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家族が増えました

第383話

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 皆でニルちゃんに美味しいものをあれこれ食べさせていたら、あっという間に艶々の翼を持つふっくらした容姿になった。
 鶏ガラだった頃は分からなかったけれど、なとなく鷲に似てるような気がする。

 目元がほわっと柔らかいのは、多分僕の影響なんだろう。
 
「可愛い」

 孤児院のお手伝いを始めたヘラ母さんが久々に遊びに来て、縁側にいるニルちゃんを見た最初のセリフがこれ。
 ニルちゃんが持つ孤児独特の雰囲気か何かが、母性の塊である母さんの何かを刺激したらしい。

「ガルーダにも手伝わせているけど正直手が足りなくてね、この子、貰うわ」

 いつの間に尻に敷いたのか、貰うと言われても僕に決定権はないよ。とか口を開く前にニルちゃんがヘラ母さんに付いて行くと頷いてしまった。
 こちらもまたヘラ母さんの母性に惹かれたようだ。

「他に鳥の獣人いない?」
「いないかな、鳥の獣人じゃなきゃダメなの?」
「そんな事はないけど、種別が同じ方が意思の疎通が楽でね」
「あと出来れば仕事欲しいです」

 ……ガルーダもいたようだ。気付かなかった。

「うちの王様、嫁を愛でるのに人生の8割を捧げているから、領地を発展させるとか、人間に歩み寄るとかそう言うのないんですよねぇ」
「えっ、僕がいた時はあんなに精力的に働いてたのに?」
「多分それ、嫁のために巣を整えてただけっぽいです」
「あー……」

 完成したから後はもう愛でるだけか、なるほどー。

「仕事くださーい、孤児院の子供達が飢える前に仕事くださーい」
「え、ううーん」

 僕そんな権力ないよぉ。

『ニルちゃんお引越し?』
「両親と仕事を手に入れたみたいだな」
「経営難っぽいが」

 こういう相談はもっと上の方とお願いしたいですー。

『おそうめん』
「あ、あれか!」
「母上、我らのシャムスの啓示だ!」

 胴上げをしそうなテンションでアー君と雷ちゃんが万歳している。何があった。
 今は幼児だから出来ないけれど、シャムスを抱っこできるぐらい大きくなったら高い高いや胴上げするんだろうな。

「素麺を作ってもらおう!」
「米みたいに量産すれば安価で売りさばける、質のいいものは我らに奉納せよ」
『つるつるー』

 獅皇さんの御子、シャムス。
 騎士様の御子、アー君。
 本体は古代の龍、雷ちゃん。

 正直に言おう、三人は僕より権力も実行力もあるし、人を使う事にも抵抗はない。
 生まれながらの権力者なんだよねぇ。

『めんをこねこね~、とくさんひーん』
「シャムス様のお心遣い、感謝しますぅぅ」
「もっと崇めろー」
「シャムス他に食べたいものはないか?」
『はちさん』
「ばーば、ガルーダ、ニル、素麺と蜂蜜作りを命じるぞ!」
「シャムスの御所望だ、拒否権は与えない!」

 ついでに言うとヘラ母さんとガルーダの創造主でもある、本気で命令すれば大抵通る。
 通らない事もあるけどね、僕が攫われた時みたいに。

「女神、レシピ!」

(はいよろこんでー!)

 ドサドサーッと音を立ててレシピの書かれた紙が亜空間から落とされた。
 慌て過ぎてまとめてない、ネットの情報をそのまま印刷したから日本語だし……もぅ仕方ない女神様だなぁ。

「ドリちゃんお願い」

 紙を回収して一度預かり、ドリちゃんに渡すとあら不思議。
 こちらの世界の言葉に翻訳されたうえ、分かりやすくまとめられた冊子に早変わり。

『ドリちゃん素敵』
「最強のチートだな」
「向かうところ敵なし」

 幼児に褒められドリちゃんの笑顔もいつもより輝いている。

 冊子をヘラ母さんに渡すと、ガルーダとニルちゃんを連れて颯爽と孤児院に帰っていった。
 風や太陽が重要っぽかったけど、ガルーダがいるから大丈夫だろう。

 あっ、ヘラ母さんと結婚したのか聞きそびれた。
 だってね、もしもそうならガルーダは僕の……お父さん?
 二人の養子になったニルちゃんは僕のお兄ちゃん???

 混乱してきた。
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