上 下
322 / 1,127
可愛い子には旅をさせよ

第320話

しおりを挟む
 僕がアカーシャに食べられている間、誰も部屋に入って来なかったのには訳がありました。
 僕のお部屋の扉が封印されていて、廊下側の扉も、庭側も開かなかったのが原因。

 シャムスにお願いされてアー君が開けようとはしたのだけど開かなかったらしい、エロい事に関しては管理者権限を乱用することを厭わないってどうなんだろう。

 ってことで、犯人はアイツだ!

「アー君お願いします!」

 時代劇の「先生お願いします」のノリで言ってみたらアー君がノッてくれた。

「宴会出禁期間延長!」

 ぎゃぁぁぁぁぁ

 悪役のボスのやられた時のような声が響いた。
 ノリがいいのか、本当に衝撃を受けたのか、どちらだろう。

「まったく、シャムスのおやつの時間だと言うのに」

 ふんすと鼻息荒くアー君が食べているのは本日のおやつであるゼリー、この前プリンを出したら好評だったので、ゼリーを提供したらこちらも気に入ったみたい。

『とーうんのお仕事でも出したらおいし?』
「材料さえ手に入れば問題ないと思う」
「いざとなれば我が何とかしてやろう」
「うん?」
「母上、シャムスがこのゼリーを城の食堂でも出せないかと言っている」

 ゼリーの作り方は簡単だ。
 ゼラチンをお湯に溶かして色々入れるだけ、問題は……。

「ゼラチンってあるのかしら」

 我が家で提供できるのはメニュー画面とドリちゃんがいるから、これを我が家以外で提供するとなるとこの世界にある食材で再現するか、騎士様やクロードさんなどの権力で食材を異世界から輸入するしかない。
 この方法を取ると値段が跳ね上がるけどね。

 うーんと首を捻っていたらドリアンにメモを渡された。

「ゼラチンの原材料は動物の骨や皮なんだ、知らなかった」
「つまり手に入れる事は可能なんだな、聞いたかシャムス、雷ちゃん!」
『あい!』
「ないなら作れば良いじゃないか、やろう」

 ダンジョン行くなら保護者を――と言おうとした僕の前で、シャムスがアイテムボックスから魔物の骨を取り出し、雷ちゃんが電撃を食らわせた。

「原材料さえ分かればこちらのもの!」
「うむ、どうだ!」
『かっこいー』

 チートって凄いね、ゼラチンが一瞬ですよ。
 なぜか皮袋に入っているけど。

 作ったというよりドロップしたって感じかな?
 相変わらず世界観がカオスだなぁ。

「アカーシャ様なにやら美味しそうなものを食べております!」
「本当だ」

 幼児三人がキャッキャッとしている所にアカーシャを背に乗せた佐助が現れた。
 やっと帰って来たアカーシャに歓喜した佐助は過保護が悪化し、コモドドラゴン姿でアカーシャを背に乗せて移動する姿が見られるようになった。

 才蔵もイブも呆れた目を向けたものの、まぁいいかと放置する事にしたようだ。

『ドリちゃんこれでゼリー作ってー』
「ソーダ風味!」
「このマンゴーを使ってくれ!」

 雷ちゃんが掲げたマンゴーは太陽のように輝いていた。

 あれ絶対にこの世界のマンゴーじゃないな。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

完結・虐げられオメガ側妃なので敵国に売られたら激甘ボイスのイケメン王に食べられました

美咲アリス
BL
虐げられオメガ側妃のシャルルは敵国への貢ぎ物にされた。敵国のアルベルト王は『人間を食べる』という恐ろしい噂があるアルファだ。けれども実際に会ったアルベルト王はものすごいイケメン。しかも「今日からそなたは国宝だ」とシャルルに激甘ボイスで囁いてくる。「もしかして僕は国宝級の『食材』ということ?」シャルルは恐怖に怯えるが、もちろんそれは大きな勘違いで⋯⋯? 虐げられオメガと敵国のイケメン王、ふたりのキュン&ハッピーな異世界恋愛オメガバースです!

転移したらなぜかコワモテ騎士団長に俺だけ子供扱いされてる

塩チーズ
BL
平々凡々が似合うちょっと中性的で童顔なだけの成人男性。転移して拾ってもらった家の息子がコワモテ騎士団長だった! 特に何も無く平凡な日常を過ごすが、騎士団長の妙な噂を耳にしてある悩みが出来てしまう。

「今夜は、ずっと繋がっていたい」というから頷いた結果。

猫宮乾
BL
 異世界転移(転生)したワタルが現地の魔術師ユーグと恋人になって、致しているお話です。9割性描写です。※自サイトからの転載です。サイトにこの二人が付き合うまでが置いてありますが、こちら単独でご覧頂けます。

王子様のご帰還です

小都
BL
目が覚めたらそこは、知らない国だった。 平凡に日々を過ごし無事高校3年間を終えた翌日、何もかもが違う場所で目が覚めた。 そして言われる。「おかえりなさい、王子」と・・・。 何も知らない僕に皆が強引に王子と言い、迎えに来た強引な婚約者は・・・男!? 異世界転移 王子×王子・・・? こちらは個人サイトからの再録になります。 十年以上前の作品をそのまま移してますので変だったらすみません。

【完結】伴侶がいるので、溺愛ご遠慮いたします

  *  
BL
3歳のノィユが、カビの生えてないご飯を求めて結ばれることになったのは、北の最果ての領主のおじいちゃん……え、おじいちゃん……!? しあわせの絶頂にいるのを知らない王子たちが吃驚して憐れんで溺愛してくれそうなのですが、結構です! めちゃくちゃかっこよくて可愛い伴侶がいますので! 本編完結しました! 時々おまけを更新しています。

嫁側男子になんかなりたくない! 絶対に女性のお嫁さんを貰ってみせる!!

棚から現ナマ
BL
リュールが転生した世界は女性が少なく男性同士の結婚が当たりまえ。そのうえ全ての人間には魔力があり、魔力量が少ないと嫁側男子にされてしまう。10歳の誕生日に魔力検査をすると魔力量はレベル3。滅茶苦茶少ない! このままでは嫁側男子にされてしまう。家出してでも嫁側男子になんかなりたくない。それなのにリュールは公爵家の息子だから第2王子のお茶会に婚約者候補として呼ばれてしまう……どうする俺! 魔力量が少ないけど女性と結婚したいと頑張るリュールと、リュールが好きすぎて自分の婚約者にどうしてもしたい第1王子と第2王子のお話。頑張って長編予定。他にも投稿しています。

【完結】囚われの親指王子が瀕死の騎士を助けたら、王子さまでした。

竜鳴躍
BL
サンベリルは、オレンジ色のふわふわした髪に菫色の瞳が可愛らしいバスティン王国の双子の王子の弟。 溺愛する父王と理知的で美しい母(男)の間に生まれた。兄のプリンシパルが強く逞しいのに比べ、サンベリルは母以上に小柄な上に童顔で、いつまでも年齢より下の扱いを受けるのが不満だった。 みんなに溺愛される王子は、周辺諸国から妃にと望まれるが、遠くから王子を狙っていた背むしの男にある日攫われてしまい――――。 囚われた先で出会った騎士を介抱して、ともに脱出するサンベリル。 サンベリルは優しい家族の下に帰れるのか。 真実に愛する人と結ばれることが出来るのか。 ☆ちょっと短くなりそうだったので短編に変更しました。→長編に再修正 ⭐残酷表現あります。

性悪なお嬢様に命令されて泣く泣く恋敵を殺りにいったらヤられました

まりも13
BL
フワフワとした酩酊状態が薄れ、僕は気がつくとパンパンパン、ズチュッと卑猥な音をたてて激しく誰かと交わっていた。 性悪なお嬢様の命令で恋敵を泣く泣く殺りに行ったら逆にヤラれちゃった、ちょっとアホな子の話です。 (ムーンライトノベルにも掲載しています)

処理中です...