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ダンジョン

第338話

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 女神様に『天彗龍』と名付けられたドラゴンは、僕をさらって雷ちゃんのダンジョンに逃亡。
 恐らく救出隊が向かっているだろう状況で一晩中愛されました。

 腐女神の呪い半端ない。

「神子、あーん」

 一晩経ったら光も収まり、ようやく落ち着いて彼を観察する余裕が出来ました。
 僕はシーツを羽織っただけ、相手はズボンを履いただけの状態だから観察し放題、むしろそれしかやる事ないんだよね、腰抜けて動けないし。
 今も膝の上に横に座らされ、口にダンジョン産の果物を運ばれている。

 恐らくアー君の趣味が反映されたんだろう、バランスの取れた筋肉、芸術的なシックスパック、黒い髪は夜空を映したかのようにとっても綺麗、瞳の色は透明から僕と同じ黒色になっていた。
 「お揃い」って言ったら暴走されて大変だったなぁ。
 
 素直に口を開けると嬉しそうに尻尾でベッドを叩くのが可愛いと思います、ええ、尻尾があったんですよ、あとファンタジーで魔王にありそうな禍々しい角もあった。
 店頭でCMを見た事あるけれど、あの姿とはちょいちょい違う所もあるのはアー君と雷ちゃんが他のモンスターもイメージしてたんだろうな。

 未完成の状態で、事故のような流れで命を持ち、急速な進化を遂げた。
 つまりまぁ、どんな攻撃繰り出すか分からない未知の生命体って言うかね。
 神薙さんとかレイアさん、騎士様ならどうにかなるのだろうか。

「外の空気吸いたい」
「うん」

 一度僕を下ろし、黒衣をまとうと抱き上げられた。
 動けないから仕方がない、動けても同じだった気がするけど気にしない。

 怖いこと、痛いことは一切されない。
 甘やかされて気持ちいことばかり、ある程度の言葉も聞いてくれる。

 逃亡するようなスキルも能力を持っていないのもあるのだろうけど、この子は僕には絶対に敵意を向けない、愛しいという感情だけを注いでくる。
 そう言えばヘラ母さんも最初から僕は攻撃対象外だったな、他のモンスターもそう言えば僕に敵意は向けて来なかったような。

 製作者は我が家の幼児三人。
 もしかして、無意識に僕を攻撃対象から外したのかな?

 そう考えると何か照れる。

 バルコニーに出ると、僕を抱えたまま変化して飛び上がった。

「わぁ凄い」

 最初は草原だった地はちょっとした遺跡風になっていた。

 木がのそのそと歩いているのはトレントかな?
 他にも泉があったり、岩が積み上げられているだけの箇所も……と思ったら、トレントや他のモンスターが岩を運んでいました。
 地形デザイン中みたいです。

「神子、あれ愛の巣」

 飛びながら器用に翼で示された先には絶壁の上に建つファンタジーなお城。
 ゴーレムやオーガなどのパワー系モンスターが崖を削り、他のモンスターがその土や岩を運んでいた。

 あそこにいたのかぁ、普通に僕じゃ逃亡無理だねー。
 逃げる体力もないけど。

「城の周り、湖にする、神子泳げる」

 水はこれから入れるらしい。
 僕が泳ぐためだけに湖作るとか、甘やかし過ぎじゃなかろうか。

「何か望みあるか? 私、このダンジョンの王、なんでも叶える」

 僕の知らぬ間にダンジョンを制圧したらしい。

 雷ちゃん……乗っ取られているよ。
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