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貴族になろう

第196話

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 マシュー君の自宅周辺が魔境になるかもしれない。

「魔王領から幾人か連れて来た」
「家令はお任せを、今は息子に跡を譲って引退しましたがラセン様の所で働いておりました」
「あっしは料理番です、魔王城の食堂で働いてたから腕は保証付き! 得意料理は肉!」

 まずタイガが魔王様の所から使用人として、亜人に進化した魔物達を連れて来たのが最初。

 家令にはモノクルをかけたおじさま、引退してのんびり過ごしていたけれど、魔王様の紹介で引っ張り出されたらしい。
 料理番の人は鱗を持っていて口調も軽いし、狐さんと仲良くやっていけそうだね。
 他にも手先が器用で人間との交流経験がある魔物達が十数名派遣され、使用人層はほぼ魔王様の紹介で埋め尽くされた。

 これで使用人問題は解決。

 良かった。
 ママさんの配備した人達はあくまでママさんの付き添いで来ただけで、期間が来たら国に帰っちゃうからね~。

 住居は敷地内の森を開拓したり、木の上に巣を作るつもりらしい。
 小島が浮いている時点で気付けよって感じだったけど、あのね、このマシュー君のご自宅、騎士様が新しく追加した異空間にあるんだ。
 正門が唯一の出入り口で、門番にはダンジョン産のドリアードが配置された。

 不法侵入=即死です。

「俺達は狩りしか出来ないから助かるよな~」
「生でも食べれるが、料理された物は美味い」

 レイアさんが連れて来た獣人さんチームは主に食糧調達を担うようだ。

「マシューがいるなら果物とかも必要か?」
「んぁ? そう言えばそうだな、もふもふズと協力すりゃなんとかなるだろ」

 魔物チームと違って獣人チームはどこかのんびりしている。

「姉御いないし、野菜とか食べなくていいよな」
「でもさ、マシューには食わせないとバレるだろ」
「それもそうかぁ~。あっちに森広がってるから畑に開拓すっか」
「魔法でぱぱーっとできねぇかな」
「おーい、アルジュナがぱぱーとやってくれるってよ!」
「マジか! すげぇすげぇ!」
「神だー!」

 賑やかだなぁ。

 そして……

『お骨にお肉ぺったんぺったん』
「そうだ兄よ巧いぞ、その調子で続けよ」
『ナーガはね、お魚好きなの、歯応え大事なーのよー』
「ならばドラゴンの肉も混ぜるか」
『ん、まーぜーまーぜまーぜまぜー』

 タイガとシャムスは何をやっているのだろうか、一見、巨大魚の骨に粘土を付けているようにしか見えないのだけど、シャムスが歌いながら作業しているんだよね。

『できたの』
「よし、やるぞ」
『おぉー』

 近くに行って見ていよう。

『お魚さん、お魚さん、ナーガのために美味しくなーれー』

 歌いながらシャムスが魚をぺちぺち叩いている……と思ったら、ふわりと魚を膜が覆い、それが吸い込まれていくをゆっくりと繰り返し始めた。

『お骨は硬めがいいですね~、鱗は焼くとカリカリなーのよー』
「繁殖率も高めた方が良いだろう」
『ハーレム!!!』

 そして最後に特大の力が注ぎ込まれたのが僕にも分かった。
 シャムス、何したのかな?

『タイガ抱っこ』
「うむ」

 二人が池に移動したので後を付いて行く、シャムスの尻尾がぶんぶん振り回されているからご機嫌なのが分かる。

『母様見ててね!』
「うん」
『みなしゃん池から出るのー』
「おーい、皆池から出ろー」
「おー」

 騎士様が池に仕込んでいた魚? そんなもの初日に食いつくされましたよ、ちょっぴり泣いてた。

『お魚さん、君をこの池の主(ぬし)ににんめーします! ナーガの為にいっぱい増えるのよ。タイガ、池に入れていーよ』
「うむ」

 静かに水に入れられた魚が滑るように水底へと消えてゆく。

『名前は……うーんとうーんと、ドラゴンのお肉も使ったから、スドラ!』

 池の水面がぺかーっと光ってスライムのようにぽよんとした質感の魚が飛び上がった。

 凄い、うちの子が新たな生命を作り出した。
 どう見ても魚に擬態したスライムにしか見えないけど!
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