最下位クラス!? 
 冗談じゃない!!

「納得いきません!私は貴族ですよ!?」
「えぇ存じ上げておりますよ。ですが貴方をEクラスと定めたのは神です、正式に抗議したければ私や学園ではなく所属の教会を通してください。まったく、入学式前からEクラスになるなんて前代未聞ですよ、やはり他国の貴族なんて面倒くさい」
「ッ!!」
 
 この教師は一体何を言っている? 私のことを馬鹿にしているのか!?

「話は以上ですか?では指定のクラスに移動してください、所属以外のクラスで授業を受けても単位はもらえませんからね」
「ちょっ……」
「はやくしなさい」
「……わかりました」

 こんなはずではなかった。
 この国の未来を担うであろう貴族の子弟が集まるこの学園で、優秀な成績を修め、彼らと縁を結べれば、父上だって喜んでくれるはずだった。
 それがどうして……。

「失礼する」

 Eクラスの扉を開ける。
 中には誰もいない。
 それもそのはずだ、このクラスは最初は誰もいない。
 問題を起こすと次々放り込まれ、厚生したのが認められた場合はクラス移動が可能、ただし――邪神に指定された者だけは移動が不可能。

「何故この私がこんな扱いを受けねばならないんだ」

 悔しさから教室を飛び出し、泣くのをこらえながら廊下を歩いていたら、前方から賑やかな一団が歩いてきた。

「おい見ろよあれ」
「うわマジかよ」
「口にピアスしてる」
「痛い痛い痛い」
「耳はわかるけど、どうやって穴開けたんだよぉ」
「あっ、こっちみないでぞわっとする」
「…………伸ばすと穴が広がる」
「いやぁぁぁ!!」

 騒がしい連中だ。
 臭い。
 不潔。
 穢らわしい。
 あんなのが私より上のクラスなんて!!

「そこの君たち、ちょっといいかな」
「うわぁなんだこのイケメン」
「え、顔がいい」
「きゅんとした」
「先輩、俺に声をかけるなんて――足でも舐めて欲しいんですか?」
「おい辞めろ変態、先輩の耳が腐る」

 何が面白いのか知らないがケラケラ笑う汚物どもめ。
 お前たちのような下賤な輩に高貴な我が青き血が負けるなんてありえない、身の程を知るべきだ。

「邪神様のクラスってどこかな、高級和菓子が手に入ったから差し入れしたいんだ」
「案内しますよ、でもこの時間起きてるかなぁ」
「そうなの?」
「なんでもクラス全体で甘やかしていて、少しでも寝やすいようにって最近じゃクッションを持ち込んだりしてるらしいです」
「それはまたすごいね、寝心地良すぎて寝過ごさないのかな」
「授業自体は受ける必要ないですからね、単に学生やってみたかったらしいです」
「あと学食目当てらしいですよ」

 邪神?邪神とはあの邪神か? 
 私をEクラスへ貶めた、あの。

 許せない、絶対にこの学園から出て行かせてやる。
 そう決意を新たにして、こっそりと前を歩く平民の後をつける。

「あ、ここです」
「おはよーさーん」
「客人だよ」

 そこに広がっていた光景は、私の想像をはるかに超えたものだった。

「これはまた派手に改造したね」
「おはようございます」
「この先輩がラグ様に奉納したいものがあるんだって」
「暇だから案内してきた」
「サンキュー」
「おーいラグ、早弁ならぬ早おやつがきたぞ」
「んん」

 もぞりと動いたその少年の周りだけ、異常なほどに整えられていた。
 窓から入る陽光を遮り過ぎないように高級なレースのカーテン、枕にされているのは柔らかそうなぬいぐるみ、机の上には菓子を入れる小箱が置かれ、他にも薄い布やクッションが少年の周囲を囲っていた。
 貴族でもやらないような恐るべき特別扱い。

 その時、一人のド派手な美少女が教室に入ってきて、ツカツカと少年に近付いたと思ったら頭の傍にそっと何かを置いて立ち去って行った。

「今の子は?」
「俺らはドリルちゃんって呼んでる。あの縦巻き凄いですよね」
「ラグが使ってるぬいぐるみとか、菓子入れはあの子の差し入れです」
「何が目的とかいうよりも、自分の財力を使って思う存分貢ぎたいだけっぽいかな」
「くぁぁ」
「ああ起こしてしまったかな?これ、食べてもらえるかな、親せきからもらった高級和菓子なんだ」
「たべる」

 口を開けて、まるで餌を待つ雛のように無防備に差し出された口内には、無数の鋭い牙が並んでいた。
 ちらりと視線が向けられた瞬間、全身に走ったのは恐怖だったのか、分からぬままその場から離れ、自分だけしか生徒がいないEクラスへとい逃げ込んだ。
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