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巡り合い

第572話

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 僕がこの世界に転生して間もない頃、ドリアードが大繁殖したことがある。

 原因は言わずと知れた腐女神様。
 大興奮した女神様がドリアードに過剰な加護を与えたことで人間に種を植え付けて即妊娠、即出産、増殖と進化を恐るべき速度で繰り返した。
 最終的に騎士様がドリアードの群れに魔王領の一部を与えて封じ、それ以外は出来る限り処分したことで騒動は一応の終息を見せたんだけど……。

 その時の影響が地味に今も残っている。

 一部のドリアードは理が定まる前にダンジョンに逃げ込み、ダンジョンコアを取り込んで最下層を住処として一騎当千の兵士を生み出すほどの進化を遂げていた。
 ちなみにこのドリアードの群れは騎士様に下り、配下となってダンジョンを管理することで討伐対象から外れたんだよね。
 長い物には巻かれるのは悪いことではないと思う。

 ドリアードから生まれるのはドリアードだけのはずだった。
 けれど、奇跡的な確率でハーフが生まれていたらしい。

「この子が生まれた経緯がこれまた鈴の趣味が凝縮されたような感じで、俺は冷や汗が止まらない。レイアにバレたら連帯責任で俺の身が大変な予感」
「ドリアードが里にがーってきて、いやーんで闇落ちどーん」
「ええと?」
「私にお任せを」

 キリッした表情で通訳を申し出たのはシヴァさん。

「ドリアードの群れがエルフの里を襲い、孕める者は一人残らずドリアードの苗床になったのですね」
「うん」
「苗床になったエルフが闇落ちして生まれた子供が」
「わたし! エルフの里乗っ取られた!」

 悲惨な展開のはずなのに明るいなぁ。
 それにしてもそうか、ドリアードで触手プレイしたエロフから生まれたのか。

(どこのエロ漫画ですか女神様)
(反省はしている)
(やらかし過ぎてレイアさんに粛清されないようにしてくださいね)
(ウッス)

 騎士様に迷惑をかけた自覚があるのか、さすがに反応が大人しい。
 いや違うな、この程度で反省したり自粛したらスタンピードが頻発したり、世界の理が改変されて男が妊娠する世界は誕生しない。

 つまり、ただの生返事か。

「ドリアードとのハーフだからか、幼いからか、苗床にはされずにドリアードに占領された里で生き延びていました」
「どれがママか分からないけどな」
「しかも聞いて樹」
「まだあるんですね」
「ダークエルフはこの子だけだけど、他の魔物とのハーフがそこそこの数いました」
「わぁ」
「さらに言うとね、エルフって寿命長いけど一応年取るの」
「……はい」

 そう言えばそうだ、寿命が長いのは定番としても彼らは別に不老不死じゃない、ただ画面映えしないから登場しないだけだ。
 特にこの世界じゃ年老いたエルフなんて女神様の守備範囲外だろう。

「もちろんこの子の里にも年老いたエルフはいたんだ。生きてたけど死んでる状態に近くてね、向こうからしたらいっそ殺せ状態だったんだ」

 ここに来てまさかの「くっ殺」、一つの里に女神様の性癖詰め込みすぎだと思います。

「年老いているから苗床に使えない、けれど知識は有用。ドリアードに飲み込まれて一体化してた。それが複数、結論から言うとね、里全体がダンジョン化しておりました」
「うわぁ」
「邪神様ががーっときて、友達たべられちった」

 神薙さーーーん!!

「神薙からしたらダンジョンでモンスター食べただけなんだけどね」
「被害者サイドから見れば、女神様のせいで爆発的に増えたドリアードに襲われて里も尊厳も奪われ、それでも生まれた命を守ってひっそり生きてたら邪神の襲来、多くは食べられ、里の唯一のエルフの生き残りであるだろう子はさらわれた。酷いですね」

 元凶の女神様は反省するどころか次回作のネタにしていそうだ。

「里ごと燃やし尽くすのが一番早いけど、エルフの霊薬とかエルフの里にしかないあれこれがあるみたいで、神薙お気に入りのダンジョンだから消滅させるほうが厄介なんだ」
「エルフの名産物食べ放題できるダンジョン扱いですね」

 人を食らうダンジョンも神薙さんにとっては日替わり定食扱いか、エルフ、報われないなぁ。

「それでね、里を燃やさず、存続を許す代わりに、子供達を引き取って保護することで手打ちとなりました~」

 これは謝罪を受け入れたというのだろうか?
 だって里ごと燃やして全滅か、子供を引き渡して存続かの二択って……騎士様は保護というけれど、たぶんあちら側からしたら人質ですよ?

 怨嗟の声が聞こえそうなダンジョンだなぁ。
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