上 下
953 / 1,127
三食昼寝、家族付き

第942話

しおりを挟む
 チラッと思うことも僕は許されないのでしょうか。

 ギルドからバーベキュー会場に戻りながら、そら豆と枝豆に続き、ひよこ豆も栽培することになった黒豚君達に、つい「豆が特産品になりそうな勢いだね」と声をかけただけなんだ。
 そしたらさぁ海辺から悲鳴が聞こえて、何事だとアー君の転移で飛んだんだよ。

 そこで見た光景にはもう笑うしかなかった。
 あっちの豆、こっちの豆、さらに刀国の冒険者がデザートに食べていた小豆から珈琲豆、大豆、落花生など食べるために加工されていたそれらが爆発して、地面に落ちたと思ったらその場で実っていたんだ。

 涼玉曰く、豆が我こそはと思って自己主張したことによって起きた喜劇。だそうです。
 なにそれそんな主張いらないんだけど!

 僕、冒険者にめっちゃ怒られました。
 アー君が春日さんの茶屋で使える食事券を配ってくたので許してもらえたけどね、笑いすぎてちょっと涙浮いてた。

 謎能力さん、君何してくれてるの!?
 ご縁は無理矢理作らなくていいんだよ?

「土壌が……栄養が……」
「明日は植え替えで終わりそうですね」

 黒豚君が泣いている。
 おっちゃんは遠い目をしている。

「仕方ない、と、特別、サービス、ふへ」

 何か言おうとしているアー君だけど、視界に映る豆たちを見るたびに笑いがこみあげているようだ。

『涼ちゃんもうひと頑張りよ』
「今日の俺、スターかな?」
「夕食は豪勢にしましょうぞ!!」

 今度は何が始まるんだろうか、あまりアー君を追い詰めないであげてね、笑いすぎて呼吸困難おきかけてるんだよ。

「ふんふんっ!」

 マールスに下におろしてもらった涼玉が、軽く屈伸をして身体を解すと波打ち際まで移動した。

「へいラミア、お歌!」
「はい」

 なんかラミアちゃんが歌を歌い始めた。
 この透き通った感じの歌ってまさか……歌に合わせて涼玉がまた踊りを始めたんだけど、あれって盆踊りじゃなくてフラダンスだったの!?

「ママ、ほら見て」
『すごいでしょ』

 僕はもう何に驚けばいいのか。
 刀雲と騎士様呼んできて巻き込みたい思いでいっぱいです。

 踊りに合わせてゆっくりと移動を始める植物たち、チラッと黒豚君を見たら顎が外れそうなほど口を開けて驚いていた。
 貴族って表情を出さない生き物じゃなかったっけ? 神様相手には無理かー。

 夕焼けを背に踊るドラゴンの赤ちゃん。
 神秘的な光景と感動すればいいのか、うちの子可愛いで全てを受け入れるべきか迷う。

 踊りが終わる頃には各種豆はそれぞれ寝床を見つけて落ち着いていたので、明日の労働は一つ減ったと言っていいだろう。
 地球でも歴史ある神聖な踊りなので、現地の方々も覚えて踊ればいいと思う。

 OK、特にこれと言って問題はない。
 うちの子可愛い、すごい、すごい。
 
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

騙されて快楽地獄

てけてとん
BL
友人におすすめされたマッサージ店で快楽地獄に落とされる話です。長すぎたので2話に分けています。

【完結】伴侶がいるので、溺愛ご遠慮いたします

  *  
BL
3歳のノィユが、カビの生えてないご飯を求めて結ばれることになったのは、北の最果ての領主のおじいちゃん……え、おじいちゃん……!? しあわせの絶頂にいるのを知らない王子たちが吃驚して憐れんで溺愛してくれそうなのですが、結構です! めちゃくちゃかっこよくて可愛い伴侶がいますので! 本編完結しました! 時々おまけを更新しています。

王子なのに戦場の聖域で好き勝手ヤってたら獣人に飼われました

サクラギ
BL
戦場で共に戦う者たちを慰める場所、聖域がある。そこでは国も身分も関係なく集うことができた。 獣人と戦士が書きたいだけで始めました。独りよがりなお話をお許し下さいます方のみお進みください。

田舎育ちの天然令息、姉様の嫌がった婚約を押し付けられるも同性との婚約に困惑。その上性別は絶対バレちゃいけないのに、即行でバレた!?

下菊みこと
BL
髪色が呪われた黒であったことから両親から疎まれ、隠居した父方の祖父母のいる田舎で育ったアリスティア・ベレニス・カサンドル。カサンドル侯爵家のご令息として恥ずかしくない教養を祖父母の教えの元身につけた…のだが、農作業の手伝いの方が貴族として過ごすより好き。 そんなアリスティア十八歳に急な婚約が持ち上がった。アリスティアの双子の姉、アナイス・セレスト・カサンドル。アリスティアとは違い金の御髪の彼女は侯爵家で大変かわいがられていた。そんなアナイスに、とある同盟国の公爵家の当主との婚約が持ちかけられたのだが、アナイスは婿を取ってカサンドル家を継ぎたいからと男であるアリスティアに婚約を押し付けてしまう。アリスティアとアナイスは髪色以外は見た目がそっくりで、アリスティアは田舎に引っ込んでいたためいけてしまった。 アリスは自分の性別がバレたらどうなるか、また自分の呪われた黒を見て相手はどう思うかと心配になった。そして顔合わせすることになったが、なんと公爵家の執事長に性別が即行でバレた。 公爵家には公爵と歳の離れた腹違いの弟がいる。前公爵の正妻との唯一の子である。公爵は、正当な継承権を持つ正妻の息子があまりにも幼く家を継げないため、妾腹でありながら爵位を継承したのだ。なので公爵の後を継ぐのはこの弟と決まっている。そのため公爵に必要なのは同盟国の有力貴族との縁のみ。嫁が子供を産む必要はない。 アリスティアが男であることがバレたら捨てられると思いきや、公爵の弟に懐かれたアリスティアは公爵に「家同士の婚姻という事実だけがあれば良い」と言われてそのまま公爵家で暮らすことになる。 一方婚約者、二十五歳のクロヴィス・シリル・ドナシアンは嫁に来たのが男で困惑。しかし可愛い弟と仲良くなるのが早かったのと弟について黙って結婚しようとしていた負い目でアリスティアを追い出す気になれず婚約を結ぶことに。 これはそんなクロヴィスとアリスティアが少しずつ近づいていき、本物の夫婦になるまでの記録である。 小説家になろう様でも2023年 03月07日 15時11分から投稿しています。

誰よりも愛してるあなたのために

R(アール)
BL
公爵家の3男であるフィルは体にある痣のせいで生まれたときから家族に疎まれていた…。  ある日突然そんなフィルに騎士副団長ギルとの結婚話が舞い込む。 前に一度だけ会ったことがあり、彼だけが自分に優しくしてくれた。そのためフィルは嬉しく思っていた。 だが、彼との結婚生活初日に言われてしまったのだ。 「君と結婚したのは断れなかったからだ。好きにしていろ。俺には構うな」   それでも彼から愛される日を夢見ていたが、最後には殺害されてしまう。しかし、起きたら時間が巻き戻っていた!  すれ違いBLです。 初めて話を書くので、至らない点もあるとは思いますがよろしくお願いします。 (誤字脱字や話にズレがあってもまあ初心者だからなと温かい目で見ていただけると助かります)

転生したら魔王の息子だった。しかも出来損ないの方の…

月乃
BL
あぁ、やっとあの地獄から抜け出せた… 転生したと気づいてそう思った。 今世は周りの人も優しく友達もできた。 それもこれも弟があの日動いてくれたからだ。 前世と違ってとても優しく、俺のことを大切にしてくれる弟。 前世と違って…?いいや、前世はひとりぼっちだった。仲良くなれたと思ったらいつの間にかいなくなってしまった。俺に近づいたら消える、そんな噂がたって近づいてくる人は誰もいなかった。 しかも、両親は高校生の頃に亡くなっていた。 俺はこの幸せをなくならせたくない。 そう思っていた…

黒豹拾いました

おーか
BL
森で暮らし始めたオレは、ボロボロになった子猫を拾った。逞しく育ったその子は、どうやら黒豹の獣人だったようだ。 大人になって独り立ちしていくんだなぁ、と父親のような気持ちで送り出そうとしたのだが… 「大好きだよ。だから、俺の側にずっと居てくれるよね?」 そう迫ってくる。おかしいな…? 育て方間違ったか…。でも、美形に育ったし、可愛い息子だ。拒否も出来ないままに流される。

男装の麗人と呼ばれる俺は正真正銘の男なのだが~双子の姉のせいでややこしい事態になっている~

さいはて旅行社
BL
双子の姉が失踪した。 そのせいで、弟である俺が騎士学校を休学して、姉の通っている貴族学校に姉として通うことになってしまった。 姉は男子の制服を着ていたため、服装に違和感はない。 だが、姉は男装の麗人として女子生徒に恐ろしいほど大人気だった。 その女子生徒たちは今、何も知らずに俺を囲んでいる。 女性に囲まれて嬉しい、わけもなく、彼女たちの理想の王子様像を演技しなければならない上に、男性が女子寮の部屋に一歩入っただけでも騒ぎになる貴族学校。 もしこの事実がバレたら退学ぐらいで済むわけがない。。。 周辺国家の情勢がキナ臭くなっていくなかで、俺は双子の姉が戻って来るまで、協力してくれる仲間たちに笑われながらでも、無事にバレずに女子生徒たちの理想の王子様像を演じ切れるのか? 侯爵家の命令でそんなことまでやらないといけない自分を救ってくれるヒロインでもヒーローでも現れるのか?

処理中です...