375 / 1,127
ダンジョン
第373話
しおりを挟む
お迎えに行ったら我が家の幼児が二人ほど死体と化していた。
アー君は地面に倒れ伏し「もうやらない、絶対やらない」と呪文のようにブツブツ呟き、雷ちゃんはそんなアー君を枕にぐったり、シャムスは思う存分スライムを作れた上、皆に喜ばれてにこにこ、笑顔も輝いている。
「シャムスのスライム、今日のはどんな効果があるのかな?」
「ぷるるん、ひんやりなのよ」
暑い夜に最適だね。
転生して数年、今更だけどこの国に温度差ってあるのかな、ずっと快適なままで暮らしている気がするけどどうなんだろう?
「あと心がふんわりするの」
「まさかの癒し効果」
「寒い時はほかほか、あとねあとね」
拙い言葉で一生懸命解説されたのは、おまけに使われたシャムスのスライムの恐るべき高性能さだった。
多分兄弟の中でトップクラス。
名前を付けて大事にすれば多少育てる事が可能。
運よく他の神様の加護をもらえればそれだけ強くなるし、もしかしたら魔法を使うぐらいの芸当は可能になる可能性も秘めている。
攻守どちらに育つかは持ち主次第、ただひたすら大事に甘やかしても問題ない、その場合は癒しがひたすら伸びていくだけのようだ。
さっきの後輩冒険者の子はどっちに育つんだろうか。
「お疲れ様でした。差し入れです」
「あ、あまいもの」
「金より甘い物!」
『なんだろなー?』
マシュー君が合図するとさーっと亜人の魔物さんが現れて簡易テーブルをセット、幼児用サイズの湯飲み茶わんとお菓子が置かれた。
あ、あれは!!
「ふふ、運営資金が潤沢になり、砂糖を大量に使えるようになったら女神様の信託が降りましてそれを参考に作られたお菓子です」
権力の乱用っていうよりは神託の乱用?
いや、子供達の収入になるから良い事なのかな?
「カリカリね」
「お茶うまー、ホッとする」
「これはいいな、この小さな手でも持ちやすくて食べやすい。甘さが心身に沁みる」
細長くて長さ数センチ、濃い茶色のそのお菓子はまさかのかりん糖。
一人一個ついている丸いお菓子はかりん糖まんじゅう、もちろんどちらも女神様に奉納済みのようです。
お茶はすぐ飲める幼児に優しい温度の緑茶。
お茶の葉はレイアさんにお願いされて領地の一部で栽培を始めたばかりなんだって、知り合いの神様達の子供使いの荒さよ。
ちなみにイネスはすでに受け取り、少し離れた所でラーシャの膝の上で食べさせてもらっていた。
「マシュー君、色々仕事が増えたみたいだけど、人手足りてる? 勉強に支障ない?」
「実はシャムス様のスライムの力をお借りしています」
「ん?」
「摘み取りから乾燥まで、全てスライムが行っているんです。とても便利ですし、安価で提供できるのでもう笑いが止まらないです」
本当にシャムスのスライム万能だな、出汁スライムも驚いたけど、お茶の精製までしちゃうのか、きっと間に色々難しい工程あるだろうに、さすがご都合主義な世界。
「今は畑を広げて、お茶の種類を増やそうとしている所です。高級品を開発して他国の貴族からお金をむしり取ろうかなと」
マシュー君の発言が黒い。
やれやれ、でも今日はこれでお終いかなー、さすがにもう何も起こらないだろう。
今日も濃い一日だったなー。
「イツキ、でっかい鶏ガラ拾った!!」
だめか、知ってた。
さて神薙さんは何を拾って来たのかな?
アー君は地面に倒れ伏し「もうやらない、絶対やらない」と呪文のようにブツブツ呟き、雷ちゃんはそんなアー君を枕にぐったり、シャムスは思う存分スライムを作れた上、皆に喜ばれてにこにこ、笑顔も輝いている。
「シャムスのスライム、今日のはどんな効果があるのかな?」
「ぷるるん、ひんやりなのよ」
暑い夜に最適だね。
転生して数年、今更だけどこの国に温度差ってあるのかな、ずっと快適なままで暮らしている気がするけどどうなんだろう?
「あと心がふんわりするの」
「まさかの癒し効果」
「寒い時はほかほか、あとねあとね」
拙い言葉で一生懸命解説されたのは、おまけに使われたシャムスのスライムの恐るべき高性能さだった。
多分兄弟の中でトップクラス。
名前を付けて大事にすれば多少育てる事が可能。
運よく他の神様の加護をもらえればそれだけ強くなるし、もしかしたら魔法を使うぐらいの芸当は可能になる可能性も秘めている。
攻守どちらに育つかは持ち主次第、ただひたすら大事に甘やかしても問題ない、その場合は癒しがひたすら伸びていくだけのようだ。
さっきの後輩冒険者の子はどっちに育つんだろうか。
「お疲れ様でした。差し入れです」
「あ、あまいもの」
「金より甘い物!」
『なんだろなー?』
マシュー君が合図するとさーっと亜人の魔物さんが現れて簡易テーブルをセット、幼児用サイズの湯飲み茶わんとお菓子が置かれた。
あ、あれは!!
「ふふ、運営資金が潤沢になり、砂糖を大量に使えるようになったら女神様の信託が降りましてそれを参考に作られたお菓子です」
権力の乱用っていうよりは神託の乱用?
いや、子供達の収入になるから良い事なのかな?
「カリカリね」
「お茶うまー、ホッとする」
「これはいいな、この小さな手でも持ちやすくて食べやすい。甘さが心身に沁みる」
細長くて長さ数センチ、濃い茶色のそのお菓子はまさかのかりん糖。
一人一個ついている丸いお菓子はかりん糖まんじゅう、もちろんどちらも女神様に奉納済みのようです。
お茶はすぐ飲める幼児に優しい温度の緑茶。
お茶の葉はレイアさんにお願いされて領地の一部で栽培を始めたばかりなんだって、知り合いの神様達の子供使いの荒さよ。
ちなみにイネスはすでに受け取り、少し離れた所でラーシャの膝の上で食べさせてもらっていた。
「マシュー君、色々仕事が増えたみたいだけど、人手足りてる? 勉強に支障ない?」
「実はシャムス様のスライムの力をお借りしています」
「ん?」
「摘み取りから乾燥まで、全てスライムが行っているんです。とても便利ですし、安価で提供できるのでもう笑いが止まらないです」
本当にシャムスのスライム万能だな、出汁スライムも驚いたけど、お茶の精製までしちゃうのか、きっと間に色々難しい工程あるだろうに、さすがご都合主義な世界。
「今は畑を広げて、お茶の種類を増やそうとしている所です。高級品を開発して他国の貴族からお金をむしり取ろうかなと」
マシュー君の発言が黒い。
やれやれ、でも今日はこれでお終いかなー、さすがにもう何も起こらないだろう。
今日も濃い一日だったなー。
「イツキ、でっかい鶏ガラ拾った!!」
だめか、知ってた。
さて神薙さんは何を拾って来たのかな?
20
お気に入りに追加
352
あなたにおすすめの小説
誰よりも愛してるあなたのために
R(アール)
BL
公爵家の3男であるフィルは体にある痣のせいで生まれたときから家族に疎まれていた…。
ある日突然そんなフィルに騎士副団長ギルとの結婚話が舞い込む。
前に一度だけ会ったことがあり、彼だけが自分に優しくしてくれた。そのためフィルは嬉しく思っていた。
だが、彼との結婚生活初日に言われてしまったのだ。
「君と結婚したのは断れなかったからだ。好きにしていろ。俺には構うな」
それでも彼から愛される日を夢見ていたが、最後には殺害されてしまう。しかし、起きたら時間が巻き戻っていた!
すれ違いBLです。
初めて話を書くので、至らない点もあるとは思いますがよろしくお願いします。
(誤字脱字や話にズレがあってもまあ初心者だからなと温かい目で見ていただけると助かります)
【完結】伴侶がいるので、溺愛ご遠慮いたします
*
BL
3歳のノィユが、カビの生えてないご飯を求めて結ばれることになったのは、北の最果ての領主のおじいちゃん……え、おじいちゃん……!?
しあわせの絶頂にいるのを知らない王子たちが吃驚して憐れんで溺愛してくれそうなのですが、結構です!
めちゃくちゃかっこよくて可愛い伴侶がいますので!
本編完結しました!
時々おまけを更新しています。
王子様のご帰還です
小都
BL
目が覚めたらそこは、知らない国だった。
平凡に日々を過ごし無事高校3年間を終えた翌日、何もかもが違う場所で目が覚めた。
そして言われる。「おかえりなさい、王子」と・・・。
何も知らない僕に皆が強引に王子と言い、迎えに来た強引な婚約者は・・・男!?
異世界転移 王子×王子・・・?
こちらは個人サイトからの再録になります。
十年以上前の作品をそのまま移してますので変だったらすみません。
王子なのに戦場の聖域で好き勝手ヤってたら獣人に飼われました
サクラギ
BL
戦場で共に戦う者たちを慰める場所、聖域がある。そこでは国も身分も関係なく集うことができた。
獣人と戦士が書きたいだけで始めました。独りよがりなお話をお許し下さいます方のみお進みください。
田舎育ちの天然令息、姉様の嫌がった婚約を押し付けられるも同性との婚約に困惑。その上性別は絶対バレちゃいけないのに、即行でバレた!?
下菊みこと
BL
髪色が呪われた黒であったことから両親から疎まれ、隠居した父方の祖父母のいる田舎で育ったアリスティア・ベレニス・カサンドル。カサンドル侯爵家のご令息として恥ずかしくない教養を祖父母の教えの元身につけた…のだが、農作業の手伝いの方が貴族として過ごすより好き。
そんなアリスティア十八歳に急な婚約が持ち上がった。アリスティアの双子の姉、アナイス・セレスト・カサンドル。アリスティアとは違い金の御髪の彼女は侯爵家で大変かわいがられていた。そんなアナイスに、とある同盟国の公爵家の当主との婚約が持ちかけられたのだが、アナイスは婿を取ってカサンドル家を継ぎたいからと男であるアリスティアに婚約を押し付けてしまう。アリスティアとアナイスは髪色以外は見た目がそっくりで、アリスティアは田舎に引っ込んでいたためいけてしまった。
アリスは自分の性別がバレたらどうなるか、また自分の呪われた黒を見て相手はどう思うかと心配になった。そして顔合わせすることになったが、なんと公爵家の執事長に性別が即行でバレた。
公爵家には公爵と歳の離れた腹違いの弟がいる。前公爵の正妻との唯一の子である。公爵は、正当な継承権を持つ正妻の息子があまりにも幼く家を継げないため、妾腹でありながら爵位を継承したのだ。なので公爵の後を継ぐのはこの弟と決まっている。そのため公爵に必要なのは同盟国の有力貴族との縁のみ。嫁が子供を産む必要はない。
アリスティアが男であることがバレたら捨てられると思いきや、公爵の弟に懐かれたアリスティアは公爵に「家同士の婚姻という事実だけがあれば良い」と言われてそのまま公爵家で暮らすことになる。
一方婚約者、二十五歳のクロヴィス・シリル・ドナシアンは嫁に来たのが男で困惑。しかし可愛い弟と仲良くなるのが早かったのと弟について黙って結婚しようとしていた負い目でアリスティアを追い出す気になれず婚約を結ぶことに。
これはそんなクロヴィスとアリスティアが少しずつ近づいていき、本物の夫婦になるまでの記録である。
小説家になろう様でも2023年 03月07日 15時11分から投稿しています。
転生したら魔王の息子だった。しかも出来損ないの方の…
月乃
BL
あぁ、やっとあの地獄から抜け出せた…
転生したと気づいてそう思った。
今世は周りの人も優しく友達もできた。
それもこれも弟があの日動いてくれたからだ。
前世と違ってとても優しく、俺のことを大切にしてくれる弟。
前世と違って…?いいや、前世はひとりぼっちだった。仲良くなれたと思ったらいつの間にかいなくなってしまった。俺に近づいたら消える、そんな噂がたって近づいてくる人は誰もいなかった。
しかも、両親は高校生の頃に亡くなっていた。
俺はこの幸せをなくならせたくない。
そう思っていた…
黒豹拾いました
おーか
BL
森で暮らし始めたオレは、ボロボロになった子猫を拾った。逞しく育ったその子は、どうやら黒豹の獣人だったようだ。
大人になって独り立ちしていくんだなぁ、と父親のような気持ちで送り出そうとしたのだが…
「大好きだよ。だから、俺の側にずっと居てくれるよね?」
そう迫ってくる。おかしいな…?
育て方間違ったか…。でも、美形に育ったし、可愛い息子だ。拒否も出来ないままに流される。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる