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可愛い子には旅をさせよ
第286話
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馬車に乗り込んだ僕らは市場に無事到着。
もうじきつくぞと言われ、好奇心から窓の外を見たら中世やゲームの世界でみるような露店が立ち並び、色々な野菜や果物、魚が売られていた。
「わぁ凄い」
「ふっ、刀国で使われている食材でここで手に入らないものはない」
ギレンがドヤ顔をしている。これはレアかもしれない。
ん?
食材だ。
加工してない。
屋台みたいに料理されたものは全く売られてない、ね。
「食い物は港側だ。ここは食材売り場でそれ以外は売ってない」
「なるほど、売り場を分けているんだね」
「スーパーを参考にした」
地球の知識を遺憾なく発揮しているようだ。
「えー食べ物ないの?」
ブーイングは神薙さんです。
「ギレン港まで行こう、食べ物コーナー行こう」
「え」
「試食品コーナーでもいい、とにかく食べれる物がある場所で降りようね」
「分かった」
そんな訳で馬車は止まらずに進む事に。
「領主様!」
「ギレン様!!」
「悪い、止まるぞ」
「うん」
馬車が停止してギレンが降りると、ローマっぽいファッションの男性がギレンの足元に土下座したではありませんか。
って言うかギレンって領主だったんだね。
「俺の嫁が、倒れて、出血が、ひど、ひどくて――助けてください」
土下座し続ける男性の少し離れた所には人だかりが出来ていて、地面に誰か倒れているのがわかった。血も流れてる。
ヨムちゃん曰く、彼は露店の店主で朝が早いためにいつもお嫁さんがお弁当を持ってきてくれるらしい、そのお嫁さんがいきなり産気付いてしまったらしい。
司祭は呼びに行ったけれど、回復を使える司祭は港常駐のため時間がかかる。
「全部覚えてるの?」
「勉強した!」
偉い、凄い、撫でて褒め称えたいけどそんな場面ではないのはさすがに分かる。
馬車に乗せて港まで運ぶのはどうだろう、提案しようと思って馬車から降りたら邪神親子も付いてきてしまった。
「しっかりしろ、今、司祭様が、来てくれるからな」
「出血が酷い、誰か洗浄魔法を」
「その人間助からないよ。僕が食べてあげようか?」
場の空気を読まない邪神らしい冷静なコメントですね。
魂は浄化され、親子で輪廻に入れるので来世も親子でハッピーエンド……じゃないですよ。
普通ならふざけるなと殴られてもおかしくないセリフ、だけど相手が神薙さんですからね、下を向いて震えながら堪えているようです。
「今なら苦痛知らず」
「父上凄い、一口でいけるのか」
感動する場面じゃないからね。
「うーん……でも」
首を傾げながらヨムちゃんが妊婦さんに近付くと、自然と周囲の人が道を開けてくれた。
「助けた方がままは喜ぶよな」
そう言って妊婦さん横に跪き、その手を握った。
「大丈夫だ。おれが助けてやる」
ヨムちゃんは間違いなく神薙さんの血を引いている邪神、決して善神ではない、はず。
ぽぅっとヨムちゃんの身体が淡く光った次の瞬間、すっぽーーんと擬音が付きそうな勢いで子供が産まれました。
うちの子凄い。
「えっへん、おれ凄い?」
「凄すぎる。どんな奇跡起こしたの?」
褒めてー!と抱き着いて来たヨムちゃんを抱きしめ、神薙さんと二人で撫で回す。
妊婦さんは意識を取り戻し、生まれたばかりの我が子を抱きしめ、旦那さんはおんおん泣き、周囲の見守っていた人達はあごが外れそうな勢いで呆然としている。
「ままのスキルと、兄上の力を借りた」
「僕?」
「ままからは安産だろ、アルジュナ兄上からは聖属性」
「聖属性ってそんな効果あったっけ?」
「なかったっけ?」
「どうだろ」
あ、三匹がレイアさんの加護持ってるし、その辺りが関係している可能性あるかも。
さすが雑な世界観、ふわっとしてる!
この奇跡がきっかけでヨムちゃんは港街を中心に『安産の神』として崇められるようになった。
騎士様も流石に予想外だろうな。
もうじきつくぞと言われ、好奇心から窓の外を見たら中世やゲームの世界でみるような露店が立ち並び、色々な野菜や果物、魚が売られていた。
「わぁ凄い」
「ふっ、刀国で使われている食材でここで手に入らないものはない」
ギレンがドヤ顔をしている。これはレアかもしれない。
ん?
食材だ。
加工してない。
屋台みたいに料理されたものは全く売られてない、ね。
「食い物は港側だ。ここは食材売り場でそれ以外は売ってない」
「なるほど、売り場を分けているんだね」
「スーパーを参考にした」
地球の知識を遺憾なく発揮しているようだ。
「えー食べ物ないの?」
ブーイングは神薙さんです。
「ギレン港まで行こう、食べ物コーナー行こう」
「え」
「試食品コーナーでもいい、とにかく食べれる物がある場所で降りようね」
「分かった」
そんな訳で馬車は止まらずに進む事に。
「領主様!」
「ギレン様!!」
「悪い、止まるぞ」
「うん」
馬車が停止してギレンが降りると、ローマっぽいファッションの男性がギレンの足元に土下座したではありませんか。
って言うかギレンって領主だったんだね。
「俺の嫁が、倒れて、出血が、ひど、ひどくて――助けてください」
土下座し続ける男性の少し離れた所には人だかりが出来ていて、地面に誰か倒れているのがわかった。血も流れてる。
ヨムちゃん曰く、彼は露店の店主で朝が早いためにいつもお嫁さんがお弁当を持ってきてくれるらしい、そのお嫁さんがいきなり産気付いてしまったらしい。
司祭は呼びに行ったけれど、回復を使える司祭は港常駐のため時間がかかる。
「全部覚えてるの?」
「勉強した!」
偉い、凄い、撫でて褒め称えたいけどそんな場面ではないのはさすがに分かる。
馬車に乗せて港まで運ぶのはどうだろう、提案しようと思って馬車から降りたら邪神親子も付いてきてしまった。
「しっかりしろ、今、司祭様が、来てくれるからな」
「出血が酷い、誰か洗浄魔法を」
「その人間助からないよ。僕が食べてあげようか?」
場の空気を読まない邪神らしい冷静なコメントですね。
魂は浄化され、親子で輪廻に入れるので来世も親子でハッピーエンド……じゃないですよ。
普通ならふざけるなと殴られてもおかしくないセリフ、だけど相手が神薙さんですからね、下を向いて震えながら堪えているようです。
「今なら苦痛知らず」
「父上凄い、一口でいけるのか」
感動する場面じゃないからね。
「うーん……でも」
首を傾げながらヨムちゃんが妊婦さんに近付くと、自然と周囲の人が道を開けてくれた。
「助けた方がままは喜ぶよな」
そう言って妊婦さん横に跪き、その手を握った。
「大丈夫だ。おれが助けてやる」
ヨムちゃんは間違いなく神薙さんの血を引いている邪神、決して善神ではない、はず。
ぽぅっとヨムちゃんの身体が淡く光った次の瞬間、すっぽーーんと擬音が付きそうな勢いで子供が産まれました。
うちの子凄い。
「えっへん、おれ凄い?」
「凄すぎる。どんな奇跡起こしたの?」
褒めてー!と抱き着いて来たヨムちゃんを抱きしめ、神薙さんと二人で撫で回す。
妊婦さんは意識を取り戻し、生まれたばかりの我が子を抱きしめ、旦那さんはおんおん泣き、周囲の見守っていた人達はあごが外れそうな勢いで呆然としている。
「ままのスキルと、兄上の力を借りた」
「僕?」
「ままからは安産だろ、アルジュナ兄上からは聖属性」
「聖属性ってそんな効果あったっけ?」
「なかったっけ?」
「どうだろ」
あ、三匹がレイアさんの加護持ってるし、その辺りが関係している可能性あるかも。
さすが雑な世界観、ふわっとしてる!
この奇跡がきっかけでヨムちゃんは港街を中心に『安産の神』として崇められるようになった。
騎士様も流石に予想外だろうな。
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