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三食昼寝、家族付き

第1097話

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 ボードゲームを使った魔力訓練は本日も続行ですよ。
 ディーの場外ホームランがどうにかなるまでは続けるみたい、魔力が暴発してもここならえっちゃんがいるから安心して訓練できるしね。

 ただアー君とネヴォラは山小屋でお勉強、邪神兄弟は平和を守るための各地巡回、タイガもアトリエに戻ったので、本日の参加者はディー、シャムス、涼玉、ゲストに春日さん!
 僕は参加できなくて拗ねてしまったアテナのご機嫌取りのため、甘やかしたり一緒にご飯作ったりしつつ、ゲームを見守ります。

「エンラも参加すると思ってた」
「あいつは重課金するタイプだからな、新作与えて来たから今日はこっちには来ない」

 今回渡したのはハッカーとエージェントに別れ、別画面で協力プレイする系のゲームらしく、今頃はこうちゃんを巻き込んでぎゃーぎゃーやっているだろうとのこと。
 こうちゃん、コウモリだけどどうやって協力プレイするんだろう。

「シャム兄と俺は普通に遊ぼう!」
『うん!』
「昨日削られたステータスを取り戻すぞー!」
『おー!』

 今日は邪神兄弟の妨害もないので、普通に遊ぶつもりの二人に対し、ディーはスパルタ指導官付きの訓練になります。
 実は春日さんを推薦したのは騎士様なんです、魔力と並列思考なら春日の得意分野だよ~と軽い調子で告げたのを聞き逃さなかったアー君により、ディーの先生を春日さんにお願いすることとなったんだ。

 山小屋に行く前に春日さんの持つ武器を見せてもらい、頬を染めて大興奮していた。
 僕にはつるんとした色とりどりの丸い玉にしか見えなかったけど、アー君達にはその価値は分かったみたいだったな、あれをどう武器に使うのかさっぱりわからない、投げるのかな?

「じゃあ鬼ごっこでもしようか」
「え」
「俺の駒が逃げるから、ディーは捕まえてみな」
「が、がんばる」
「初心者だからな、今回逃げるのは城下町に限定してやろう」
「はい」

 ディーが緊張しつつスタート地点に定められた噴水に駒を置き、春日さんの駒が一つ、二つと周囲に出現してゆく。
 え、一個じゃないの!?
 三つ、四つ、ええと五つ!?

「初めてだしこんなものか、指先をかすめるだけでも当たり判定にはカウントしてやる」
「え、え、え?」
「――行け」

 声と同時に五個の駒が一斉に街中に散会した。

「ほらどうした、一個ぐらい捕まえてみろ」
「は、はいっ! あ」

 力んで返事をしたせいで駒に送る魔力が暴発、場外に飛びそうになったのを春日さんの駒が飛び蹴りして阻止し、そのまま走り去った。
 え、普通に凄い。

「魔力を乱すな、常に一定の魔力を流すことを意識しろ」
「うぅ、はい」

 場外に飛ばないから休憩も挟めず、延々と駒を動かすことに集中させられている。
 しかも春日さんの駒はただ周囲で身を潜めているだけでなく、屋台で食事をしたり、フリーマーケットで売買したり、カフェで食事をしたりと意外と好き勝手に動いているんだよね。

「涼玉、マーケットで焚火台売ってたけどいるか?」
「いる!」
「シャムスにはスライムクッションかな」
『きゃー!』

 ディーに指導しながらも、幼児二人の相手も忘れない春日さんの横にいつの間にかアテナが座り、キラキラした目で春日さんを見上げている。

「アテナは何がいいかなー?」
「あぅあぅ!」
「人形かぁ、売ってるかな?」

 どうやら自分にも何か買ってくれとおねだりしに行ったようだ、でもゲームの中のアイテムだからアテナは受け取れないんじゃ…。

「どうせならアテナも参加するか、俺のを一個貸してやろう。スライムがぷにっと顔を出している部分に手を当てて」
「あぅ!」

 べちーーん!とアタックしたらほわんとスライムが光り、ジャンプしてボードの中に飛び込んでいった。

「これでアテナの命令を聞き入れるようになったから、好きに動いていいぞ」
「きゃー!」

 その場でジタバタしたあと、スラムに突撃して大暴れしていた。
 うちのアテナ、まさかの脳筋だったんですが。
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