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祭事

第156話

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 その時僕の近くに居たのは右に神薙さん、左にタイガ。
 神薙さんは細いから隠れるには無理がある、ならば選択肢は一つ。

 視線が僕に一斉に向けられ、ラウルさんがこちらを向く――それより先に僕は神薙さんの手に獅皇さんと騎士様が作った『神秘の餅』を持たせて口封じをし、体格が良く、察しの良いタイガの背後に隠れた。

 過去最高の素早さだったと思う、まさか僕も自分があんな早く動けるなんて思っていなかったな。
 あれは神業。
 人生で一度だけ使える奇跡だね。

「そちらの人物が? 神薙、本当ですか?」
「ん? うん」

 おやつに夢中で話を聞いていなかった神薙さんはとりあえず頷いてくれた。ありがとうございます、帰ったら残りのお餅全部出します。
 なんならギレンが後から差し入れてくれたお餅の具材も、好きなだけトッピング乗せます!

「お餅美味しー」
「さ、さぁラウルさんもパーティーを楽しんでください!」
「教皇様が司祭様達と考えてくださっためにゅーなんですよ!」
「ふふ、ではありがたく頂くとしますね、ああそうだ、この子の説明をしていなかった」
「いえいえいえいえいえいえ」
「第二王子のベルンハルト様ですよね! 大丈夫大丈夫大丈夫! 知ってます!」
「ともだちともだちともだち」
「……何か、隠してませんか?」

「「とんでもない!」」

 子供達、ありがとう。

 バレた所で怒られるのは騎士様だけどね、胃痛の原因は少ない方がいいから。

「ラウル、酌をしてくれ」
「はいただいま」

 珱さんナイス!

 従者体質で助かった。
 世話焼きオカン、怒らせると説教が怖いからなぁ。

「趣味が変わったんですかね?」

 ぽつりと呟いていたけどレイアさんが「アイツだからな!」で押し通した。

「ラウルはこの儀式が終われば帰国する、それまでどうにか誤魔化そう」
「レイアさんすみません」
「いいって事よ、私も小言は避けたい」
「それに誰も嘘は付いていない」

 確かにシヴァさんの言う通り誰も嘘は付いてない、勘違いを利用してその場をかなり強引に誤魔化しただけ。小言が嫌だから。

「改めて、僕は刀羅、よろしくね」
「僕は鬼羅、刀羅の弟」
「ベルンハルトです、よろしくお願いします」
「新学期から学友だね、その、友達になってくれたら嬉しい」
「ブランの兄弟と仲良く……是非に!」

 ん?

「ブランは僕らの末っ子だからね、大事にしてね」
「当然である」
「でも他国にお嫁に行かせるのはちょっとねぇ」
「婿に来るので問題ない」
「おおー」
「言い切った」

 おや、まぁ、ベル君ったらいつの間に。
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