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可愛い子には旅をさせよ

第266話

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 この三人、三匹?は他国の使者に混ざっていたんだって。

 獣人の奴隷は見つけたら即通報、女神の怒りが下るって言う話だけど、人魚は獣人にカウントされるのだろうか?
 奴隷も禁止されているから、奴隷を連れて刀国に入国した時点で駄目だけどね。

 使者と共に一度は捕縛された人魚達は最初は足があったらしい、奴隷の首輪に変化の刻印を施されて、その効果で人間に化けていたようだ。
 気付いたのは門に遊びに行っていた白ちゃん、「毒臭い」と言って毒抜き方法を周りに聞いた事で事態が発覚。

 使者は捕まり言い訳をする暇もなく生きたままラーシャに送られ、すでにこの世にはいない。
 人魚の奴隷を刀国に連れて来た目的はラーシャが魂をバリバリ食べて解析中、人数が居るらしいから多少時間がかかるかな。

 使者を食べれなかった白ちゃん、でもまだ強い毒は食べれない。
 落ち込む白ちゃんに春日さんが「聖水に漬ければ毒抜きになるかもな」と助言して、喜んだ白ちゃんがここに放り込んだ――というのが一連の出来事。

 無断だったんだ。

 話を聞いた双子が様子を見に来て、鬼羅とシレーヌは出会った。

「人が恋に落ちる瞬間を見たね」
「僕も刀羅とアンジェルが出会った時に見たよ」

 落ちてしまったからには食べさせるわけにはいかない、けれど毒抜きが終わったら食べると言って白ちゃんは譲らないし、説得できる人は少ない、だから僕と一緒に神薙さんが呼ばれたんだ。
 恋の為に邪神を動かして、その子息の食事を諦めさせるのか……代償大きそう。

「鬼羅にも春が来ると良いとは思ってたけど、意外と早く来たよね」
「そんなんじゃないよ」

 お互いを信頼し合った瞳で見つめ合った上、真っ赤な顔で否定されても説得力ないよー。

「それにしてもこの川の中どうなってるの?」
「えーっと父様曰く」
「水の中にこの村をもう一個作った。だっけ?」

 そんな事出来るのか――と本来なら言う所だけど、騎士様ならなんでもアリか。

「岩の上ではなく家の中で寝る日が来るとはな!」

 フハハハハハと笑う野獣人魚は予想通り腹筋が割れていた。

「水中に森があるのも不思議な感じだね、天敵がいないのはありがたい」

 しみじみと語るイタリア系美形、見た目に寄らず苦労しているっぽい。

「海に帰らなくていいの?」
「弟だけを残して帰るのは不安なんだ」
「凶悪な魔物と戦う日々よりも、安全な場所で弟の幸せを見守るのもまた重畳!」

 この人魚三人、正真正銘の兄弟だった。
 鬼羅とほんのり恋心を育んでいるのが末っ子、野獣が次男、爽やかがまさかの長男。

 女神様、タイプの違う美形を揃えるにしても、せめて血縁では人種揃えましょうよ。

「どうしてまた人間の奴隷になんて」
「それがなぁ」

 言い辛い事らしく目線を少しずらされた。

「暮らしていた場所がクラーケンに襲われ、その時に生き残ったのが俺達だけだったんだ」
「命からがら逃れはしたのですが、力尽きて意識を失っていた時に人間に捕まりました」

 今はマシュー君の所で副料理長やってるクラちゃんがクラーケンだね。
 確か刀国では「スルメ」って呼ばれてて、海に行った時にタイガが狩ったのを新鮮なうちに神薙さんが食べてたっけ。
 僕も食べたけど食べ応えあって美味しかった。

「また食べたい」
「クラーケンって何匹も発生するものですか?」
「里を滅ぼすほど大きいのは自然現象みたいなものだから、いても一、二匹」
「時期的にも人魚の里を襲ったクラーケンと、タイガが狩ったクラーケンは同じかな」

 人魚一家が真っ青な顔で固まってしまった。
 これぐらい我が家では普通の会話だよ?

 それより鬼羅、人魚を護りたいなら白ちゃんへのプレゼント考えないと。
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