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三食昼寝、家族付き

第1079話

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 晴れの休日、神に礼拝するために教会にやってきた帝国民は奇跡を目にした。

 帝国の休日は祈りから始まる。
 市民の数が多いため、煌びやかな教会内ではなく、教会前にある階段に教皇自らが立って礼拝を進める。

 もちろん、礼拝は教会内でと望む貴族もいるので、そちらはお高めの献金を支払えば貴族を優遇する司祭が礼拝をおこなってくれる。

 皇帝も敬虔な信徒の一人で、礼拝に参加する時は市民と同じく外で参加している。
 最初は一部貴族の嫌がらせで教会に入れなかったのだが、市民目線に立ってくれる皇帝として逆に名声を上げる結果となっていた。

 そしてこの日も教皇の祈りが終わり、街に賛美歌が響いたその時――空から美しき金の光をまとう一人の女神が祈りを捧げる若き皇帝の前に降り立った。

(イツキちゃん、イツキちゃん、皇帝めっちゃ若い!!)

 祭りで見ているはずが、大量発生したカップルのあれこれを覗き見することを優先した結果、若き皇帝の顔はスルーしていたらしい女神は心の中で動揺した。

(若い、若すぎる、どう見ても十代だろこれ、アルジュナ様、見た目の年齢差がキツイっす!!)

 それでも長年培った女神としての外面を保ち、慈悲深いと言われる微笑みを浮かべながら皇帝の前に台本通り降り立った。
 後ろでアルジュナとともに台本制作に勤しんだ教皇が、白々しく跪いて女神に礼をし、皇帝の前に女神が降り立った奇跡を民に説いている。

 空からは祝福の花が降り、日々の生活に不安を抱く人々の心の澱みをふわっと癒した。
 病を抱える者が触れれば苦痛が和らぎ、子供が欲しいと願う夫婦は子宝に恵まれまくり、金銭に困窮する者は突然労働意欲に目覚め、選民意識に凝り固まっていた偏屈貴族が「子供は宝」が口癖になったり、一部違う力も混ざった感じはあったけれど、誰も気付くことはなかった。

 皇帝の治世に女神自らが降臨し、輿入れするという奇跡に一気に帝国はお祭りムードになった。


 ――という話を女神様を送迎した騎士様と、婚姻が成立するのを見届けるために行っていたアー君から聞いているところです。

「ねぇ待って、一部、シヴァさんが混ざってない?」
「どこで混ざったのか俺らも分からない」
『混ざっちゃったの』
「効果が平和で良かった」

 貴族を優遇する司祭ってあの樽腹司祭さんだろうか、そういうの得意そうだし。

「でも無事に終わって良かったね」

 僕も見たかったけど、神秘的な空気が癒しの空気になってしまう可能性があるということで、留守番だったんだよねぇ。

「鈴が皇后かぁ、勤まるのかな?」
「刀雲から聞いた話だと、刀国では巫女長に憑依して政治参加もしていたみたいですし、多少は大丈夫だと思いますけど……基準が刀国だから心配ですね」
「ノリと勢いで政治やってる国だからなぁ、ここ」

 そしてノリと勢いで女神様を嫁に出したのもこの国です。
 国王様と王妃様は女神様が嫁に行くことを知り、良い冥土の土産が出来たと夫婦で泣いていたけど……あの夫婦ほど冥土が遠い夫婦もいないと思う。
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