上 下
172 / 1,127
貴族になろう

第171話

しおりを挟む
 久々にやってきました女神様の白い空間。

 謹慎中で暇なのだろう、炬燵の上や周囲には蜜柑と湯呑と一升瓶。の他に、ゲーム機から始まり漫画本や小説が山積みだった。
 それをそっとどかして座る場所を確保した僕は、懐かしい蜜柑を食べながら久々に女神様の会話に応じていた。

 多分あれだな、ゲームの攻略に行き詰って暇潰しに僕を呼んだんだな。
 
 だらだらと喋る女神様に適当に頷きながら蜜柑を頬張っていたら、突然ブランはどうしているかと聞かれたんだ。
 ベル君とラブラブで家族みんなに生暖かく見守られていると言ったら、ふにゃりと初めて見る安心したような笑みを浮かべた。

「この世界でアルビノってめっちゃ珍しいしさ~、ブランは最高の受けになる素質があったから絶対に保護したかったんだよね~、いやぁ女神の加護も役に立つもんだな。」

 残念な事に発言内容はいつも通りだった。

「でも初恋の相手が王子様で、すでに婚約者ありって言うのが素直に祝福できません」

 最もその婚約も破棄を企んでいるようだけどね。

「あーあれな、あの婚約は王命で結ばれたらしいぜ」
「えぇ、ラウルさん酷い!」
「やめろ、その勘違いはやめろ、アイツに察知されたら私が終わる」

 割と本気で止められた。

「王命発動したのはラウルの前任者」
「詳しく」
「いや、私もあの王子の両親が教会で国王を呪ってたから知っているだけで、これ以上の情報は知らねぇって」
「報酬は騎士様が型抜きしたクッキー!」
「ちょっと待て、今調べる」

 迷わずタブレットを取り出し画面を操作し始めた。

 その間に紅茶を入れたポットをアイテムボックスから取り出してお茶の用意をする。夢の中なのになぜ現実のアイテムが取り出せるのか、そんな細かい事を考えてはいけない。

「えーっとなになに、どうもこの婚約は王妃の母国との縁を強化するための婚約として産まれる前から決められていたみてぇだな。女が生まれやすい家系っぽい、その血筋を取り入れて国力強化したかったのか?」
「男でも産める世界で、女性と結婚する意味は?」
「特にねぇな。あ、でも世界改変前の影響が残っている可能性はあるのか? まぁテンプレの一端みたいなもんだろ」
「なるほど」

 色んなパターンがありすぎて把握できていないんですね。

「女が少ない世界だからこそ、女を娶るのはステータスの一つ、という風習はあってもおかしくねぇな。あと王道パターンとしてこの王女が転生者とか!」
「うぇぇ、そんなのありなんですか?」
「いや、乙女ゲームの世界に転生とかよくあるだろ?」
「ないですから。そもそもここ、乙女ゲームの世界じゃないでしょう」
「まぁな、どちらかと言うとR指定のBLゲーム舞台としては使ってる」
「……騎士様の世界をそんな設定として使って大丈夫ですか?」
「バレなきゃ、まぁ、うん」

 黒に近いグレーか。
 欲望に忠実過ぎる女神もどうなんだろうか。

「でも国同士で決めた婚約を破棄して大丈夫なんでしょうか?」
「国の名前も中身も、国王すら変わったからな、どうにでもなるだろ」

 しかも国王ラウルさんだしなぁ。

「あ、続きあった。婚約破棄をラウルが承認したっぽい、しかも書類発行済み」
「仕事早い」
「フェデリコに恩売ってもっと働かせる気なんだろうな」
「ラウルさんに頼りにされていると喜ぶより、横暴だとブーイングする姿が目に浮かびます」
「日常茶飯事だから誰も気にしねぇよ」

 パパさん……。

「でも自称聖女とか、自称婚約者とか出たりして……波乱の予感!」
「嬉しそうですね」
「私の大事な娯楽だ」

 ドヤ顔で言われても。

 この人が世界の管理者だもんなぁ、どんな穴があっても不思議じゃないか。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

完結・虐げられオメガ側妃なので敵国に売られたら激甘ボイスのイケメン溺愛王が甘やかしてくれました

美咲アリス
BL
虐げられオメガ側妃のシャルルは敵国への貢ぎ物にされた。敵国のアルベルト王は『人間を食べる』という恐ろしい噂があるアルファだ。けれども実際に会ったアルベルト王はものすごいイケメン。しかも「今日からそなたは国宝だ」とシャルルに激甘ボイスで囁いてくる。「もしかして僕は国宝級の『食材』ということ?」シャルルは恐怖に怯えるが、もちろんそれは大きな勘違いで⋯⋯? 虐げられオメガと敵国のイケメン王、ふたりのキュン&ハッピーな異世界恋愛オメガバースです!

転移したらなぜかコワモテ騎士団長に俺だけ子供扱いされてる

塩チーズ
BL
平々凡々が似合うちょっと中性的で童顔なだけの成人男性。転移して拾ってもらった家の息子がコワモテ騎士団長だった! 特に何も無く平凡な日常を過ごすが、騎士団長の妙な噂を耳にしてある悩みが出来てしまう。

みなしご白虎が獣人異世界でしあわせになるまで

キザキ ケイ
BL
親を亡くしたアルビノの小さなトラは、異世界へ渡った────…… 気がつくと知らない場所にいた真っ白な子トラのタビトは、子ライオンのレグルスと出会い、彼が「獣人」であることを知る。 獣人はケモノとヒト両方の姿を持っていて、でも獣人は恐ろしい人間とは違うらしい。 故郷に帰りたいけれど、方法が分からず途方に暮れるタビトは、レグルスとふれあい、傷ついた心を癒やされながら共に成長していく。 しかし、珍しい見た目のタビトを狙うものが現れて────?

美少年に転生したらヤンデレ婚約者が出来ました

SEKISUI
BL
 ブラック企業に勤めていたOLが寝てそのまま永眠したら美少年に転生していた  見た目は勝ち組  中身は社畜  斜めな思考の持ち主  なのでもう働くのは嫌なので怠惰に生きようと思う  そんな主人公はやばい公爵令息に目を付けられて翻弄される    

黒豹拾いました

おーか
BL
森で暮らし始めたオレは、ボロボロになった子猫を拾った。逞しく育ったその子は、どうやら黒豹の獣人だったようだ。 大人になって独り立ちしていくんだなぁ、と父親のような気持ちで送り出そうとしたのだが… 「大好きだよ。だから、俺の側にずっと居てくれるよね?」 そう迫ってくる。おかしいな…? 育て方間違ったか…。でも、美形に育ったし、可愛い息子だ。拒否も出来ないままに流される。

【完結】伴侶がいるので、溺愛ご遠慮いたします

  *  
BL
3歳のノィユが、カビの生えてないご飯を求めて結ばれることになったのは、北の最果ての領主のおじいちゃん……え、おじいちゃん……!? しあわせの絶頂にいるのを知らない王子たちが吃驚して憐れんで溺愛してくれそうなのですが、結構です! めちゃくちゃかっこよくて可愛い伴侶がいますので! 本編完結しました! 時々おまけを更新しています。

【完結】囚われの親指王子が瀕死の騎士を助けたら、王子さまでした。

竜鳴躍
BL
サンベリルは、オレンジ色のふわふわした髪に菫色の瞳が可愛らしいバスティン王国の双子の王子の弟。 溺愛する父王と理知的で美しい母(男)の間に生まれた。兄のプリンシパルが強く逞しいのに比べ、サンベリルは母以上に小柄な上に童顔で、いつまでも年齢より下の扱いを受けるのが不満だった。 みんなに溺愛される王子は、周辺諸国から妃にと望まれるが、遠くから王子を狙っていた背むしの男にある日攫われてしまい――――。 囚われた先で出会った騎士を介抱して、ともに脱出するサンベリル。 サンベリルは優しい家族の下に帰れるのか。 真実に愛する人と結ばれることが出来るのか。 ☆ちょっと短くなりそうだったので短編に変更しました。→長編に再修正 ⭐残酷表現あります。

光る穴に落ちたら、そこは異世界でした。

みぃ
BL
自宅マンションへ帰る途中の道に淡い光を見つけ、なに? と確かめるために近づいてみると気付けば落ちていて、ぽん、と異世界に放り出された大学生が、年下の騎士に拾われる話。 生活脳力のある主人公が、生活能力のない年下騎士の抜けてるとこや、美しく格好いいのにかわいいってなんだ!? とギャップにもだえながら、ゆるく仲良く暮らしていきます。 何もかも、ふわふわゆるゆる。ですが、描写はなくても主人公は受け、騎士は攻めです。

処理中です...