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湯水のごとくお金を使おう

第617話

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 砂漠を緑に変えるなんて神の御業だ……と呟く婿殿。

 普通の人間からすれば夢物語だよね、分かる。
 けど奇跡って案外条件が揃えばホイホイ起こせるんだよ、その証拠に君の目の前でブーイングしている大人は全員神様かそれ以上の存在です!

 あと同級生で親交を温める予定だったろう双子の王太子はうちの子です。

「じゃあ今から緑に変えちゃう?」
「騎士様ストップ」

 ウィンドウを開いた騎士様を慌てて止める、アー君が采配したがってるので少々お待ちください。

「パパ分かってないなぁ」

 はは~んって感じでアー君が肩を竦める。

「カイがいない状態で緑に変えてどうするんだよ、こういう奇跡は出し惜しみしないとな」
『カイちゃん中心に緑ぶわーってするの』
「砂漠って他に何かいるかな?」
「水かなぁ」
「不足してたらもう笑えるぐらい俺らの独壇場」

 アー君の笑顔が黒い。

「ハイダル、君たちの民に足りないものはなに?」

 婿殿の頬に手を添えて、瞳を見つめながら問うカイちゃん。
 目が銀色に光っているような気がするのだけど、ねぇそれ、自白魔法とか使ってません?

「魁焔ってほら、種族のトップだったから」
「実はあれ、俺も使える」

 騎士様のフォローになってないフォローに続き、春日さんの能力暴露、皆さんやけっぱちになっていませんか?

「母上、ハイダルの故郷は砂ばっかりで、緑も水も枯渇しつつあるし、砂漠には砂の下に凶悪なモンスターがいて、王族は自ら剣を揮って民を守ってるみたいだ」

 騎士様と春日さんにツッコミを入れていたら事情聴取終了してた。

『婚儀終えた時に奇跡起こすの』
「環境改善は俺ら兄弟にかかれば朝飯前! ただその後大食いするけど!」
「カイちゃんを裏切ったらラーシャの軍団で国に攻め込むです!」
「殺すなよ、生きたまま奈落に落とすんだ!」
「分かったです! ラーシャ、滅ぼしに行きましょう!」
「まだ裏切ってないよ~」

 アー君とイネスの暴走がヤバい、どうか調子に乗った家臣がハイダル君に側室を薦めませんように、即アウトになる予感。

「ハイダル君、兄弟はいる?」
「は、はい」
「第二夫人や側室を薦められたら兄弟に押し付けてね、国を滅ぼしたくないでしょ」
「分かりました」

 顔色が悪いけど大丈夫だろうか、アー君の暴走はまだ実行に移されてないよ?

『あとは?』
「うーんそうだなぁ、涼玉」
「んー?」
「マールスとちょっくら旅行に行く気はないか?」
「りょこー?」
「涼玉の豊穣の力で大地を豊かにしてほしい、マールスは気に入らない気がする人間片っ端から食えばいいと思う」

 アー君が神様と邪神を同時に派遣するつもりっぽい、止めなくていいのかなと大人を見たら、隅で固まってお酒を飲んでいた。
 せっかく転生したのにさっさとお嫁に行っちゃうから寂しいんだろうな、気持ちは分かるけれど子供達の暴走を止めてほしい。

『魔物さんはどうするの?』
『母上を魔物の前に放り込む』
『みゃぅ!?』
『に、にいちゃ、そんな事して大丈夫なのか?』
『島で母上の特技を見ただろう、あれを砂漠でやってもらうんだ』
『そうだな、味方がいないなら作っちゃえばいいんだな! にいちゃ冴えてる!』

 なんだろう、子供達の表情がどう好意的に捉えても悪だくみしているようにしか思えないのですが、僕に理解できない獣語で話しているからなおさら怪しいんだよね。

 静かだなぁって思ったらハイダル君は横になり、カイちゃんに膝枕してもらっていた。
 獅子もカイちゃんの前ではただの子猫か、仲良しそうでなによりです。
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