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三食昼寝、家族付き

第952話

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 ピンクへの対策が立てられない限り、作業の手が止められる現状が変えられない。
 次見たら海に運ぶの大変だから火に放り込むのはどうだろう、と言った人は相当疲れていたんだろうな。

 そんな訳で広場の中央でキャンプファイヤー始めました。
 対策会議している間に日が暮れたので、このまま皆で夕食を取ることに。

「不思議なことに固まっている所には現れないね?」
『涼ちゃんのダンスパワーが炸裂してるの』

 キャンプファイヤーといえばダンス、そう、涼玉がとても張り切っています。

「なぁなぁ、これスピード速くないか!?」
「大丈夫ですぞ涼玉様、輝いています!」
『涼ちゃん頑張ってー!』

 曲名は有名な『マイム・マイム』、しかも僕の知っている曲調より少し早め。
 楽器は女神様の土下座付きでシャムスに奉納された日本の古典楽器、尺八、三味線、琴、しょう、琵琶などなど……いやね、女神様にご機嫌取るなら何がいいか聞かれて、楽器とは答えたよ? でもちょっと楽器の種類が古過ぎませんか?
 ここ異世界だし、せめてハープとか。相変わらず色気のない人だなぁ。

 僕も好奇心から尺八借りて吹いてみたんだけどね、普通に肺活量足りなかったです。
 でも三味線はちょっとだけ音っぽいもの出せたかな、ド素人の僕でも素晴らしい音だったよ、さすが神の楽器、技量が届かなくても一音、一音が天上の音だった。

 うちの子の娯楽に巻き込まれ、神気を直接浴びたり内に取り込んだ街の人達、神の楽器を扱えるレベルまで魂が磨かれていた。
 BGMも当然街の人達が演奏してくれているんですよね、相変わらずツッコミが追い付かないや。

 子供達もきゃぁきゃぁ言いながら、涼玉とともに炎の周りを跳んだり跳ねたり楽しそう。
 ある意味、現代ダンスと古典楽器のコラボと言えなくもない、リクエストした誰かも笑って許してくれるだろう、うん。
 炎の音や笑い声が響く中、誰の耳にも音が渡るあたりさすが神の楽器!

「つ、疲れた! さすがに疲れた! 補給!」
「涼玉様さすがです!」

 踊り疲れた涼玉がフラフラになりながら戻ってきた。
 すかさずマールスが抱き上げて回収、席に戻ると串焼きを取り出して涼玉に食べさせている。

「肉うまー、肉ー」
『いっぱい食べてね』
「今日のピンクラッシュは悪夢だったねー、明日もあるのかな?」
「女神殿は反省していた様子ですし、マシになるといいですな」

 キャンプファイヤーは厄払いも兼ねているらしいですが、上手くいくといいなー。
 何せ相手は世界を包む妄想力の持ち主だからねぇ。

「あーー!! ママったらこっちにいたの!」
「アー君」
「もぅ! 実家に帰っても三人ともまだ帰ってないから驚いた!」
「胃が痛い、疲れた、船はもう嫌だ」
「ただいま」

 駆け寄って来たアー君の後ろには、黒豚君とラミア、その他一緒に船に乗った人達がいた。
 黒豚君とラミアちゃん以外はお酒と食べ物の匂いにフラフラと散っていく。

「途中で帰って来たの?」
「ううん、ヨムが送迎してくれたから、海が忖度してありえない速度で往復した」

 通常の航海ってどのくらいの予定だったんだろうか、黒豚君お疲れ様でした。
 留守中に起こった出来事の報告で胃に穴が開くかもしれないけど強く生きてね?
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