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可愛い子には旅をさせよ

第304話

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 じゅわじゅわと音を立てながら肉が焼けている。

 刀雲とルーク達が川で獲ってきた魚は内臓を取り払って串に刺し、網の上に並べて焼かれている。
 他には魚や肉、野菜各種、貝類などがずらり。

 鉄板では焼きそば、お好み焼き、魚のホイル焼き、ハンバーグやホタテのバター焼きなど。
 ホタテやサザエ、カキはギレンからの差し入れ。

 庵と辺り一帯を管理しているドンの一族の人達が総出で焼いてくれている。
 神薙さんの食べる量と速度考えるとギリギリ足りるかな?

 でも鉄板かぁ、鉄板でお皿が作れたらお城のメニューにグリルが追加出来るんだけどなぁ、こういうの誰に頼めばいいんだろうか?
 我が家で使ってるのって周囲の権力使ったり、ドリちゃんのお手製だったりするから細かい事分からないんだよね。

「あれ? 刀雲、イブは? 一緒じゃないの?」

 佐助と才蔵について行っちゃったとか?
 あの二人は港のギルドにクエスト受けに行ったんだよね、ちょっとお小遣いを稼いで城に缶詰になっているアカーシャ達にお土産を買うんだって。

「イブならヨムちゃんと白ちゃんと一緒に漁に行ったよ」
「騎士様、報連相!!」
「ごめーん」

 結構バラバラに行動しているから、こういう時ヒヤッとする。
 
「レア美味しい」

 こんな時でも神薙さんはブレません。
 貝なんて殻ごとだ。

「ラーシャ、海老! 海老が!」
「待って、暴れないで、今貰うから!」

 家族の無事を確認した所でイネスが暴れ出した。こちらは被害はラーシャだけなので問題ないかな?

「この肉、中にチーズが仕込んである!」
「神薙さーん、野菜も食べてくださいねー!」
「……」

 肉を片っ端から食べる神薙さんに呼びかけたら、目線を逸らされ聞こえないふりをされました。
 明日の朝食はサラダ三昧にしてやる。

「罪人のチーズ揚げを出したら召し上がってくださるだろうか」
「念のためにお聞きしますがどんな料理ですか?」
「まずチーズを入れた鍋を用意し、罪人を鍋の中に落とします」
「教育に悪いので止めてください」

 隣で怖い事言わないで下さい。
 ドンって見た目だけじゃなく中身も怖い時があるね、さすが邪神信者。

「……何か、来る」

 騎士様が海を見ながら眉間に皺を寄せた。

「あるじ魚とって」
「うん、ちょっと待とうね」
「雷、こっちおいで」
「いいだろう人間、世話をさせてやる」

 偉そうに言いながら雷ちゃんが刀雲に抱っこされた。
 「あるじより貧相だ」とか「あるじより魔力が少ない」と文句を言いながら、ほどよく冷まされた魚を食べさせてもらっている。

 人類から一歩踏み外したかもしれない刀雲と、そもそも人類じゃない上にチートの塊の騎士様を比べる方が間違っていると思うのです。
 嫌いなものが出てきたらセットにして出しちゃおうかな。

「ふふん、腕のあんていかんは褒めてやろう」
「はいはい次はお好み焼きだよ」

 さすが大家族の家長、雷ちゃんの言葉は聞き流してご飯を食べさせている。

「刀雲悪い、少し雷ちゃんをお願い」
「構わない」

 毎日のように一緒に釣りに行った効果か、二人がかなり親し気だ。
 前は刀雲がどこか一歩引いた所あったのに……良かったね騎士様。

「飲み物は何がいいかな」
「酒」
「果実水を」
「けち臭い人間だな!」
「はいどうぞ」
「んくんく」

 刀雲ってイクメンの鏡だよね。

「……俺、疲れてるのかな、海の上を戦車が走ってこっち来る」

 騎士様の呟きが聞こえたらしく視線が一斉に海に向けられた。

「しかも先頭に陣取ってるのってレイアだ」

 本当だ、海の上を戦車が走っておる。
 しかも戦車を引いてる馬、半馬半魚なんですけど、神話とかにいたような気がする。
 女神様いれば名前一発で出て来るんだけどな~。

『かあしゃまーーー!』
「肉ーー!」
「……っ!!」

 その声が聞こえた瞬間、僕は海に向かって走り出していた。
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