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女神の呪い
第858話
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中級ダンジョンで開催されるチーズ祭りは二日間。
祭りを前にあちこちで冒険者達が臨時パーティーを結成、連携を確認するため初級、中級ダンジョンに通ったり、装備やアイテムの確認をしたりと余念がない。
何せ今回は鴨祭りとは違いチーズのレシピが出回っている。
参加する全ての人間が一欠けらでも多くチーズを手に入れようと本気モードらしい、神薙さんも譲るつもりはない――と宣言するぐらい皆さん真剣だと偵察から帰ったアー君が教えてくれた。
「明日のダンジョン攻略に向けて神社が大賑わい、お守りやポーション類が飛ぶように売れてるって」
『孤児院うはうは』
「ぼろ儲けするチャンスだもんな、祭りが終わるまで絶対外出しない」
敷地から出て孤児院関係者に見つかったら最後、連行されてポーションが完売するまでおまけの製造を強要されると涼玉が怯えてマールスにしがみついている。
「にいちゃが無事に帰宅できたのは奇跡」
「隠ぺい魔法使ったからな」
アー君が知らないうちに新しい魔法を取得していた。
「朱に習った」
「教えがいがあって楽しいです」
『朱ちゃんすごいねぇ』
「わたしも、わたしも褒められたい」
「青は俺と一緒に魔力操作頑張ろーな」
マールスから離れた涼玉がいそいそと双六を取り出している。
部屋を占領するほどの巨大タイプではなく、縦横30cmほどのものでマスも駒も小さいため、精密な魔力操作が必要になるとかなんとか。
駒はあえて脆い素材を使っているので、涼玉の力加減のトレーニングにも最適。
「これ苦手」
「俺もー」
『頑張ってね』
「朱、庭で釣りやろう」
「いいですね、今日こそ1m級を狙いたいものです」
それぞれの遊びに散会する子供達。
ちなみに三匹とイネスは縁側のクッションコーナーで団子になってずっと寝てます。
「そういえば朱」
「はい?」
「朱は学園通うのか?」
朱用の釣り竿を選びながらアー君がそう朱に尋ねた。
「学園?」
「奨学金という名のご褒美を奪い合う教育機関」
「涼玉、それはちょっと大げさだろ」
『大げさ?』
「いや、どうだろ?」
学費も食費も無料なのに奨学金制度あるの!?
そっちの方が驚きだよ。
「私、目が見えないけど通えるの?」
「通えるぞ。孤児院の人間に金を積めばどこの王族だよってぐらい丁寧に面倒見てくれるぞ」
「専属に雇うんじゃなくて?」
「雇ってもいいけど、結局その人間も孤児院の人間な気がする」
『どこにでもいるのよ』
「むしろあいつらの関係者がいない職場ってあるのか?」
涼玉の疑問は僕もちょっと思ったことある。
「段差があっても朱なら探索の応用でどうにでも出来るだろ」
「うん……なら、通ってもいいなら、通ってみたい、かな?」
「待って! もうちょっと待って! 魔力安定させるから!」
朱の言葉に待ったをかけたのは青だった。
相変わらず魔力が不安定で暴走しかけることもあるんだよね、朱かアー君が常にそばにいて大事に至ったことはないけど。
「そうだなぁ、青はあれだ。一回孤児院に放り込んで荒波に揉ませるか?」
「やだ怖い! ネヴォラと仲良くするから怖いの嫌!」
「大丈夫だよ青、青がちゃんと魔力操作出来るようになるまで待つから」
「朱!!」
「でも朱ってどっちかというと講師の方が合ってそうだけどな」
「ねぇみんな、ならさ青に朱が魔力操作を教えるのはダメなの?」
教えるのが上手なら教えればいいのに、と不思議に思いながら聞いたら全員から首を振られた。
クッションコーナーにいるもふもふ兄弟も一緒に首を振っている。可愛い。
「朱は、青に甘いんだ」
『飴とキャンディーしかないの』
「間違ってても事実を捻じ曲げて正解にする」
「間違っているのは青ではなく世の中です」
「こんな感じでダメ教師だから頼れない」
朱ちゃん、とんでもない欠点抱えてた!
間違っているのは世の中ってどんな屁理屈!?
騎士様、貴方のお子様が過激ですけど大丈夫ですかー?
祭りを前にあちこちで冒険者達が臨時パーティーを結成、連携を確認するため初級、中級ダンジョンに通ったり、装備やアイテムの確認をしたりと余念がない。
何せ今回は鴨祭りとは違いチーズのレシピが出回っている。
参加する全ての人間が一欠けらでも多くチーズを手に入れようと本気モードらしい、神薙さんも譲るつもりはない――と宣言するぐらい皆さん真剣だと偵察から帰ったアー君が教えてくれた。
「明日のダンジョン攻略に向けて神社が大賑わい、お守りやポーション類が飛ぶように売れてるって」
『孤児院うはうは』
「ぼろ儲けするチャンスだもんな、祭りが終わるまで絶対外出しない」
敷地から出て孤児院関係者に見つかったら最後、連行されてポーションが完売するまでおまけの製造を強要されると涼玉が怯えてマールスにしがみついている。
「にいちゃが無事に帰宅できたのは奇跡」
「隠ぺい魔法使ったからな」
アー君が知らないうちに新しい魔法を取得していた。
「朱に習った」
「教えがいがあって楽しいです」
『朱ちゃんすごいねぇ』
「わたしも、わたしも褒められたい」
「青は俺と一緒に魔力操作頑張ろーな」
マールスから離れた涼玉がいそいそと双六を取り出している。
部屋を占領するほどの巨大タイプではなく、縦横30cmほどのものでマスも駒も小さいため、精密な魔力操作が必要になるとかなんとか。
駒はあえて脆い素材を使っているので、涼玉の力加減のトレーニングにも最適。
「これ苦手」
「俺もー」
『頑張ってね』
「朱、庭で釣りやろう」
「いいですね、今日こそ1m級を狙いたいものです」
それぞれの遊びに散会する子供達。
ちなみに三匹とイネスは縁側のクッションコーナーで団子になってずっと寝てます。
「そういえば朱」
「はい?」
「朱は学園通うのか?」
朱用の釣り竿を選びながらアー君がそう朱に尋ねた。
「学園?」
「奨学金という名のご褒美を奪い合う教育機関」
「涼玉、それはちょっと大げさだろ」
『大げさ?』
「いや、どうだろ?」
学費も食費も無料なのに奨学金制度あるの!?
そっちの方が驚きだよ。
「私、目が見えないけど通えるの?」
「通えるぞ。孤児院の人間に金を積めばどこの王族だよってぐらい丁寧に面倒見てくれるぞ」
「専属に雇うんじゃなくて?」
「雇ってもいいけど、結局その人間も孤児院の人間な気がする」
『どこにでもいるのよ』
「むしろあいつらの関係者がいない職場ってあるのか?」
涼玉の疑問は僕もちょっと思ったことある。
「段差があっても朱なら探索の応用でどうにでも出来るだろ」
「うん……なら、通ってもいいなら、通ってみたい、かな?」
「待って! もうちょっと待って! 魔力安定させるから!」
朱の言葉に待ったをかけたのは青だった。
相変わらず魔力が不安定で暴走しかけることもあるんだよね、朱かアー君が常にそばにいて大事に至ったことはないけど。
「そうだなぁ、青はあれだ。一回孤児院に放り込んで荒波に揉ませるか?」
「やだ怖い! ネヴォラと仲良くするから怖いの嫌!」
「大丈夫だよ青、青がちゃんと魔力操作出来るようになるまで待つから」
「朱!!」
「でも朱ってどっちかというと講師の方が合ってそうだけどな」
「ねぇみんな、ならさ青に朱が魔力操作を教えるのはダメなの?」
教えるのが上手なら教えればいいのに、と不思議に思いながら聞いたら全員から首を振られた。
クッションコーナーにいるもふもふ兄弟も一緒に首を振っている。可愛い。
「朱は、青に甘いんだ」
『飴とキャンディーしかないの』
「間違ってても事実を捻じ曲げて正解にする」
「間違っているのは青ではなく世の中です」
「こんな感じでダメ教師だから頼れない」
朱ちゃん、とんでもない欠点抱えてた!
間違っているのは世の中ってどんな屁理屈!?
騎士様、貴方のお子様が過激ですけど大丈夫ですかー?
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