上 下
597 / 1,127
巡り合い

第590話

しおりを挟む
 庭にネヴォラがいることに気付いたギレンが苦情を言おうと立ち上がった。

「よしいい的がいるぞ!」
『とんで火にいるむしー』
「やる、ギレン、プチっとする!」

 悪い子にはお仕置きだなァって余裕ぶってる場合じゃないよギレン、相手が悪過ぎる!
 あとギレンの後ろには僕やドリアンがいるからね、危ないから止めなさい!

「こら、樹に当たったら危ないでしょう」
「騎士様ナイス!」

 うおーっと燃えているネヴォラをひょいと騎士様が抱き上げた。

「ギレン倒す!」
「威勢がいいダークエルフだなぁ」
「ギレンボコボコーー!」
「主様、ちょっとそいつと話したいのですが」
「拳の話し合いでしょ~、ギレンじゃネヴォラのスピードに追い付けないから怪我して終わりだよ」

 えっ、ネヴォラそんなに素早いの?
 うちのイネスぐらい?

「そんな事は」
『身体強化、そーれー』
「シャムスの身体強化って恐ろしく効果高いから……」
「ぷちーって、ぷちーってするーー!」
「はいはい、ゴブリンが心配してるから帰ろうねぇ」
「お土産くれたら帰る」

 案外素直に帰る宣言。ただしお土産必須。
 困ったように騎士様がこちらを見ている。

 ポイント足りるかな?
 ドキドキしながら出したのは金平糖、これならネヴォラとゴブリン、スライムで分けて食べれるからいいかなと思いました。
 カラフルで綺麗なのもポイントです。

「イツキありがと! 帰る!」

 金平糖の入った瓶を大事に抱え、こうしてネヴォラは帰っていった。
 嵐のような来訪だった。

「納得がいきません!」
「ギレンの攻撃って大振りだからなぁ、シャムスの身体強化かかったネヴォラを捉えるのは無理だと思うんだよねぇ、アー君仕込みの補助魔法と必殺技で基本能力も強化されたし」
「っく」
「無理だとは思うけど、なるべく仲良くしなさい。無理だとは思うけど」

 無理って二回言った。
 騎士様もネヴォラとギレンが和解するのはほぼ諦めてるんだなぁ。

「素質が高いから仕込み甲斐がある」
『スライムで防具作るの』
「ブーツ作ろうぜ」
「動きを阻害しないものが良いでしょう」

 ギレンは不完全燃焼だろうけど、止めてもらって良かったと思うよ。だってさっきからうちの子が不穏なこと言ってるんだもの。

「基本裸足だからな、足を覆う靴よりサンダルとかどうだ」
『かかとの所に羽つけるの』
「素早さアップだな!」
「身を守る術も必要でしょう」
「それもそうだな、攻撃が当たったら減速してしまうもんな」

 全力で強化するつもりだよ。
 しかもスピード強化を重点的にするつもりだ。

 第二のイネスが爆誕する日も遠くないかもしれない。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

完結・虐げられオメガ側妃なので敵国に売られたら激甘ボイスのイケメン溺愛王が甘やかしてくれました

美咲アリス
BL
虐げられオメガ側妃のシャルルは敵国への貢ぎ物にされた。敵国のアルベルト王は『人間を食べる』という恐ろしい噂があるアルファだ。けれども実際に会ったアルベルト王はものすごいイケメン。しかも「今日からそなたは国宝だ」とシャルルに激甘ボイスで囁いてくる。「もしかして僕は国宝級の『食材』ということ?」シャルルは恐怖に怯えるが、もちろんそれは大きな勘違いで⋯⋯? 虐げられオメガと敵国のイケメン王、ふたりのキュン&ハッピーな異世界恋愛オメガバースです!

転移したらなぜかコワモテ騎士団長に俺だけ子供扱いされてる

塩チーズ
BL
平々凡々が似合うちょっと中性的で童顔なだけの成人男性。転移して拾ってもらった家の息子がコワモテ騎士団長だった! 特に何も無く平凡な日常を過ごすが、騎士団長の妙な噂を耳にしてある悩みが出来てしまう。

犬のさんぽのお兄さん

深川シオ
BL
【地方都市×オメガバース】オメガでニートの園瀬(そのせ)梓(あずさ)は、T中央公園を散歩中に謎の長髪イケメンアルファ(ダサい臙脂のジャージ姿)に出会う。その瞬間、ヒートが起きて運命の番だと分かり——!?

学院のモブ役だったはずの青年溺愛物語

紅林
BL
『桜田門学院高等学校』 日本中の超金持ちの子息子女が通うこの学校は東京都内に位置する野球ドーム五個分の土地が学院としてなる巨大学園だ しかし生徒数は300人程の少人数の学院だ そんな学院でモブとして役割を果たすはずだった青年の物語である

精霊の港 飛ばされたリーマン、体格のいい男たちに囲まれる

風見鶏ーKazamidoriー
BL
 秋津ミナトは、うだつのあがらないサラリーマン。これといった特徴もなく、体力の衰えを感じてスポーツジムへ通うお年ごろ。  ある日帰り道で奇妙な精霊と出会い、追いかけた先は見たこともない場所。湊(ミナト)の前へ現れたのは黄金色にかがやく瞳をした美しい男だった。ロマス帝国という古代ローマに似た巨大な国が支配する世界で妖精に出会い、帝国の片鱗に触れてさらにはドラゴンまで、サラリーマンだった湊の人生は激変し異なる世界の動乱へ巻きこまれてゆく物語。 ※この物語に登場する人物、名、団体、場所はすべてフィクションです。

美少年に転生したらヤンデレ婚約者が出来ました

SEKISUI
BL
 ブラック企業に勤めていたOLが寝てそのまま永眠したら美少年に転生していた  見た目は勝ち組  中身は社畜  斜めな思考の持ち主  なのでもう働くのは嫌なので怠惰に生きようと思う  そんな主人公はやばい公爵令息に目を付けられて翻弄される    

【完結】囚われの親指王子が瀕死の騎士を助けたら、王子さまでした。

竜鳴躍
BL
サンベリルは、オレンジ色のふわふわした髪に菫色の瞳が可愛らしいバスティン王国の双子の王子の弟。 溺愛する父王と理知的で美しい母(男)の間に生まれた。兄のプリンシパルが強く逞しいのに比べ、サンベリルは母以上に小柄な上に童顔で、いつまでも年齢より下の扱いを受けるのが不満だった。 みんなに溺愛される王子は、周辺諸国から妃にと望まれるが、遠くから王子を狙っていた背むしの男にある日攫われてしまい――――。 囚われた先で出会った騎士を介抱して、ともに脱出するサンベリル。 サンベリルは優しい家族の下に帰れるのか。 真実に愛する人と結ばれることが出来るのか。 ☆ちょっと短くなりそうだったので短編に変更しました。→長編に再修正 ⭐残酷表現あります。

光る穴に落ちたら、そこは異世界でした。

みぃ
BL
自宅マンションへ帰る途中の道に淡い光を見つけ、なに? と確かめるために近づいてみると気付けば落ちていて、ぽん、と異世界に放り出された大学生が、年下の騎士に拾われる話。 生活脳力のある主人公が、生活能力のない年下騎士の抜けてるとこや、美しく格好いいのにかわいいってなんだ!? とギャップにもだえながら、ゆるく仲良く暮らしていきます。 何もかも、ふわふわゆるゆる。ですが、描写はなくても主人公は受け、騎士は攻めです。

処理中です...