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三食昼寝、家族付き

第891話

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 ボスがいる場所なのに気配を消すでもなく、殺気も闘志も持たず、賑やかにやってきた団体さんはムキムキ女戦士、伝説の剣を始めとしたキラキラ装備の女勇者、柔らかい雰囲気の聖職者、あっはーんな感じのスタイルの良い魔法使いのお姉さんの四人で編成されたパーティーだった。

 しかも!
 なんと!

 一番やんわりとした雰囲気の聖職者、男性でした。

「あらあら随分と雰囲気が変わっていますねぇ」

 聖職者の人は見た目通りおっとりした喋り方、見事な薔薇園を見渡しながら薔薇のお風呂に入りたいですねぇと呟いている。
 これで中身がカイちゃんみたいな破壊魔だったら泣ける。

「あのリッチの言ってた話は本当だったみたいだな、しかもこれ、アルジュナ様だろ」

 戦士のお姉さんはチャウチャウを片手でつまみ上げ、もう片手であごの下をもふもふ。
 やや乱暴なもふりっぷりだけど、気持ちよいのかチャウチャウはうっとりしている。

「マジ可愛い」

 勇者のお姉さんはもふもふ人形のお腹に顔を埋めたっきり動かない。

「うふふぬいぐるみ、嫌いじゃないわ」

 あっはーんなお姉さんは戦士のお姉さんが持っているチャウチャウを見つめながらうっとり。

 このパーティー、大丈夫なのだろうか。
 いや、ここまでほぼケガもなく来たから実力はあるんだろうけれど。

「ボスはお前でいいか? なぁこいつ連れ帰っていい? うちのパーティーのマスコットにしたい」
「姉御最高」
「賛成だわ」
「素晴らしいです」

 姉御と呼ばれた戦士のお姉さんがリーダーなのだろうか、ボス相手に交渉を始めた。

「オレノ」
「可愛がるから!」
「愛でる」
「ケガ一つさせないわ」
「お約束します」

 これがボス戦?
 いや違うだろ。

「ウゥ」
「ぷるぅん」

 交渉にスライムが乱入した!
 ……どこから沸いた?

 ぷるぷると必死に説得するスライム、ボスは唸りながらも話を聞いてる。

 スライムがシャドーボクシングを始めた。
 無謀な条件を挙げているのは気のせいだろうか。

「ソレデイイ」
「ぷるる!」

 交渉が終わったらしく、ボスが姉御たちを見た。

「オレノ攻撃、受ケレタラ連レテイッテイイ」
「よっしゃ、任せた!」
「楽勝、任せて、スラおいで」
「じゃあいつものお願いねぇん」
「はい」

 僕と執事はスルーされているけれど部下と思われているのだろうか?
 いや待てよ、もしや新作ポンチョって認識阻害も付いてたりするのかな?

 交渉していたスライムがキラキラ装備のお姉さんの手元に戻ると、一瞬で大盾に姿を変えた。
 あのスライム……もしやシャムスの?

 お姉さんが前に出て盾を構えると、聖職者のお兄さんが杖を掲げた。

「身体強化」

 杖を掲げたのに手が光ったのはなぜでしょう。

「いつでも来るといい、必ず受け止めてもふもふを連れて帰ってもふる!」
「名前何にする?」
「アル様にしましょう」
「いいですねぇ」
「オオオオオオ!!」

 大地を揺るがす咆哮とともにボスがキラキラ装備のお姉さんに殴り掛かった!

 ぽよ~ん

 だが気の抜ける効果音とともにボスが跳ね返って地面に倒れた!

 ……どっかで見たことある光景だなぁ。
 あとあの弾力性、間違いない、シャムスのスライムだ。

「ぐ、ぐぐぐ」
「さすがスラ!」
「愛してる」
「お仕事終わったらご褒美ね」
「マスコットが増えましたねぇ」

 悔しそうなボスを尻目にきゃっきゃと楽しそうなお姉さんたち、いや、一人男だった。
 違和感ないな。

「よしボスを倒したからアル様はこれで私達の家族だぜ!」
「マジ天使」
「添い寝は日替わりにしましょうね」
「これもシャムス様のお導き、尊いです」

 こうしてチャウチャウは里子に出された。
 ……もしやこれも謎能力がもたらした運命の出会いだったりする?
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