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ゴブリン転生 1-7
しおりを挟む数日後、いつものように仕事をしていると、トレントさんがやって来た。
何かあったのかな?
「お疲れさま」
「何かあったのか?」
「明日、ネヴォラの友人が遊びに来ます。大変なことになるので、明日は菜園で働く者は全員回収に回ってください」
「は?」
「どういう事だ?」
「明日になれば分かります。では私は他の方に通達をしなければならないので、これで」
トレントさんは去って行き、残った俺達は首を傾げるしかなかった。
―――
翌日、俺たちはいつも通り菜園に来ていた。今のところ変化は見られない。
「今のところ何もないな?」
「ネヴォラの友達っていうならまだ子供だろう、飯を食ってから来るんじゃないか?」
「とりあえず様子見だな」
「まあそうだな」
しばらくすると、遠くから音が聞こえてきた。
何の音だろうと不思議に思って音の方へ近づいて行くと、どんどん大きくなっていく。…………あれか!?
ヒャッホオオオオオオ!!!!
キャーー!
イヤッフーー!!
野菜畑を抜け、田んぼが見える所までやってきたら、水田の上を小さな生き物たちが爆走していた。
「あれは!?ドラゴン!?」
「いや待て、あれ……」
「俺らの創造主じゃねぇか!」
そう、あれは俺達の生みの親、泥でフィギュアを作り、スライムで捏ね捏ねした子供たち!!
え、ちょっと待て。もしかして俺らの親って子供だったの!?すごく今更だけど!
「なんでこんなところに居るんだよ!!」
「ネヴォラの友達だったの!?」
俺達が混乱している間も子供たちの爆走は止まらない、泥を跳ね、稲を踏み倒し、カマキリの魔物をジャンプ台にしたりとやりたい放題。
ああ稲がだめに……なる処か実りも収穫も超え、俵になるってどういうこと!?
しかもカマキリの魔物が必死に回収したそばからまた実ってるし、何あれ悪夢?
俺らはそれを眺めながら立ち尽くしていることしか出来なかった。
「あ、だから回収」
「オイオイ、周りを見ろ」
「?」
「な、なんじゃこりゃぁ!」
そこにはもうじき収穫のナスがあったはずなのに、なぜかおやきが実っていた。
意味が分からない。
「おいお前ら、ボサッとしてないで回収しろ、あっという間に歩くところがなくなるぞ!」
「あ、ああ」
ミノタウロスの怒声に急き立てられ、状況を理解することを放棄してとにかく動き出した。
トマトはグラタンになってるし、胡瓜は浅漬けや漬物、ピーマンは肉詰め……あの子たちの影響なことだけは分かる。
「こっちのマジックバッグ満杯!」
「スライム使え、スライム! 畜生、腹が減る!」
豊作地獄はこの後、子供たちの昼食の時間まで続いた。
言ってもゆっくり休憩する時間などない、ひよこ豆のスープとひよこ豆のパンで体力と気力を無理やり回復させ、またすぐに働きだした。
何せ相手は子供、食事よりも遊ぶことが最優先。
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そんな祈りなど届くわけもなく、体力切れを知らないネヴォラと友達によっておやつの時間まで悪夢は続いた。
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