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三食昼寝、家族付き

第931話

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 そして翌週。
 学園の生徒第一弾がやって参りました。

 カトブレパス2頭とコモドドラゴン数頭、半馬半魚の海馬ヒッポカムポスを一群れも一緒です。

「緊張する」

 学生の護衛として雇われた冒険者に隠れるようにいたのは、神薙神社の境内にあるケバブ屋の看板熊さん。
 冒険者を雇おうとアー君が声を掛けたところ、屋台の一つもない所に行きたくないと言われたので、刀国の人気店から数人弟子を借りて出張してもらったんだよね。

 カトブレパスにビビりながらも街を代表して挨拶しているのは、アー君達に追い掛け回されたあのおっちゃんです。
 僕らに声をかけようとしたのもカツアゲや人攫いが目的ではなく、「こんな掃きだめ子供が来たら危ないから帰りなさい」的な忠告をするためでした。
 アー君は分かっていて遊んでいた気もする。
 そしてお詫び代わりに街のまとめ役に任命、本人はお詫びになってないと泣いていました。
 でも逃げずにキチンと役目を果たす真面目なおっちゃんです。

「カトブレパスは石造り開始ー、コモドドラゴンは冒険者と一緒に生徒の護衛、ヒッポカムポスはヨムの指示に従えー、生徒は一人で行動しないように、身の安全は一切保証しないからなー」
「保証してくださーい」
「安全性は大事だと思いまーす」
「常に複数人で行動すれば大丈夫だって、ルールを守らない奴は知らん」

 ブーイングする生徒を無視して話を続けるアー君。
 なんで幼児が仕切ってるんだろうか、そして魔物さんたちは労働要員なんです。地元民に刀国方式叩きこむつもりだね。

「それでも不測の事態ってのは発生するからな、その時はシヴァでも邪神兄弟でも好きな方に助けを求めろ、一つ助言するなら邪神兄弟に助けを求めるのがお勧めだ」
「え、なんで?」
「シヴァさん優しいのにね?」
「結果として起こる悲劇は変わらないが、シヴァは対価が発生するのに対し、邪神兄弟は妹のための労働だから対価は発生しない。あと俺の心労負担が全く違う。ああそうそう、今回手伝いを申し出てくれた冒険者には特別報酬出るから」
『報酬はなんと!』
「神薙神社でしか手に入らないお守り!」

 涼玉の一言に冒険者の空気が殺気立った。
 一人が質問のために手を挙げた。

「噂のあの神薙様の御守りも入ってますか!?」
「おう」
『縁結びは多めに用意されたの』
「数が足りなそうだから俺ら兄弟も御守り作って入れといた」
「「うおおおおおおお!!」」

 雄叫びを上げる冒険者、肩にスライムを乗せている人も数人いる。
 可愛がってもらっているようで、飼い主の雄叫びに合わせるようにぷるぷる震えていて可愛い。

「報酬欲しければ働けー、ほら散った散った」
「「はい!!」」

 開始の合図とともにカトブレパスが用意された木の板を石化させ、ある程度量が溜まったら学生と冒険者が回収する。
 これらはまず道路を作るのに使用予定、他にも外壁や家の壁などを作るんだって。
 石板を量産しているこちらのカトブレパス、迷宮都市で大活躍している子で、市民にも親しまれているのでとても毛並みが良い。

 コモドドラゴンはもちろんマシュー君の所の子、騎士様に強化されているので地球に生息するコモドドラゴンより素早いし狂暴、人語も理解するぐらい賢く、そろそろ空を飛んでも驚かない。
 雑食なので大きな魔物から疫病を運ぶネズミまで何でも食べる。今回お手伝いを頼むにあたり、シャムスがよしよししているので張り切ってます。

 そして最後、半馬半魚の海馬ヒッポカムポスの役割は食料調達。
 ヨムちゃんと海に行って漁をしまくるのがお仕事です、どんな大型魔物が出現しても大丈夫、刀国で修行を積んだ彼らなら美味しく調理できる。

「じゃあシャムス、涼玉、僕らは軽くお散歩してから帰ろうか」
「あい」
「おー!」

 海の冷たい風で体が冷えたら大変だから散歩は少しだけ。と主張したのは騎士様です、あの人どんどん過保護になっている気がする。
 浜辺で焼くお魚、食べたかった。
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