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女神の呪い

第832話

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 たった今、黒ちゃんに食べられた人は別にネリちゃんの婚約者でも何でもないそうです。
 さらに言えばこの学園の生徒かどうかも微妙だとか。

 女神様の呪いの魔の手がここにも。
 アー君がイライラしていたやつだ……本当にどこまでも追ってくるんだなぁ。
 
 ここに来て僕は大変なことに気付いてしまいました。

「召喚もの、おまけ、王道学園要素に婚約破棄まで混入された!!」

 召喚ものだけでも勇者と聖女と神子という三つの要素含んでいるっていうのにもう何がなんだか、髪型が縦巻きドリルなばっかりに悪役令嬢役が回ってくるネリちゃんも大変だね。

「げっふ」
「クリーン」

 ゲップをしながら机の上に戻ってきた黒ちゃんにお嫁さんがすかさずクリーンをかけたけど、通路側は相変わらずモザイクがかかったまま。
 もう慣れてしまったのかネリちゃんも顔色一つ変えない、優雅にパフェを食べながら話を続けている。

 お食事中の方々ごめんなさい、早く慣れてください。

「イツキいたー」
「会長もいるー」
「授業真面目に受けたらお腹空いた~、一日頑張ったご褒美欲しいなぁ……って、なんでかいちょーの護衛がイツキを守ってるの?」
「僕ら警戒されてる」

 双子と黒ラブ会計、無口な書記が現れた。
 副会長はいないようだ。あれか、聖女にうっかり捕まった口か。

 通路のモザイクはスーちゃんが片付けしてくれたらしく綺麗になっている。
 さすがシャムスのスライムは仕事が早い。

「王道学園……転校生ポジションですか、イツキ様」
「そうみたい」

 さすが腐女神の愛し子、何も説明していないのにテンプレを一瞬で見抜いた。

「なんの話ー?」
「まぜてよー」
「移動すると厄介ごとに絡まれるのが定番。シヴァ様」
「なんでしょうか」
「このアホ達を率いて別の席に移動していただいてもよろしいでしょうか、会長も連れて行って問題ありませんわ」
「いいでしょう」

 スッと立ち上がったシヴァさん、王道生徒会をあっという間に言いくるめて全員率いて移動していった。
 すごいなー。
 あっ、席に着いた瞬間に神子がシヴァさんの足元にスライディングした。どんな調教したんだあの人。

「女神ヴィシュタルから聞いてはいましたが、本当に未成年男子なら何でもよいのですね、あの方は」
「うん。性格に問題があっても矯正しちゃいえばいいしね」

 テンプレな偽物神子が一瞬でドアマットに志願するとか本当になにしたんだろう?

「それにしても国が戦争中なのに、この学校は平和だね。テンプレの嵐が吹き荒れてるけど」
「女神ヴィシュタルの御心が学校を包み学生を守っているのでしょう、なんて愛情深い」

 やっぱり腐女神の呪いの一環だった。
 呪いもたまにはいい仕事するね。

 ネリちゃんは純粋に感動しているけれど、女神様の御心の中身って学生同士のエロへの情熱だと思うの。
 ある意味愛情深くはあるけどね!

「次の新刊は学校を舞台に王道学園でドロドロにします」

 凛とした表情でそんなことを宣言された。

 ……そう言えばネリちゃんってそっちの本も執筆してたっけ。
 女神様の心を正確に理解して、その上で愛情深いって言ってたの!?

 えぇぇぇぇ。
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