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巡り合い

第554話

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 謎の魚の正体はそのままプールで飼われることになった。

「きゃっきゃ」

 なぜならトラちゃんの時のように芸を披露する事でシャムスに媚びを売ったから。
 水面から上半身を出して泳ぐなど、イルカ並みの曲芸披露中です。

「脂が乗って旨いのだが」
「シャムス優先」

 切なげに魚の曲芸を眺める白熊さん、手にハープを抱えてメロディーを奏でている。

『ジャンプ!』

 パシャン!

 凄いなぁ、もう指示を理解できるようになったんだー。
 僕が呆然とするのは許してほしい、だって謎の魚と一緒にトラちゃんも曲芸披露しているんです。

 媚売りライバルが現れた事をどこから聞きつけたのか、水の膜に身を包んでこの部屋に突然乱入してきたんだよね。
 貴方の住処、庭の池よね?
 なんで自由に家の中行き来できてるの?

「シャムスは獅皇の子だから生き物が従うのはまぁ分かるけど、従い方が平和でいいねぇ」

 そして突然池から飛び出したトラちゃんを追いかけて騎士様も来ちゃったのですが。
 来てしまったものは仕方ないので、アー君にお願いして椅子を出してもらって白熊さんのハープ演奏を聴きながら曲芸鑑賞中です。

 さすが騎士様、リラックスしている姿も優雅ですね。
 静かに送られる風を身に受け、体から力を抜いて気持ち良さそうにしている。

「そろそろいいかな、ダロス、次」
「おう」

 すくっと白熊さんが立ち上がった。
 なんだろう?

『涼ちゃーん』
「おう、出番か!」
「我もお手伝いしますぞ!」

 口の周りに食べかすを付けた涼玉がマールスに抱えられて部屋に入ってきた。
 ぞろぞろとプールサイドに子供達が並ぶ。

『始めるの』
「Music START!!」
「OK!」

 ギュイイイイイイイン

 ハープがギターのようなロックな音を立て始めたのですが、何が起こってるのでしょうか。

 あっ、涼玉がマイクを取り出した。

「みんなノッてるかい!」
『いえーい!』
「Foooo!!」
「いつも頑張ってるままたちにおくる本日のほっとなMusicは三千桜! いっくぜぇ!」

 ライトに照らされるプール。
 舞い踊る二匹の魚。
 激しくハープをかき鳴らす白熊。
 熱唱する涼玉。
 頭の数だけ違う音を発して盛り上げる蛇のマールス。
 お尻ふりふりダンスでノリノリのシャムス。
 初披露されるアー君のラップ。
 
 僕はどんな反応をするのが正解なんだろう。
 その曲、有名ボカロの替え歌だよね、ってツッコミだけでいいかな?

 とりあえず、打ち合わせもなしに涼玉らに付いていけるマールスすげぇ。

「樹、いったい何が起こってるのかな?」
「僕にも良くわかりません」
「さっきまで癒される光景だったのにぃ」

 騎士様が泣き言をもらそうが容赦なく二曲目に突入。

「癒しが欲しい、そうだ樹」
「はい?」
「膝枕してほし――ナンデモアリマセン」

 名案が浮かんだとばかりに目を輝かせた騎士様だけど、正座する勢いで姿勢を正した。
 その背後には僕の最強の保護者・ヘラ母さん。

 いつから居たかって?
 白熊さんがハープを奏で始めたあたりかなぁ、騎士様にずっと風を送ってたのヘラ母さんですよ。
 多分、アー君が見てほしくて招待したんじゃないかと思います。
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