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貴族になろう

第165話

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 目の前には見目麗しい二人の男性と、褒めて欲しそうに目を輝かせる騎士様が居る。

「あの、騎士様」
「なぁに?」
「本当に、何て言えばいいか……」

 イネスとマシュー君すらまだ魔魚倒してない、お昼の用意もメニューも決まってない、けれど久々に騎士様が張り切って暴走してくれた。
 双子が無事王太子になり、お目付け役のラウルさんも帰国、解放感があったんだろうとは思いますけれど、僕らにも準備と言うものが必要でして。

「あの、すまぬな、吾輩達も不可抗力でな」

 ベル君と同じ口調で謝るのはがっしりした武官タイプの方。

「ごめんね、お土産途中で買う予定だったから何もないんだ」

 申し訳なさそうに謝っているのは、動作が優雅なすらりとした方。
 どちらも生粋の貴族――そう、ベル君のご両親だ。
 元々こちらには来る予定だったけれど、出発準備が整って屋敷を出ようとした所で騎士様に拉致されて現在に至るようです。

 うぅ頑張れ僕、お客様に気を遣わせちゃ駄目じゃないか、落ち着いていつも通りに……無理ぃ、子供の未来の結婚相手のご両親とか、次元が違うよぉ。

「吾輩達の事は遊びに来た親戚と思ってもらっていいからな?」
「旦那様、私達まだ名乗ってないです」
「そう言えばそうであるな、吾輩はフェデリコ、ベルンハルトの父だ」
「旦那様、家名忘れています。私はペルティエ・バンディーニ。ベルンハルトの母です」

 騎士様……貴族ともなれば多分、御付きの方々がいたと思うんです。
 置いて来ちゃったかぁ。
 
 とりあえず名乗らないと!!
 すーはーすーはー

「僕は――」
「イツキー飯食わせてー!」
「アルジュナ~仕事終わったぞ~」

 バーーーンと戸を蹴破る勢いで登場したのは、白熊さんを引き連れたレイアさんだった。

「なんでお前がいるんだ? さぼりか? 仕事しろよ」
「これ外交が含まれているので仕事の一環なんですよ」

 にこにこと微笑んだまま、ベル君のお母さんがレイアさんに返した。お知り合い、でしたか。

「レイアさぁん」
「イツキ、どうした」
「騎士様が出発直前に転移して連れて来ちゃったんです」
「えへ」
「……分かった。お前はちょっと来い」
「え、えー」
「主だけ連れて来てどうするんだよ! 護衛とか従者も連れて来い!」
「後から来ればよくない?」
「いいから来い!」

 レイアさんありがとー!

「ああそれからイツキ」
「はい」
「そっちの馬鹿の方は見た目武官だけど中身ただの軟弱だから」
「ひどっ!」
「食糧調達とかで頼るならペルにしとけ、見た目に反して歴戦の勇士だから」
「旦那様は夜が強いので、これでいいのですよ」
「うおーーん」
「な」

 こういう時、どんなセリフを言えばいいのだろうか。
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