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三食昼寝、家族付き
第875話
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出来上がったお餅が次々と丸く丸められていく。
「じいちゃん出来た」
「その調子で頑張んな」
「おー!」
普段からお手伝いをしているのか、ネヴォラの手付きが意外と手馴れているんです。
「うまそー」
『一個だけ』
「そーっと、そーっと」
「こういうのは黙ってやらなきゃ」
「ダメです」
「ッシャ!」
机の上に並べられた出来立ての餅をつまみ食いしようと忍び寄ったのはうちの幼児と青、阻止したのは朱とえっちゃん。
「私の目が黒いうちは盗み食いはさせません」
「朱の目は黒くないだろー!」
「えっちゃんが私の目です」
「キキキ」
平和な攻防が繰り広げられている間も餅はドンドン出来上がっている。
陽気な獣人団とゴブリン集団、どちらも連携が取れていて動きに無駄がないんだよね~。
「青ちゃんほら、口開けて」
「!!」
「狐が自分の番だけ甘やかしてるー!」
『ずりゅいのー』
「マールス!」
「無理ですすみません!」
さすがのマールスも神薙さんを差し置いて涼玉を甘やかすことはできないようです。
返答しながらも杵を打ち下ろす手は止めない、影絵練習を通して培われた友情のおかげかとても呼吸が合っているようです。
ん?
えっちゃんはマールスと餅つきしてるね、じゃあ朱と一緒になって餅を監視しているあちらのえっちゃんはどなた?
あれ、蒸された餅米を臼に移してるのもえっちゃん、お酒を飲み始めたレイアさんと神薙さんの相手をしているのもえっちゃんだね。
「えっちゃん今何体に別れてるの?」
「キ!」
十と返答があった。
そのうち一つは僕の影にいたらしく、影がうにょっと動いて手を振ってくれた。
そう言えば最近、うちのわんこ兄弟が僕の影に向かってわぅわぅ語りかけることがあったんだけど……あれはもしやえっちゃんとお喋りしていたのかな?
確かに影に入っていれば、また召喚に巻き込まれても大丈夫だね。
「朱は無茶してない?」
ジェスチャーでお喋りしていたえっちゃんが僕が問いかけた瞬間、影の中にひゅっと消えてしまった。
無茶、してるんですね。
「樹」
「騎士様お疲れ様です、もう餅つきはいいんですか?」
「あとは刀雲に任せる」
疲れたーと言って騎士様が縁側に腰かけたので、さつま芋をスライスして揚げたチップを煎茶を添えてお出ししてみました。
「ありがと、はー手加減するって疲れるねぇ」
「例年のお約束を計算に入れて、ドリちゃんが臼を量産してあるので大丈夫ですよ」
「破壊すること前提なんだねー」
あははーと空笑いした騎士様だけど、その横顔は穏やかでとても幸せそうだった。
「ねぇ樹」
「はい」
その一言は突然何の前触れもなく放たれた。
「俺と家族にならない?」
「いいですよ」
「そうだよね、こんないきなり言っても――ええええ??」
「餅一個食べたいって言われるかと思った。なぁんだ」
「え、っちょ、え?」
「今日はお赤飯にしましょうね、アーくーん」
「おう! 餅食べていい!?」
「騎士様に家族になろうって言われたよ~」
「ひゅーーー!!」
『ヘタレ頑張ったのー』
「赤飯だ、あれって餅米? とにかくお祝いだー!」
戸惑う騎士様を置いてきぼりにして、お屋敷全体がお祝いムードになった。
「え、なんでこんなあっさり受け入れられてるの!? 俺色々葛藤したのに!」
「同じ屋根の下で暮らしているし、ご飯も一緒に食べていますし、すでに家族のようなものですよ」
僕が何人貴方の御子を産んだと思っているんですか、正式に家族になるからには家族サービスも頑張ってくださいね!
アー君を甘やかすだけじゃなく、諫めるのも父親の仕事ですよ!
「じいちゃん出来た」
「その調子で頑張んな」
「おー!」
普段からお手伝いをしているのか、ネヴォラの手付きが意外と手馴れているんです。
「うまそー」
『一個だけ』
「そーっと、そーっと」
「こういうのは黙ってやらなきゃ」
「ダメです」
「ッシャ!」
机の上に並べられた出来立ての餅をつまみ食いしようと忍び寄ったのはうちの幼児と青、阻止したのは朱とえっちゃん。
「私の目が黒いうちは盗み食いはさせません」
「朱の目は黒くないだろー!」
「えっちゃんが私の目です」
「キキキ」
平和な攻防が繰り広げられている間も餅はドンドン出来上がっている。
陽気な獣人団とゴブリン集団、どちらも連携が取れていて動きに無駄がないんだよね~。
「青ちゃんほら、口開けて」
「!!」
「狐が自分の番だけ甘やかしてるー!」
『ずりゅいのー』
「マールス!」
「無理ですすみません!」
さすがのマールスも神薙さんを差し置いて涼玉を甘やかすことはできないようです。
返答しながらも杵を打ち下ろす手は止めない、影絵練習を通して培われた友情のおかげかとても呼吸が合っているようです。
ん?
えっちゃんはマールスと餅つきしてるね、じゃあ朱と一緒になって餅を監視しているあちらのえっちゃんはどなた?
あれ、蒸された餅米を臼に移してるのもえっちゃん、お酒を飲み始めたレイアさんと神薙さんの相手をしているのもえっちゃんだね。
「えっちゃん今何体に別れてるの?」
「キ!」
十と返答があった。
そのうち一つは僕の影にいたらしく、影がうにょっと動いて手を振ってくれた。
そう言えば最近、うちのわんこ兄弟が僕の影に向かってわぅわぅ語りかけることがあったんだけど……あれはもしやえっちゃんとお喋りしていたのかな?
確かに影に入っていれば、また召喚に巻き込まれても大丈夫だね。
「朱は無茶してない?」
ジェスチャーでお喋りしていたえっちゃんが僕が問いかけた瞬間、影の中にひゅっと消えてしまった。
無茶、してるんですね。
「樹」
「騎士様お疲れ様です、もう餅つきはいいんですか?」
「あとは刀雲に任せる」
疲れたーと言って騎士様が縁側に腰かけたので、さつま芋をスライスして揚げたチップを煎茶を添えてお出ししてみました。
「ありがと、はー手加減するって疲れるねぇ」
「例年のお約束を計算に入れて、ドリちゃんが臼を量産してあるので大丈夫ですよ」
「破壊すること前提なんだねー」
あははーと空笑いした騎士様だけど、その横顔は穏やかでとても幸せそうだった。
「ねぇ樹」
「はい」
その一言は突然何の前触れもなく放たれた。
「俺と家族にならない?」
「いいですよ」
「そうだよね、こんないきなり言っても――ええええ??」
「餅一個食べたいって言われるかと思った。なぁんだ」
「え、っちょ、え?」
「今日はお赤飯にしましょうね、アーくーん」
「おう! 餅食べていい!?」
「騎士様に家族になろうって言われたよ~」
「ひゅーーー!!」
『ヘタレ頑張ったのー』
「赤飯だ、あれって餅米? とにかくお祝いだー!」
戸惑う騎士様を置いてきぼりにして、お屋敷全体がお祝いムードになった。
「え、なんでこんなあっさり受け入れられてるの!? 俺色々葛藤したのに!」
「同じ屋根の下で暮らしているし、ご飯も一緒に食べていますし、すでに家族のようなものですよ」
僕が何人貴方の御子を産んだと思っているんですか、正式に家族になるからには家族サービスも頑張ってくださいね!
アー君を甘やかすだけじゃなく、諫めるのも父親の仕事ですよ!
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