上 下
207 / 1,127
権力とは使う為にある

第206話

しおりを挟む
 学園訪問から数日、夕食の仕込みも終わって庭で子供達と釣りをしていたら、まだ明るい時間に刀雲が帰宅した。

「俺の可愛い子供達、よくやった!!」

 帰って来るなりそう叫んだ刀雲が、シャムス、アー君、イネスをまとめてぎゅっとした。
 
『つりざおー』
『もふもふズ頼む!』
「みゅみゅみゅ!!」

 転がされた釣り竿は周囲にいたもふもふズが引き受けてくれたので池には落ちなかった。もし落ちてたら刀雲怒られてたよ、あれ、タイガ手製の肉球でも握れる釣り竿だから。

『くすぐったいの』
『何だかよく分からないが、褒美はピザ味のものがいい』
「お手柄?」
「刀雲、何があったの?」
「イツキ! 俺達の息子は天使だな!」

 釣った魚をドリアンに任せ、刀雲と子供達を縁側に座らせるとお茶を出してもらった。
 キラキラ笑顔の刀雲によると、騎士団が将来なりたい職業1位になったらしい。

「孤児院の子を中心に騎士団見学の申し込みが殺到したんだ、もしかしたら人材不足が解消されるかもしれない」
「人手足りてなかったの、人気職業だと思ってた」
「確かに一定の人気はある、だが団が増設された事で他が足りなくなったんだ」

 ここに配置されている人達って、他の騎士団から寄せ集めだもんね。
 ちょっと前までは多少人手が足りなくても大丈夫だったけど、他国の人間が増えた事により大小様々なトラブルが起きて対処に走り回っているらしい。

 だからと言って神様の警備を減らすわけにもいかない、連日疲れて帰ってくる刀雲を子供達がマッサージしたりお酌して労わっているけど癒しきれてないんだよね。
 将軍の任期も現在無期限、使徒だしこのまま将軍やってよーって雰囲気らしい、普通はその地位を巡って泥沼があってもいいはずなんだけどね。

「もふもふズのお陰で多少緩和されてたんだが、他国の人間が増えてトラブルも増えたのが辛い」
『とーうんお疲れ』
『ほれ肉球』
「僕のも触っていいよ」
「ぷにぷにだなぁ」

 両側から肉球攻撃か、あれ気持ち良いんだよねぇ。

「貴族が問題を起こしても住民が返り討ちにしているからそこは問題ない」
「強い」

 自国の貴族としての考えを持ち込み、屋台のおっちゃんに横柄な態度を取ってぶちのめされたとか、おばちゃんにズボンを脱がされお尻ぺんぺんされたとか、他には子供を泣かせて黒龍に骨を砕かれた、孤児だと馬鹿にしたら威圧で負けた……みんな逞しいな。
 あとおばちゃんのお仕置が一番精神的ダメージ大きいね。

「見学申し込み殺到したんだけどなぁ」

 ふと刀雲の目が曇った。

「張り切って王城を案内しつつ仕事を説明したらがっかりされた」
「なんで!?」
「目的はもふもふズと触れ合ったり、巡回と言う名のお散歩が出来る第五騎士団、あとイネスの事も聞かれたぞ」
「ぼく?」
「第五に入ったら会えるかと」
『イネスにファンできた!』
『ふむ、この間のマシューの学友か』
「きゃっ」

 シャムスやアー君に取り巻きは出来たけど、イネスには初めてかも。

「そう言えば前のなりたい職業1位はなんだったの?」
「屋台の店主、小遣い稼ぎで手伝って、そのまま雇ってもらう事も多い」

 弟子が成長すると屋台のおっちゃんは材料を仕入れるため、冒険に専念する人が多いらしい、これも刀国民の特徴だね。
 本当、逞しい人が多いなぁ。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

完結・虐げられオメガ側妃ですが、敵国のイケメン王に味見されそうになっています、どうしたらいいですか?

美咲アリス
BL
虐げられオメガ側妃のシャルルは敵国への貢ぎ物にされた。敵国のアルベルト王は『人間を食べる』という恐ろしい噂があるアルファだ。けれども実際に会ったアルベルト王はものすごいイケメン。しかも「今日からそなたは国宝だ」とシャルルに激甘ボイスで囁いてくる。「もしかして僕は国宝級の『食材』ということ?」シャルルは恐怖に怯えるが、もちろんそれは大きな勘違いで⋯⋯? 虐げられオメガと敵国のイケメン王、ふたりのキュン&ハッピーな異世界恋愛オメガバースです!

転移したらなぜかコワモテ騎士団長に俺だけ子供扱いされてる

塩チーズ
BL
平々凡々が似合うちょっと中性的で童顔なだけの成人男性。転移して拾ってもらった家の息子がコワモテ騎士団長だった! 特に何も無く平凡な日常を過ごすが、騎士団長の妙な噂を耳にしてある悩みが出来てしまう。

聖獣王~アダムは甘い果実~

南方まいこ
BL
 日々、慎ましく過ごすアダムの元に、神殿から助祭としての資格が送られてきた。神殿で登録を得た後、自分の町へ帰る際、乗り込んだ馬車が大規模の竜巻に巻き込まれ、アダムは越えてはいけない国境を越えてしまう。  アダムが目覚めると、そこはディガ王国と呼ばれる獣人が暮らす国だった。竜巻により上空から落ちて来たアダムは、ディガ王国を脅かす存在だと言われ処刑対象になるが、右手の刻印が聖天を示す文様だと気が付いた兵士が、この方は聖天様だと言い、聖獣王への貢ぎ物として捧げられる事になった。  竜巻に遭遇し偶然ここへ投げ出されたと、何度説明しても取り合ってもらえず。自分の家に帰りたいアダムは逃げ出そうとする。 ※私の小説で「大人向け」のタグが表示されている場合、性描写が所々に散りばめられているということになります。タグのついてない小説は、その後の二人まで性描写はありません

【完結】伴侶がいるので、溺愛ご遠慮いたします

  *  
BL
3歳のノィユが、カビの生えてないご飯を求めて結ばれることになったのは、北の最果ての領主のおじいちゃん……え、おじいちゃん……!? しあわせの絶頂にいるのを知らない王子たちが吃驚して憐れんで溺愛してくれそうなのですが、結構です! めちゃくちゃかっこよくて可愛い伴侶がいますので! 本編完結しました! 時々おまけを更新しています。

光る穴に落ちたら、そこは異世界でした。

みぃ
BL
自宅マンションへ帰る途中の道に淡い光を見つけ、なに? と確かめるために近づいてみると気付けば落ちていて、ぽん、と異世界に放り出された大学生が、年下の騎士に拾われる話。 生活脳力のある主人公が、生活能力のない年下騎士の抜けてるとこや、美しく格好いいのにかわいいってなんだ!? とギャップにもだえながら、ゆるく仲良く暮らしていきます。 何もかも、ふわふわゆるゆる。ですが、描写はなくても主人公は受け、騎士は攻めです。

「今夜は、ずっと繋がっていたい」というから頷いた結果。

猫宮乾
BL
 異世界転移(転生)したワタルが現地の魔術師ユーグと恋人になって、致しているお話です。9割性描写です。※自サイトからの転載です。サイトにこの二人が付き合うまでが置いてありますが、こちら単独でご覧頂けます。

王子様のご帰還です

小都
BL
目が覚めたらそこは、知らない国だった。 平凡に日々を過ごし無事高校3年間を終えた翌日、何もかもが違う場所で目が覚めた。 そして言われる。「おかえりなさい、王子」と・・・。 何も知らない僕に皆が強引に王子と言い、迎えに来た強引な婚約者は・・・男!? 異世界転移 王子×王子・・・? こちらは個人サイトからの再録になります。 十年以上前の作品をそのまま移してますので変だったらすみません。

嫁側男子になんかなりたくない! 絶対に女性のお嫁さんを貰ってみせる!!

棚から現ナマ
BL
リュールが転生した世界は女性が少なく男性同士の結婚が当たりまえ。そのうえ全ての人間には魔力があり、魔力量が少ないと嫁側男子にされてしまう。10歳の誕生日に魔力検査をすると魔力量はレベル3。滅茶苦茶少ない! このままでは嫁側男子にされてしまう。家出してでも嫁側男子になんかなりたくない。それなのにリュールは公爵家の息子だから第2王子のお茶会に婚約者候補として呼ばれてしまう……どうする俺! 魔力量が少ないけど女性と結婚したいと頑張るリュールと、リュールが好きすぎて自分の婚約者にどうしてもしたい第1王子と第2王子のお話。頑張って長編予定。他にも投稿しています。

処理中です...