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女神の呪い

第830話

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 夕食の時間が迫り、再び食堂に人が現れ始めた。

「寮に食堂併設……されてても料理人がいないか」
「そうなんですよねー、仕入れるお金もないから結局みんなここに来るんですよね。この食堂なら黒様が提供してくれたクレープが食べれますから」
「でも三食クレープは辛かったでしょ」
「食べるものがあるだけマシです」

 庶民はどこの国も逞しいなぁ。

「夕食はなんですか? 俺手伝います」
「ありがと」

 給仕手伝いする気満々でぴょこぴょこジャンプしているのが可愛いね、でも皆が並んで持って行ってくれれば問題解決するだけどなぁ。
 刀国と違って貴族は貴族らしく、自分取りに来るという意識がないのが面倒かな。

 いっそバイキング形式をやってみようかな?
 自分で配膳をやる事を覚えていただきたい、国は砂漠でも運営は刀国だから刀国方式を採用しても特に問題はないはず。

 あれ、なんで僕が学生の食の心配してるんだろう?
 連日となるとさすがにポイントが心配になります、黒ちゃんとシヴァさんで稼ぐポイントだけじゃ学生の食事をカバー出来ません。

「ガッツリ料理出そうと思ったんだけど拒絶されちゃってねー、さっぱり料理になっちゃったんだ」

 本当はカツカレーとか揚げ物中心に出したかったんだけど、お腹の子が激しく抵抗したんだよね。
 刀雲大変、この子もしかしたらカレーとかだめかもしれない、いや、でもお子様カレーにすればワンチャンあるかな?

 そんなことを考えながら出した本日の夕食はこちら。
 プレートに鮭とわかめのおにぎりが一個ずつ、玉子焼き二つ、ふかし芋、わかめの味噌汁。
 野菜が足りないけど、ポイントがですね本当に無くなりそうなんだっ!!

「この三角の白いのは?」
「お米を使った料理だよ、おにぎりって言うの。こっちの真ん中がピンクのは鮭っていうお魚、緑のが混ざっているのはわかめご飯で作ったおにぎり、わかめは海藻だよ」
「これが、米。すごい、ホカホカで美味しそう」
「労働前に食べてみていいよ、味見して運ぶ時に味とか感想教えてあげて」
「はい!」

 おにぎりを渡してあげたら二口ぐらいでペロッと食べてしまった。
 感動でうるうるしながら僕の手を握り、「女神様!」と感謝を捧げられました。生まれたての頃のアー君と同じ反応だなぁ。

 その後、軽い足取りで護衛の人と一緒に給仕をしてくれていたけれど、食べ終わった友人が手伝いを申し込んでくれて配膳と片付けは順調に進んだ。
 王道学園の食堂だから広いんだよね、この食堂に来る学生の注文をクレープとミントティーだけとはいえ、一人で回していたあの子ってもしや天才?
 
「そういえばイツキ様、拒絶されたって言ってましたが、誰にですか?」
「この子」

 お腹をポンポンと叩いたら、抗議するようにお腹を蹴られた。
 はいはい、揚げ物厳禁なんですね、分かってますよー。
 でも君のお兄ちゃん達はみんな揚げ物好きだし、ほぼ連日食卓に乗るけど大丈夫?

「あれ?」

 顔を上げたら給仕の子が真っ青な顔をしていた。
 ドサッと音がしたからカウンターから顔を出したら、床にネリちゃんが項垂れていた。

「ネリちゃん!?」
「イツキ様、ま、まさか妊娠、して」
「うん、この子ってエルフの血が流れてるから油もの苦手みたいで、野菜とか自然食中心なんだよね」

 でも君の一族、食べるものも生き方も肉食だよ?

「この国、地図から消える未来一択……せっかく勉強が楽しくなってきてくれたのに?」
「ネリちゃん大丈夫? せめて椅子に座ろう?」

 カウンターから出てネリちゃんの肩に手を置いたら、割とガチで泣いていた。

「会長の身内って愚か者しかいないの……下手したら死ぬだけじゃ収まらない可能性が……」
「ネリちゃん?」
「イツキ様も!」
「はい!」
「妊婦なのになんで働いているのですか! お願いですから安静していてくださいませ! 砂漠の民の罪状が増えるだけです!」

 いや、でも、ほら、子供達がお腹空いているのを見過ごすわけにはいかないと思うんですよ?

「明日はバイキング形式にするよ」
「そういう問題ではないのですわ!」

 怒られた。
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