上 下
1,020 / 1,127
三食昼寝、家族付き

第1009話

しおりを挟む
 ネヴォラの話を聞いて、初級ダンジョンにいるファンシーゴブリンに領地を与えてはどうかという話が浮上した。
 元々はダンジョンの基本モンスターとして、フィギュアから作られたゴブリンなのに領地の話が持ち上がるとは謎能力の影響が計り知れない。

 領地経営者が増えるかもしれないと、王宮から文官の一人が使者としてゴブリンの元に遣わされた。
 だけど、そんな大層なものはいらない、空間拡張すれば済む話だと追い返されたそうです。
 ヘラ母さんと仲が良いから、領地経営の苦労知ってるもんね。

 そこで引き下がったら刀国で役人なんてやってられない、追い出された足でギルドに駆け込み、執務室でギルド長と話し合いをしていたアー君に泣きついた。
 結果、新たな魔物が刀国に爆誕した。

「何がどうしてそうなったの?」
「いやぁ、せっかく始祖三神が揃ってるんだから、力を見てみたいなーって、パパにお願いしたら一発だったぞ!」

 騎士様は相変わらずアー君に激甘。
 前世から親子で、感動の再会をしたはずの双子は留学中、しかも帰宅しても恋人いるからパパは二の次。
 かぐやは政略結婚の駒としてドラグーン王国に嫁いで行ったから、親子の情が薄い。
 セティは似すぎていて可愛げがないとよく嘆いている、朱は前世からの縁があるけどすでに嫁いでいるし、エンラも中身が知り合いだから親子っぽい感じがしない、こうして挙げるとアー君に甘くなるのは仕方がないのかな? うーんどうだろう?

「罪人がたくさん手に入ったからな、それをカイが狩って、エンラが魂を回収、春日が新しい命として再生利用、しかもなんと器を用意したのは俺らのシャムス!」
『こねこねー!』
「そして誕生したのがこちら!」
「ウキーーー!!」

 幼児の紹介に一斉に両手を挙げたのは白い猿の集団。
 神様巻き込んで何やってるのうちの子達。

「こちら、ネヴォラのじいちゃんの手足となって働く魔物です! 天寿を全うしたら罪が赦されて来世はいいことあるようにおまけ付き!」
「しろてんぎゅー!」
「領主はなんと俺!」
「え?」
「イツキ殿、聞き間違いではありませんぞ。涼玉様が新領地の領主となられるのです」
「なんて!?」

 涼玉ちゃん貴方いくつ拠点を持つおつもり!?

「まぁグラとうちゃでもいいんだけどな、権力的に俺が領主の方が色々やりやすいってことでそーなった!」
「後ろ盾にアー君を筆頭とした兄弟が勢ぞろいしてるもんね」
「おう! 何も知らない人間が出来心で騙そうとしただけで保護者に訴えるぜ!」

 大丈夫なのだろうか、不安しかないよ涼玉。

「でも居住を移動するなら、お城の宝物庫は卒業するの?」
「あそこは寝床! 金銀財宝へのダイブは止められない」

 領主は涼玉、実務はドラゴン長老を中心とした群れの長、取り扱うものはゴブリンじいちゃんが欲しがった作物各種。
 作物を収穫するのはシャムス命名『白天狗』、神によって猿の魔物に転生させられた罪人、シャムスのスライムがベースとして使われたため、シャムスに絶対服従なうえに性欲が皆無。
 この女神様がエロを求めて作った世界で性欲ゼロ……悪いことはするもんじゃないね。

 マシュー君の領地の農民と違い、休みも娯楽も一切ないだけでなく、上位種であるドラゴンの監視付き。
 娯楽がないのは魔物しかいない領地だからという理由もあるらしいけどね、休みがないのも魔物に休日の概念がないからだったりして。

「奈落の底で苦行をさせてもいいけど、どうせなら労働力として使いたいなって。神の手足として役立てれば浄罪にもなるし、一石二鳥かなと」
『逃げるとね、罪が重くなっちゃうの』
「真面目に働けば来世でいいことあるし、頑張ってほしいよな」

 どんな良いことかちょっと聞いてみた。

「エロい嫁がもらえるとか」
「らっきぃすけべぇ」
「真面目に働いて伸びたスキルがちょっとだけ引き継げる」

 エロい効果はともかく、ステータス引き継ぎはいいね。

 ふと思ったんだ。
 始祖三神、必要だったんだろうか?
 シャムスがスライム作って、アー君がそこに罪人の魂ズボッてすれば良かったんじゃ?
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

完結・虐げられオメガ側妃ですが、敵国のイケメン王に味見されそうになっています、どうしたらいいですか?

美咲アリス
BL
虐げられオメガ側妃のシャルルは敵国への貢ぎ物にされた。敵国のアルベルト王は『人間を食べる』という恐ろしい噂があるアルファだ。けれども実際に会ったアルベルト王はものすごいイケメン。しかも「今日からそなたは国宝だ」とシャルルに激甘ボイスで囁いてくる。「もしかして僕は国宝級の『食材』ということ?」シャルルは恐怖に怯えるが、もちろんそれは大きな勘違いで⋯⋯? 虐げられオメガと敵国のイケメン王、ふたりのキュン&ハッピーな異世界恋愛オメガバースです!

精霊の港 飛ばされたリーマン、体格のいい男たちに囲まれる

風見鶏ーKazamidoriー
BL
 秋津ミナトは、うだつのあがらないサラリーマン。これといった特徴もなく、体力の衰えを感じてスポーツジムへ通うお年ごろ。  ある日帰り道で奇妙な精霊と出会い、追いかけた先は見たこともない場所。湊(ミナト)の前へ現れたのは黄金色にかがやく瞳をした美しい男だった。ロマス帝国という古代ローマに似た巨大な国が支配する世界で妖精に出会い、帝国の片鱗に触れてさらにはドラゴンまで、サラリーマンだった湊の人生は激変し異なる世界の動乱へ巻きこまれてゆく物語。 ※この物語に登場する人物、名、団体、場所はすべてフィクションです。

竜王陛下、番う相手、間違えてますよ

てんつぶ
BL
大陸の支配者は竜人であるこの世界。 『我が国に暮らすサネリという夫婦から生まれしその長子は、竜王陛下の番いである』―――これが俺たちサネリ 姉弟が生まれたる数日前に、竜王を神と抱く神殿から発表されたお触れだ。 俺の双子の姉、ナージュは生まれる瞬間から竜王妃決定。すなわち勝ち組人生決定。 弟の俺はいつかかわいい奥さんをもらう日を夢みて、平凡な毎日を過ごしていた。 姉の嫁入りである18歳の誕生日、何故か俺のもとに竜王陛下がやってきた!?   王道ストーリー。竜王×凡人。 20230805 完結しましたので全て公開していきます。

神獣様の森にて。

しゅ
BL
どこ、ここ.......? 俺は橋本 俊。 残業終わり、会社のエレベーターに乗ったはずだった。 そう。そのはずである。 いつもの日常から、急に非日常になり、日常に変わる、そんなお話。 7話完結。完結後、別のペアの話を更新致します。

転移したらなぜかコワモテ騎士団長に俺だけ子供扱いされてる

塩チーズ
BL
平々凡々が似合うちょっと中性的で童顔なだけの成人男性。転移して拾ってもらった家の息子がコワモテ騎士団長だった! 特に何も無く平凡な日常を過ごすが、騎士団長の妙な噂を耳にしてある悩みが出来てしまう。

華から生まれ落ちた少年は獅子の温もりに溺れる

帆田 久
BL
天気予報で豪雪注意報が発令される中 都内のマンションのベランダで、一つの小さな命が、その弱々しい灯火を消した 「…母さん…父さ、ん……」 どうか 生まれてきてしまった僕を 許して 死ぬ寸前に小さくそう呟いたその少年は、 見も知らぬ泉のほとりに咲く一輪の大華より再びの生を受けた。 これは、不遇の死を遂げた不幸で孤独な少年が、 転生した世界で1人の獅子獣人に救われ、囲われ、溺愛される物語ー

あと一度だけでもいいから君に会いたい

藤雪たすく
BL
異世界に転生し、冒険者ギルドの雑用係として働き始めてかれこれ10年ほど経つけれど……この世界のご飯は素材を生かしすぎている。 いまだ食事に馴染めず米が恋しすぎてしまった為、とある冒険者さんの事が気になって仕方がなくなってしまった。 もう一度あの人に会いたい。あと一度でもあの人と会いたい。 ※他サイト投稿済み作品を改題、修正したものになります

オッサン、エルフの森の歌姫【ディーバ】になる

クロタ
BL
召喚儀式の失敗で、現代日本から異世界に飛ばされて捨てられたオッサン(39歳)と、彼を拾って過保護に庇護するエルフ(300歳、外見年齢20代)のお話です。

処理中です...