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湯水のごとくお金を使おう

第643話

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 所狭しとどころか足の踏み場もないほど詰め込まれた財宝の数々。
 床が抜けたり、雪崩起こしてるし、一部は破損してるんだろうな。

 一応、神薙さんが無理矢理押し入って通路を作ったけれど、それも財宝を追加したことで山が崩れ始めている。
 整頓という単語はうちの家族の辞書にないようだ。

「古文書もあの下です」

 刀国建国以前の歴史が書かれた書物は神の宝に埋もれたようだ。
 神の前に人間は無力です。と涙を拭くふりをする文官さん、大事なのは刀国であり、その前の歴史なんてどうでもいいんだろうなぁ。
 いざとなれば生き証人の国王様がいるし。

「整然とどこに何があるか分かった時代が懐かしいです」
「悪い悪い」

 全く悪いと思っていないアー君が軽く謝る。

「バザーに出品するものだけでも持ち出せばいいのに」

 アー君の一言に文官さんが口元を引きつらせた。

「持ち出してもやんごとなきお方が追加してですね」
「アー君……」
「テヘ」

 アイテムボックス持ちの役人が手分けして持ち出したけれど、アー君から始まり、神薙さん、レイアさん、ヨムちゃんなどが追加するから追いつかない、片付くどころか無理矢理作られた通路が埋まってゆく始末。

「待って、ヨムちゃんなんで参加してるの」
「海の魔物の貢物だって、下手すればダンジョン産よりレア」
「繊細なものが多いので一番最初に会場に運んであります」

 深海とか異世界技術じゃどうやっても手が届かないもんね、それをこの山に放り込むヨムちゃんの大雑把さよ。
 アー君に似たのかな?

 近日行われるバザーは刀国民だけでなく冒険者、魔王様や騎士様関係者など、権力トップ層から一般市民まで身分関係なく参加出来る。
 ほぼと言うか会場がお城の時点で国家行事ですね。

「ねぇアー君、さすがに会場に人が入りきらないんじゃない? 手が届かない値が付くなら諦めもつくだろうけど、安売りだと屋台のおばちゃんとかが本気できそうだよ」

 多分何人か吹っ飛ばされると思う。
 他国の貴族が生き残れるかちょっと怪しい。

「身分で入場制限をかけて、高位の方々は後回しにするよう手配した方がいいでしょうか」

 ここで身分が高い方を後回しにするのは刀国ならではだよね、普通は身分高い方を優先すると思う。

「いや……身分どうので制限かけて、市民から入場させたら何も残らない気配がする」
『冒険者吹っ飛ばされちゃう』
「シヴァっていう財布がいるし、孤児院関連が一番怖いな」

 社会的弱者な顔をして、実際は様々な商品の売り上げで大儲けしているのが孤児院。
 下手すれば冒険者が欲しそうなものを根こそぎ購入し、あとで転売しそうなのが彼らである。

 あれ?
 どちらかと言うと冒険者の方が社会的弱者っぽい?

「そうだ、商人に先に買い物してもらって、それを広場とかで売ってもらうのは?」
「確かにそれなら市民が詰めかけて冒険者が弾き出されることもないな!」
『りゅーつーも把握してるのよ』
「半額以下で売り飛ばせー!」
「早速手配いたします」
「ああ俺がやるよ、アカーシャに手紙飛ばせばすぐ手配してくれる」

 そう言ってアー君が紙を取り出して何かを書き込んだ。

「シャムス、鳥で」
『あい』

 渡された紙をシャムスが捏ねてスライムを作り、ころんとして鳥が完成、窓から外へと飛び立った。

 アカーシャってすでに商人を牛耳っちゃってるんだね。
 そっかー。
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