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巡り合い
第573話
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話し合いも一段落し、おやつの時間も近付いてきたので子供達が恐る恐る座敷に戻ってきた。
今日のおやつはパンケーキだと予め言っておいたから戻ってきたけど、言ってなかったら戻ってくるつもりなかったんだろうなぁ。
『エルフちゃんどうするの?』
「マシューのとこがいいかなって、自然溢れてるしね」
ダークエルフの幼児は我が家で引き取るかと思いきや、マシュー君の領地に放流するそうです。
放流の使い方、たぶん違う。
「ギレンに任せようかと思ったけど」
「ギレンすけべ! ひっこぬく!」
「こんな感じだし、アイツがいるの海だから考えを改めた」
「森がいい! お水きらい! でもとーうんと入ったあったかいのは好き!」
お風呂が気に入ったらしい。
マシュー君の家の一部を改造し、シヴァさんが大浴場を作ったらしいのでその辺は大丈夫だろう。
やっている事が一歩間違えれば犯罪っぽいし、目的が怪しい気がするけど、子供達は喜んでいるからまぁセーフ。セーフかなぁ??
「マシューの所ならナーガもいるし、何よりさっきからシヴァの視線が痛い」
「我が君、是非とも私に子供達を守る名誉をお与えください」
「……ああ、保護した魔物とのハーフも皆子供なんですね」
「うん」
ぶれないなぁ。
「ギレンやっつけて、アカーシャのラブひとりじめ!」
「将来、ギレンの強力なライバルになりそうですね~」
「いざとなれば鈴に多重婚の許可もらえばいいし、そういう意味ではご都合主義がありがたい」
変化球でギレンの嫁になったりするのだろうか、そっちルートも女神様好きそう。
「アカーシャにこれだけ懐いた理由が里に行ったおかげで分かったよ」
「そうなんですか? ちなみにパンケーキにはなにかけます?」
「生クリーム多めでお願い。涼玉の豊饒の力をドリアードの血が感知したんだと思う、新種の植物を一瞬で成長させる力だからね、半分植物のこの子が惹かれるのも当然かな」
「力が原因ならなんで涼玉でなくアカーシャに懐いたんでしょう?」
「涼玉の背後にある顔こわい」
真顔で言われた。
暴れん坊なエルフが涼玉にあまり近付かない理由はマールスだったようです。
「この子にとって涼玉はまたたびみたいな存在、けど背後にはマールスがいて近付けない。そこに肌の色が同じで優しく甘やかしてくれるアカーシャが現れれば懐くよね」
「イツキ好き、でもアカーシャはもっと好きなの」
「そうなんだね」
僕も好きの部類に入っているらしい、ちょっとホッとした。
『お名前はなんですかー?』
「ない!」
『ないの?』
「かあちゃ、名前ないって」
環境的に名前を付ける相手もいなければ、呼ぶ相手もいなかっただろうし、そりゃ名前ないよね。
言葉を話せること自体が不思議なぐらいだし。
「よっしゃ任せろ!」
「はい喜んで!」
アー君が呼ぶ前に女神様が出現した。
ずっと待機していたのだろうか。
「ここは無難に『ソニア』とか『カリーナ』とかどうッスか?」
「鈴ちゃん、それって女性名じゃない?」
「え、だって」
「わたしは男、ちんちん付いてるぞ!」
「ぶーーーー!!」
えっ、女の子だと思ってたの?
そりゃ幼児だし、一人称『わたし』だし、性別判りにくいとは思うけど、シヴァさんが膝にのせている時点で気付きましょうよ。
「ネヴォラ、とても古い言葉で『祝福』を示します」
「ん!」
『ねおちゃん』
「ネオ!」
「わたしの名前!」
「っく、シヴァに命名されたか」
「ふ、くふふふ、私の愛し子、ずっと幼いままでいましょうね、大人になったら駄目ですよ」
これあかんやつや。
お巡りさんこの人です。
あっ、お巡りさんじゃ敵わないかな、じゃあ騎士様なんとかしてください。
「さぁ参りましょう私たちの愛の巣へ!!!」
「やっ、アカーシャーーーー!!」
ネヴォラと名付けたダークエルフを片腕に抱き、魔法陣を展開したシヴァさんが薔薇の花びらを舞い散らせながら転移した。
きっとマシュー君の領地に帰ったんだと思う。
「こんな時、僕らはどんな反応をしたら良いのでしょうか、ねぇ騎士様」
「俺も分かんない」
シヴァさんに先を越された女神様はアー君に気付かれないよう息を殺しつつ、空気に溶けるように姿を消した。
逃げたな。
今日のおやつはパンケーキだと予め言っておいたから戻ってきたけど、言ってなかったら戻ってくるつもりなかったんだろうなぁ。
『エルフちゃんどうするの?』
「マシューのとこがいいかなって、自然溢れてるしね」
ダークエルフの幼児は我が家で引き取るかと思いきや、マシュー君の領地に放流するそうです。
放流の使い方、たぶん違う。
「ギレンに任せようかと思ったけど」
「ギレンすけべ! ひっこぬく!」
「こんな感じだし、アイツがいるの海だから考えを改めた」
「森がいい! お水きらい! でもとーうんと入ったあったかいのは好き!」
お風呂が気に入ったらしい。
マシュー君の家の一部を改造し、シヴァさんが大浴場を作ったらしいのでその辺は大丈夫だろう。
やっている事が一歩間違えれば犯罪っぽいし、目的が怪しい気がするけど、子供達は喜んでいるからまぁセーフ。セーフかなぁ??
「マシューの所ならナーガもいるし、何よりさっきからシヴァの視線が痛い」
「我が君、是非とも私に子供達を守る名誉をお与えください」
「……ああ、保護した魔物とのハーフも皆子供なんですね」
「うん」
ぶれないなぁ。
「ギレンやっつけて、アカーシャのラブひとりじめ!」
「将来、ギレンの強力なライバルになりそうですね~」
「いざとなれば鈴に多重婚の許可もらえばいいし、そういう意味ではご都合主義がありがたい」
変化球でギレンの嫁になったりするのだろうか、そっちルートも女神様好きそう。
「アカーシャにこれだけ懐いた理由が里に行ったおかげで分かったよ」
「そうなんですか? ちなみにパンケーキにはなにかけます?」
「生クリーム多めでお願い。涼玉の豊饒の力をドリアードの血が感知したんだと思う、新種の植物を一瞬で成長させる力だからね、半分植物のこの子が惹かれるのも当然かな」
「力が原因ならなんで涼玉でなくアカーシャに懐いたんでしょう?」
「涼玉の背後にある顔こわい」
真顔で言われた。
暴れん坊なエルフが涼玉にあまり近付かない理由はマールスだったようです。
「この子にとって涼玉はまたたびみたいな存在、けど背後にはマールスがいて近付けない。そこに肌の色が同じで優しく甘やかしてくれるアカーシャが現れれば懐くよね」
「イツキ好き、でもアカーシャはもっと好きなの」
「そうなんだね」
僕も好きの部類に入っているらしい、ちょっとホッとした。
『お名前はなんですかー?』
「ない!」
『ないの?』
「かあちゃ、名前ないって」
環境的に名前を付ける相手もいなければ、呼ぶ相手もいなかっただろうし、そりゃ名前ないよね。
言葉を話せること自体が不思議なぐらいだし。
「よっしゃ任せろ!」
「はい喜んで!」
アー君が呼ぶ前に女神様が出現した。
ずっと待機していたのだろうか。
「ここは無難に『ソニア』とか『カリーナ』とかどうッスか?」
「鈴ちゃん、それって女性名じゃない?」
「え、だって」
「わたしは男、ちんちん付いてるぞ!」
「ぶーーーー!!」
えっ、女の子だと思ってたの?
そりゃ幼児だし、一人称『わたし』だし、性別判りにくいとは思うけど、シヴァさんが膝にのせている時点で気付きましょうよ。
「ネヴォラ、とても古い言葉で『祝福』を示します」
「ん!」
『ねおちゃん』
「ネオ!」
「わたしの名前!」
「っく、シヴァに命名されたか」
「ふ、くふふふ、私の愛し子、ずっと幼いままでいましょうね、大人になったら駄目ですよ」
これあかんやつや。
お巡りさんこの人です。
あっ、お巡りさんじゃ敵わないかな、じゃあ騎士様なんとかしてください。
「さぁ参りましょう私たちの愛の巣へ!!!」
「やっ、アカーシャーーーー!!」
ネヴォラと名付けたダークエルフを片腕に抱き、魔法陣を展開したシヴァさんが薔薇の花びらを舞い散らせながら転移した。
きっとマシュー君の領地に帰ったんだと思う。
「こんな時、僕らはどんな反応をしたら良いのでしょうか、ねぇ騎士様」
「俺も分かんない」
シヴァさんに先を越された女神様はアー君に気付かれないよう息を殺しつつ、空気に溶けるように姿を消した。
逃げたな。
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