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可愛い子には旅をさせよ

第282話

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 何かを察した女神様からプレゼントをもらった。

 白いふわもこのワンコ耳+尻尾付きパーカー。
 朝起きたらイブとお揃いで枕元に置いてありました。

「イツキ、可愛い」
「わふわふ」
「お揃い」

 無表情に近い顔でほんのりと喜ぶイブが可愛くて返品できません。

 表面はふわふわもこもこしているけど、通気性が良くてさらっとした肌触り。
 効果は日焼け止め。

「銀狼が六匹、可愛いな」
「刀雲の分も欲しい!」
「俺は遠慮しておくよ」

 苦笑いしながら頭を撫でられた。

「イツキ、出発する?」

 そわそわしながら神薙さんが部屋に入ってきた。
 なぜ僕の部屋に集まるのかな?

「神薙、まだ朝早いよ」

 後ろには苦笑いする騎士様、これ、主を足代わりにするつもりだ。

「朝釣り」
「神薙の場合は海水ごとだからちょっと違うんじゃないか?」
「休暇って、いいですね」

 当たり前のように姿を現したのは上品なワンピースを着、麦わら帽子をかぶった女神様、中身を知っていても一瞬どこのお嬢様かと思ってしまった。
 え、もしかして一緒に行く気?

「主様と海休暇……ぐへへ」

 一緒に行く気らしい。
 パーカーは賄賂か、賄賂なんですね。

 神子に賄賂を渡す女神ってどうなんだろう。

「この長期休暇は『女神の休暇』とも呼ばれているのよ、つまり――私も休みぃぃl!!」

 猫かぶりの継続が3分以下。
 女神様、しょっちゅう休んでますよね。

「主様、主様、早く」
「はいはい、じゃあドリちゃん行ってくるね」
「いってらっしゃいませ」

 ちょっと待った。

 ドリちゃん喋れたの!?

 驚いて目を見開いている間に景色が切り替わった。
 ドリアン達が並んで見送ってくれたので、あれはドリアンの声だったのかもしれない、あの子達カタコトなら単語喋れるし。

「は? 主様!? え、まだ早朝ですよ」

 出たのは庭園。
 ギレンが上半身裸で素振りをしている所だった。

 良かった真っ最中に乱入する予想もしてたけど、何もなくて良かった。
 女神様は残念そうに舌打ちしたけど。

「ギレンご飯」
「は?」
「お腹空いた、朝食」
「いや食べて来いよ」
「接待」
「だから」
「お腹空いた」

 神薙さんの圧が凄い。

 もう仕方ないなぁ。
 僕がごそごそ始めた時点でイブが無限仕様の鞄から敷布を取り出し地面に敷き、ルークが簡易テーブル、刀雲がジョッキに入ったお茶をセットしてくれた。
 僕の家族の連係が素晴らしい。

「騎士様、このおにぎりに魔力込めて貰っていいですか?」
「はいよ~」

 ドリちゃんが限界に挑戦した圧縮おにぎり・直径30センチに、騎士様の魔力を込めてもらいます。
 するとあら不思議、神薙さんでも瞬殺出来ない奇跡のおにぎりが完成。

 お皿の上にそっと置き、次に神薙さんに声を掛けます。

「神薙さんご飯ですよ」
「!」

 滑るように席に着き、にこにこと食べ始める神薙さん。

 ギレン、呆れたように溜息吐いてないで、今のうちに朝食の用意お願いね。
 これ食べ終わるまでの時間は多分30分ぐらいだよ。
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