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湯水のごとくお金を使おう

第694話

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 死闘をくぐり抜けて何とか夕食が時間までに完成した。
 シャムスのスーパースラちゃん本当に凄い、乱用するとカイちゃんが切なそうにする以外は何の問題もないよ!

「パパー」
「おおイネス、熱烈だな」

 帰宅した刀雲にイネスがいの一番に駆け寄ってその胸に飛び込んだ。

「あのね、あのね、これプレゼント!」

 アイテムボックスに尻尾を突っ込み、取り出したのは子豹のイネスが抱えられる程度の小さな小瓶。
 絵面は可愛いけれど、瓶の中身はイカの塩辛です。
 置き時間? そんなものドリちゃんが時間操作とかそういうの使ってどうにでもしてくれます。

「開けてもいいか?」
「はい!」
「おっイカの塩辛じゃないか、イネスありがとうな」
「えへへー」

 ちなみにラーシャは庭の蒸し器の前でこの光景見ながらぐぬぬってしてました。
 最初は無理矢理でも愛が芽生えるのが腐女神クオリティ、忘れがちだけどイネスとラーシャの間には子供もいるんだよね、今はラーシャが「二人の時間を持ちたい」と回避しているらしい。

「イツキ、もう食べていい?」

 今夜は樽で飲む気のようで、樽を片手で持ちながら神薙さんが庭からそわそわと声を掛けてきた。
 刀雲と家族は全員帰宅、もふもふズも続々帰って来てるけど、もう少々お待ちください。

「ちょっと待ってくださいね、刀雲、今夜は何を飲む?」
「刀雲パパ、お勧めは日本酒!」
「お刺身とあうの」
「今日は料亭ふう!」

 いつもならここでワンコ親子もわぅわぅと参加するけど、本日は庭に用意した宴会席に神薙さんとともにすでに座っていて、海老料理を前に涎をボタボタ垂らしています。

 ちょっとお高い料亭っぽく一人ひとりに懐石料理を作ってみました。
 幼児はたくさん食べれるように一口サイズ、神薙さんは量もサイズも他の数倍、5m級の伊勢海老のエビフライは食事が開始されて少し経ってから出す予定、すぐ出すと勢いで食べられて張り切ったイネスの功績が説明出来ないからね。
 もちろんお代わりは自由だし、大皿に乗った料理もあるよ。

「じゃあアー君お勧めの日本酒で」

 僕らも庭に用意された席に移動、お酒が注がれると刀雲がコップをかかげて「一日お疲れ」と声をあげた所で戦が開始された。
 座敷は本日、神薙さん用の料理が待機する場所となっております。

「こらイネス、海老ばっかり食べないの!」
「海老祭り!」
「俺は大人、俺は大人、わさびを食べれる!! ぐあぁぁぁ!!」
「アー君なにやってるの、ほらお水」
「ツーンってする」

 ワサビは好き嫌いあるから無理して食べなくてもいいんだけどなぁ、しかも今日のワサビは春日さんが茶屋の敷地内にある川でお試し栽培したやつ、もちろん地球からの輸入品。

「水よりお茶があうかな?」
「そうだね、冷茶にする?」
「うん」

 ワサビでダメージを受けたアー君は涙目のまま食事を再開、隣ではマールスが蒸した伊勢海老を涼玉のために割り、シャムスは伊勢海老の味噌汁を堪能していた。
 伊勢海老カレーを作ろうかと悩んだけど、カレーって匂いが強いから今回は見送りました。

「さてと」

 自分の分の懐石料理を食べ終えた所で神薙さんが一度箸をおくと、ささーっとドリアンが一斉に空になった皿を片付け、一度机の上を空にした。
 食べ終わった訳じゃないよ、むしろ懐石料理は前菜、ここからが本番。

 ドリアンらがそれぞれ配置につく。
 まず巨大エビフライが机に置かれ――る前に皿の上から消えた。

「みぃぃ」

 自慢するつもりだったイネスがしょんぼりしてラーシャの懐に潜っちゃった。

 次に運ばれたのは伊勢海老が飛び出るパエリア、バレーボールサイズのタコ焼き、サーモンフライ、スルメ。
 全て一瞬で消えました。

 なんだろう、今日の神薙さんの食べっぷりが凄い。
 いつももうちょっと味わっているのに、出された瞬間料理が消えてます。

「なぁイツキ、神薙様のあの食べっぷり……もしかして妊娠してないか?」

 刀雲が不吉なこと言った。
 金ちゃんと銀ちゃんが生まれたばかりなのに、また邪神が増えたら騎士様さすがに泣きそう。

 ……あっ、デザート考えてなかった。
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