上 下
43 / 90

夢の異世界転生 1-8

しおりを挟む

「そこまでですわ!!」

 突然響いた凛とした声。
 その瞬間、豹とダークエルフの動きが止まった。
 何が起こったのか分からず混乱する俺の前に颯爽と現れたのは、純白の鎧に身を包んだ美しい女性騎士。腰まで伸びた髪は金色に輝き、宝石のような碧眼で冒険者を睨みつけていた。
 俺を庇うように立つ後ろ姿にきゅんとした。

「あ、聖騎士」
「ごきげんよう陛下! 正々堂々と遊びに参りましたわ!」

 どうやらこの人は聖騎士という職業らしく、王様と知り合いのようだ。
 そして正々堂々の意味を知っているだろうか。俺には分からない。

「さぁ、貴方たちはすでに負けた身、ダンジョンから去っていただきますわ!」
「負けていない!」
「そうだ! まだこれから――」
「オーーホホホホホ! 片腹痛いですわぁ!!」
「ぐはっ」
「ひぃ」
「ふぎゃ」

 聖騎士様は笑いながら剣を一振りすると、三人の冒険者はあっけなく部屋の外へと飛ばされてしまった。

「さぁこれで邪魔ものはいなくなりました! 今日こそ貴方に勝ちますわよ!」
「なにすんの?」
「新しい遊びもありますよ?」
「何をやるか決めておいてくれ、その間にお茶の用意をするからな」

 王様、顔がだらしなくなってますよ。
 なんだあれ、まるで孫を溺愛するじいちゃんみたいじゃないか。

「黒と白の駒を使う勝負も捨てがたいですわね」
「リバーシは私負け知らずなんよ」
「新しいカードゲームを買ってもらったんです、次にこれやりましょう」

 ぽん。と豹が取り出したのは前世でやったことがある「にゃんにゃんゲーム」だった。
 テーマを決めて猫言葉で伝え、何と言ったか相手に答えてもらうゲームだったかな?え、あの豹、転生者なの?

「ネヴォラにはいつか勝ちますわ! でも今日はあのスケルトンキングになんとしても勝利したいです!」
「じゃあイネス、わたしたちは五目並べするんよ」
「はぁい」
「今日は可愛いお客が来ているからボス戦はお休みだと看板出しておいてくれ」
「あ、はい」

 王様に言われてボス部屋の外に出ると、扉のかげに隠してある看板を取り出して通路に置く。
 俺がスケルトンとして転生したこの世界、ダンジョンだけでも謎が多すぎて良くわからん。

 いつか俺も外の世界に行ける日が来るのだろうか、いや無理だな、出たら秒で死ぬ。
 あの聖騎士の女みたいなのがゴロゴロいる世界なんて怖くて歩けない、俺は下っ端スケルトンとしてこのダンジョンで掃除スキルを極めよう、うん。

「あっ、腕取れた」

 発光する豹の近くに居すぎたせいだろうか、ただでさえ繊細な骨が崩れ落ちた。
 ……外の世界以前に、俺ら雑魚スケルトンにとって安全なはずのダンジョンで死にかけているんだけど、これどうにかなるのかな。
 俺の戦いはこれからだ!とか言うべきか、これ?
 
 後日、腕はその辺に積み上げられていた骨を削って新しいのを作ってもらえました。
 やったぜ王様最高!
 でもあの豹には二度と近寄らない、絶対にだ!


END
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

もう死んでしまった私へ

ツカノ
恋愛
私には前世の記憶がある。 幼い頃に母と死別すれば最愛の妻が短命になった原因だとして父から厭われ、婚約者には初対面から冷遇された挙げ句に彼の最愛の聖女を虐げたと断罪されて塵のように捨てられてしまった彼女の悲しい記憶。それなのに、今世の世界で聖女も元婚約者も存在が煙のように消えているのは、何故なのでしょうか? 今世で幸せに暮らしているのに、聖女のそっくりさんや謎の婚約者候補が現れて大変です!! ゆるゆる設定です。

チート幼女とSSSランク冒険者

紅 蓮也
ファンタジー
【更新休止中】 三十歳の誕生日に通り魔に刺され人生を終えた小鳥遊葵が 過去にも失敗しまくりの神様から異世界転生を頼まれる。 神様は自分が長々と語っていたからなのに、ある程度は魔法が使える体にしとく、無限収納もあげるといい、時間があまり無いからさっさと転生しちゃおっかと言いだし、転生のため光に包まれ意識が無くなる直前、神様から不安を感じさせる言葉が聞こえたが、どうする事もできない私はそのまま転生された。 目を開けると日本人の男女の顔があった。 転生から四年がたったある日、神様が現れ、異世界じゃなくて地球に転生させちゃったと・・・ 他の人を新たに異世界に転生させるのは無理だからと本来行くはずだった異世界に転移することに・・・ 転移するとそこは森の中でした。見たこともない魔獣に襲われているところを冒険者に助けられる。 そして転移により家族がいない葵は、冒険者になり助けてくれた冒険者たちと冒険したり、しなかったりする物語 ※この作品は小説家になろう様、カクヨム様、ノベルバ様、エブリスタ様でも掲載しています。

私と母のサバイバル

だましだまし
ファンタジー
侯爵家の庶子だが唯一の直系の子として育てられた令嬢シェリー。 しかしある日、母と共に魔物が出る森に捨てられてしまった。 希望を諦めず森を進もう。 そう決意するシャリーに異変が起きた。 「私、別世界の前世があるみたい」 前世の知識を駆使し、二人は無事森を抜けられるのだろうか…?

王が気づいたのはあれから十年後

基本二度寝
恋愛
王太子は妃の肩を抱き、反対の手には息子の手を握る。 妃はまだ小さい娘を抱えて、夫に寄り添っていた。 仲睦まじいその王族家族の姿は、国民にも評判がよかった。 側室を取ることもなく、子に恵まれた王家。 王太子は妃を優しく見つめ、妃も王太子を愛しく見つめ返す。 王太子は今日、父から王の座を譲り受けた。 新たな国王の誕生だった。

狼の子 ~教えてもらった常識はかなり古い!?~

一片
ファンタジー
バイト帰りに何かに引っ張られた俺は、次の瞬間突然山の中に放り出された。 しかも体をピクリとも動かせない様な瀕死の状態でだ。 流石に諦めかけていたのだけど、そんな俺を白い狼が救ってくれた。 その狼は天狼という神獣で、今俺がいるのは今までいた世界とは異なる世界だという。 右も左も分からないどころか、右も左も向けなかった俺は天狼さんに魔法で癒され、ついでに色々な知識を教えてもらう。 この世界の事、生き延び方、戦う術、そして魔法。 数年後、俺は天狼さんの庇護下から離れ新しい世界へと飛び出した。 元の世界に戻ることは無理かもしれない……でも両親に連絡くらいはしておきたい。 根拠は特にないけど、魔法がある世界なんだし……連絡くらいは出来るよね? そんな些細な目標と、天狼さん以外の神獣様へとお使いを頼まれた俺はこの世界を東奔西走することになる。 色々な仲間に出会い、ダンジョンや遺跡を探索したり、何故か謎の組織の陰謀を防いだり……。 ……これは、現代では失われた強大な魔法を使い、小さな目標とお使いの為に大陸をまたにかける小市民の冒険譚!

お嬢様はお亡くなりになりました。

豆狸
恋愛
「お嬢様は……十日前にお亡くなりになりました」 「な……なにを言っている?」

幼妻は、白い結婚を解消して国王陛下に溺愛される。

秋月乃衣
恋愛
旧題:幼妻の白い結婚 13歳のエリーゼは、侯爵家嫡男のアランの元へ嫁ぐが、幼いエリーゼに夫は見向きもせずに初夜すら愛人と過ごす。 歩み寄りは一切なく月日が流れ、夫婦仲は冷え切ったまま、相変わらず夫は愛人に夢中だった。 そしてエリーゼは大人へと成長していく。 ※近いうちに婚約期間の様子や、結婚後の事も書く予定です。 小説家になろう様にも掲載しています。

処理中です...