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可愛い子には旅をさせよ

第261話

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 色々試した結果、神薙さんが気に入ったのはドラゴンのお腹の肉を使ったジャーキー。

「これがスルメ、噛めば噛むほど味が出る」
「ジャーキーです」

 弾力性もあるので神薙さんが噛んで楽しむ事を覚えました。

「もっとある?」
「今回はお試しなので、残りはステーキにしちゃいました」
「むぅ、明日また狩ってくる」

 お気に召したようです。
 チラッとドリちゃんを見たら「任せて!」と言わんばかりに根っこで拳を作っていた。

「今日の夕食は?」
「お城に提供したレシピの試食会があってそれに招かれています」

 これに神薙さんを招待すべきか会議を開き、結局は特別席を設けて特別枠で招待する覚悟を決めたらしい。
 神薙さんを直接招いていない理由は「僕とご家族一同」って形で一括りにされているから、もう何人でも来いやと言う若干自棄な気持ちが伝わってくる招待状でした。

 神薙さんの伴侶である副官さん、非番の衛兵さん、刀雲やタイガはお城に手伝いに行ってる。
 粗相があってはいけないとかそう言う理由ではなく、とにかく量を作るための手伝い、神薙さんが食べつくしても泣き寝入り一択だからね~。

 対策として作ったのが大量のドラゴンステーキ、これがあれば会場の試食を食い尽くす暴挙はしないはず。

「カレーは出るの? 鍋であまるかな?」
「さすがにないでしょう」

 スパイシーな香りで人を呼び寄せ、一番先に無くなると予想しています。
 領地ラージャでお米が安定して収穫に成功したから、一気に色々進んだよなぁ、レシピ提供間に合って良かった。
 次は学生の食堂だね。

「丼物食べたい、あるかな?」
「神薙さん専用の丼やお皿は刀雲が持って行ったので大丈夫ですよ、特別席でゆっくり食べましょうね」
「分かった」

 これは刀雲から聞いた話なんだけど、もしかしたら教会の人達も参加するかもしれないんだって、教皇様は消極的だけど枢機卿とか大司教様がノリノリだったので、まぁ来るだろうなって遠い目してたんだ。

「最初は食堂で新メニューとして出すだけのつもりだったんだけどな、話が広まって国王が参加したいって言い出して……最終的に晩餐会規模になった」

 涙ぐんだ刀雲がそう教えてくれた。
 警備は通常通り、侵入者いてもいいか、邪神様来るなら食べて貰おうぜーっていう感じらしい、喜んで食べるだろうけどそれでいいのか刀国騎士団。

「教会もレシピ狙ってるんだね、イツキ大儲け」
「ざっくざくですね、何か欲しい物ありますか?」

 出来れば大金使うものでお願いします。

「宝石でも買う?」
「ダンジョンで取れた宝石売り払ってますね」

 最高級の着物を神薙さんに着せ……もう着てるなぁ。

 食材も他では手に入らないようなものばかり、っく、お金があっても使い道がない!
 娯楽を作る?

 うーん
 地球での娯楽と言ってもなぁ、未成年だったしワンコ以外に興味なかったからな~。

 でも釣りが意外とお金かかるって……庭で出来る。
 釣り竿もタイガのお手製、素材はドリちゃん提供、実質タダ。

 車とかバイク?
 飛行機も真っ青なお馬さんやキーちゃんがいるから必要ないし、この世界だと馬車とかになるのかな?

「専門学校を作るとか!」
「校舎建てるだけでもお金かかるね!」
「教師を雇うのにも費用がかかりますよ!」
「設備を整えるのにも結構かかるって言ってた!」

 お城から迎えが来るまでの間、二人であれこれ盛り上がり、最終的にはどんな学科を作るとかまで本格的に練ってしまった。
 
 僕は忘れていたんだ。
 自分の息子が夢物語を実現する権力を有しているって事を。
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