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保護者の居ぬ間に

第436話

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 アー君が無念をにじませながら縁側でゴロゴロしている。
 涼玉もそれに付き合い、卵状態で左右にコロコロ。

「俺の活躍の場がぁー」
「がぉー」

 アー君が拗ねて使い物にならないので、報告はこうちゃんがしてくれた。
 現在、春日さんがそれを説明中、当の邪神一家は聞いちゃいないけどね。

 夢を渡ってアカーシャの身柄を保護後、悪者を酷い目に合わせる予定だったアー君だけど、そこまで行かなかったみたい。
 それより早くこうちゃんが動いて、アー君が夢渡りをした時には馬車は停車していたんだって。

「かーしゃまおやつ」
「シャムス達は茶屋で食べたでしょ」
「……」

 僕の一言に春日さんが取り出したお菓子をそっとアイテムボックスに戻した。
 子供用おやつ常備してるのかな。

 ともかく。

 スピード解決の要因は春日さんのこうちゃんへの指示にあった。
 あの茶屋で主人の愚痴をスライムに吐き出していた従者の人を、こうちゃんは言いつけ通り見張っていたらしい。
 馬車の上で。

 移動を始めてからでは追いかけるのがメンドイ。
 そんな理由での先回りだったけど、それが功を奏した。

 従者の移動が馬車というのも十分おかしいけれども、細かいことは春日さんが考えればいいやーとか思いながら監視していたらアカーシャを連れた従者が現れたらしい。
 不思議なことにアカーシャに抵抗する気配はなく、周囲には他にも人はいたのに二人に視線を向ける人は誰一人としていなかった。

 従者が戸を閉めると同時に馬車が動き出し、こうちゃんは不審に思いながらも馬車が広場に入って、噴水を通過した所で子供と遊んでいた龍さんに合図を出し、龍さんが馬車を破壊。
 騒動に気付いた周辺の住人と冒険者が馬車に殺到、従者は馬車の外に引きずり出された。

 この辺りでアー君が到着。
 夢経由でアー君がアカーシャの元に移動した時、馬車の中にはアカーシャしかおらず、移動中かと思いきや停車してる上に屋根が破壊されていたと。

「冒険者と市民の連携半端ない、騎士団は止めるどころかトドメに白を連れてくるしさー」
「きょーは俺の当番だからな!」

 溜息を付きながらアー君と涼玉が戻ってきたので、座布団の上に座らせてジュースを渡す。

「あーうまー」
「がるぅ!」

 アカーシャを起こして馬車の外に出たら、誘拐犯らしき男がす巻きにされた状態で地面に転がされており、二人が無事保護された所に春日さんが到着。
 従者は捕まったけれど、御者は屋根ごと龍に食べられた後だった。

 まぁそんな感じで誘拐発生から保護までびっくりするほどのスピード解決でした。

「俺、セーフだよな?」
「ん? うん、犯罪を防ごうと先手は打ってたし、そのおかげでアカーシャの保護も早まったから問題ないかな」

 春日さんの手の届く範囲での誘拐事件、もし手を打ってなかった場合、春日さんと言えど罰が下る可能性はゼロじゃなかった。
 なにせアカーシャは神薙さんのお気に入り、しかも現在この国を守っているのも神薙さん、断罪する権利があるんだよねぇ。

「イツキ、ありがとな、お前の賄賂のおかげで命拾いした」

 僕の用意したお茶やおやつ類でご機嫌を取ることに成功したのも大きいみたい、もしおやつを出す前に報告してたら春日さんでさえ罰を受けた可能性があるのか……。

 うちの邪神様、怖いね。
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